20話 対話。
20話 対話。
(……双子の姉妹? はぁ? 何言ってんだ、この男。それ、どういう口説き方?)
当然だが、天童の『言葉の真意』を掴みきることはできなかった。
しかし、『狙っている男の言葉』を『ねぇよ、バカか』などとバッサリ切ってしまうほど、高瀬の女子力は低くない。
彼女の態度がきつくなる対象は、2軍の雑魚男だけ。
天童久寿男は、1軍キャラではないが、しかし、枠外の珍種ではある。
『好みのイケメン』でなくとも『面白そうな珍種』であるなら、
高瀬的には、アリ寄りのアリ。
よって、
(……まあ、いいや。とりあえず、合わせておこうかな)
という結論に至り、
結果、
「ああ、うん。あるよ、そういう感覚。双子とか、超いた気がする。はは、ヤバいね、なんでもわかっちゃうとか。さすが、悪魔」
などと返すにいたった。
そしてこじれていく。
いろいろと。
「……天使だ。人聞きの悪い事を抜かすな」
「天使? あんた、天使なの?」
「……まだ、候補だが」
「天使候補とか、ウケる。そんなん、マジでいるんだ。……でも、昨日のあんた、メチャメチャ悪魔っぽかったけどね。『あんたの背中に浮かんでいた、あの変な剣』の色とか、全体的に黒くてさ。それに、腕とかもヤバかったじゃん、ごつくて、いかつくて。ていうか、あんた、昨日、あの『浮いてる剣』みたいなのを出す時『デビルなんとか!』って叫んでなかった?」
「それに関しては、スルーしろ。マジで。頼むから」
「? 意味不明。なんで、そこをつくと、急にキョドってんの? きも。まあいいや。てか、マジすごかったよね。なんか、どこからともなく、剣とか銃とか出して、バババババって!」
「……声が大きい。聞かれても、ゲームやマンガの話としか思われないだろうが……おい、ちょっと、こっちこい」
人目を気にした天童は、仕方なく、高瀬をつれて、近くのファミレスに入った。
この時間は人がほとんどいない。
そのうえ、選んだのは奥の席。
雰囲気は落ち着いていて、
BGMの音量がちょうど良くて、
柱の仕切りがちょうど良くて、
――そんな、感じのいい店の奥で、
向かい合って腰をかける。
注文を終え、
周囲に誰もいなくなったところで、
まず、高瀬が、
「まず、名前聞かせてよ。先輩相手に『あんた』って言い続けるのもアレじゃん?」
「そこを気にするなら、タメ口も気にかけるべきだと思うが」
「そっちは、いまさらじゃん。あんたが、あたしの上司っていうなら話は違うけど、別にあたしらはそんなんじゃないし、変に距離つくりたくないし。――で、あんたの名前は?」
天童は、溜息を一つはさんで、
「……天童久寿男」
「天童さんね。一応、『さん』はつけてあげる。これでも常識はあるから」
「……わー、うれしぃぃ……ありがとうございますぅ」
腕を組み、明後日の方を見ながら、全力の棒読みでそういう天童に、
高瀬は、続けて、
「で? 色々と、どういうこと? ぜんぶ、教えてよ」
「ひとつだけ、ハッキリと言っておくことがある」
「なになに?」
「今後、あの時の事を覚えているとは二度と口にするな」
「なんで?」
「消されるからだ」
「記憶を?」
「存在そのものを」
「っ」
「もし上にバレたら、お前という人間のデータは、この世界から完全に消える」
「………………へぇ……ふぅん」
「お前には双子の姉妹がいたが、つい先日、存在を消された。お前の姉妹も天使候補だったが、演習で死んでしまい、最初から存在しなかった事になったんだ」
「……」
「天使という種は、イメージ通りのキラキラとした『優しい存在』なんかじゃない。『無意味に残忍』ではないが、必要なら、いくらでも冷酷になれるし、一切の容赦もない。記憶が残ってしまったのは、お前にとって不幸以外の何物でもない。全力で忘れるように心掛けろ。言っておくが、ここまででも既に、俺は機密漏洩の軍規違反という大きな罪を犯している。だから、これ以上は何も言わん。おまえも何も聞くな。以上だ」




