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石牢の迷宮4

 王都を出た俺は魔王城に帰るための道程でリンドルの町に来ている。


 ただダンジョンコア窃盗事件の影響で国境が封鎖されていているため、他国からダンジョンコアの展示を見に来た人達は国に帰れずこの国に留まることを余儀なくされており、ここリンドルの町も大勢の人で溢れかえっている。


 町の外には大量のテントが張られていて、そこで商売をしている人も多く、町が拡大しているのではないかと錯覚するぐらいだ。


 外にいるほとんどの人が町中で宿泊することを諦めているのか、門に行列ができていないことだけが幸いだった。


 俺はせっかく来たのだからということで、リンドルの町の名物と言われている町の中にあるダンジョンに入ってみようと考えここにいるのだ。


 町の中の雰囲気は王都とほとんど変わらないが、冒険者の数はとてもダンジョンがある町とは思えないほどに少ない。


 たぶんこの町の冒険者もダンジョンコアの探索に駆り出されているんだろうな。


「とりあえずは冒険者ギルドに行ってみるか」


 町に入ったらとりあえず冒険者ギルドってことで、町の中心近くにある冒険者ギルドに向かっていく、ここではダンジョンの近くにあるのだそうだ。


 冒険者ギルドはすぐに見つかったがここは今までにないほど馬鹿でかい、入り口も複数あり王都の冒険者ギルドの数倍の規模を誇っている。


「これは建物内で迷子になりそうだな」


 入ってすぐ受付があるが、何々用受付など細かく分かれていていまいちどこに行ったらいいのかがわからない。


 とりあえずただ受付と書いてあるところに座っている犬獣人のお姉さんのところにいく。


「すみません、ダンジョンに入りたいんですけど、何か必要な手続きってありますか?」


「いらっしゃいませ、ダンジョンですか?ダンジョンに入る前に名前を書いてもらうぐらいで他はないですけど……君が一人で入るのかな?危ないところだからパーティーを組まないと難しいと思うよ。あそこにパーティー募集が貼ってあるから一度見たほうがいいかな」


 お姉さんは心配してくれるが、俺は貰ったばかりのギルドプレートを見せる。


「俺はDランク冒険者のナインです。とりあえず低階層だけ入ってみるだけなので大丈夫です」


 俺のギルドプレートを見て目を見開いて驚くお姉さん。


「失礼しました。その年でDランクなのはすごいね。でも一人はとても危ないの。一度パーティーを組むことも考えてみてくださいね」


 俺は頷くとお姉さんが教えてくれた掲示板の方に向かう、そこにはパーティー募集と、現在のダンジョンの未確定だが情報が多数載っている。


 現在の攻略階層四十三階、五階周辺で徘徊する魔物あり、冒険者の数が少なくなっているため救援は遅くなる可能性があるため注意……


 徘徊する魔物とは、本来は魔物は階層をまたいで追ってくることはない、だが稀に階層に縛られず移動する魔物がいる、これが徘徊する魔物だ。


 徘徊する魔物はどの階層で発生したかによって強さが変わるのでかなり注意が必要だが、倒して素材を回収できればかなりの金になる、こいつを狙ってみるか。


 ダンジョンの地図は五階までは無料配布されているが、それ以降は有料になる、低ランクの冒険者が無駄に先に進んで死なないようにある程度の金がないと買えなくしているのだ。


「六階からは……五階ごとに金貨一枚って、ぼったくりにもほどがあると思うんだが……」


 流石にこれは買えない、魔王城に住んでいるから普段は金がかからないとは言ってもその分全然稼いでないのだ、貧乏が憎い。


 心配そうな犬獣人の受付のお姉さんに五階までの地図をもらうとギルドの隣にある大きな建物に入っていく、ここがダンジョンの入り口を覆い隠すようになっている建物だ。


 四角いだけの建物で、入り口は一つ、中はギルド職員やパーティー募集の冒険者、救護班の待機などそこそこ混雑している。


 ダンジョンに入るのは久しぶりだ、人工勇者時代に帝国で訓練のために人工勇者全員で低階層の攻略をしたぐらいか。


 俺は受付っぽいギルド職員だと思われるおじさんのところに行く。


「すみません、ダンジョンに入りたいのですが、どこに名前を書けばいいですか?」


 俺の質問におじさんはちょっと困惑しながら紙を出してくれた。


 名前とランクと予定攻略階層か、予定攻略階層はとりあえず五階と書いてダンジョンの入り口までやってくる。


 リンドルの町にある『石牢の迷宮』まずは最短距離で五階まで攻略する。


 ダンジョンに入るとそこは石畳の通路になっている、地図を確認すると下の回に降りるには複数の階段がありどれでも良いみたいだ。


「まずはゆっくり進んでみるか」


 俺は一番近くにある階段を目指してテクテク歩きながら索敵を使う。


 第一階層はゴブリンゾーンだから気配に入っているのは全てゴブリンか、特に大きい気配はない。


 ふと思い出してアイテムボックスから聖火の剣を取り出す。


 そういえばこれまだ制限を解除できてないんだよな。


 ゴブリン程度ならこれで十分だから、魔力操作で解除できないかとこねくり回す。


「グギャ!」


 しばらく歩くと別れ道からゴブリンが奇声を発しながら飛び出してくる、数は二体。


「グレイシア・ブレード」


 俺は左手に氷の片手剣をゆっくり形作ると、飛びかかってくるゴブリンの一匹を氷の剣で切り裂き、二匹目を聖火の剣でぶん殴る。


 氷の剣で斬った方は体の半分以上を切り裂かれ傷口が凍り絶命する、聖火の剣で殴った方は起き上がりピンピンしている。


「わかった事、聖火の剣はやっぱ制限解除しないと棍棒以下、氷属性は覚えたばっかりだからまだ全然使いこなせてない。発生が遅すぎる。少しの間使い込んで慣れるか」


 一人で確認を口にしていると生き残ったゴブリンは怯えて逃げ出してしまった、まあ討伐に来ているわけじゃないからそれも良いだろう。


 それから何度かゴブリンが襲ってくるが氷の剣で全て凍らせていく、結構深々と斬ってるから内臓とかも凍ってるんだろうな。


 ゴブリンだから素材も魔石も必要ないし、血の匂いを撒き散らさなくて良いから氷属性便利だ。


 教えてくれたリルに感謝だな。


 そうこうしているうちに第二階層に降りる階段にたどり着く、サクサク行こう。


 第二階層もほぼ変わらず、ほぼと言うのはゴブリンの中でたまにちょっと背の高いのが出てくることがあった。


 それが何なのか俺は知らないが、強さは変わってないように感じるので、まあゴブリンレベル二って感じだろう。


そのまま俺は順調に下に下にと進んでいく。


 魔物はほとんどがゴブリンで、三階からはゴブリンレベル二が多くなり、四階からはウェアウルフとゴブリンの混成部隊が出るようになってきた。


 本来は仲間意識などないはずだが、それもダンジョン特有ってことだろう。


 飛びかかってくるウェアウルフの牙を躱して氷剣で一閃し、時間差で迫ってくるゴブリンを聖火の剣(鈍器)でぶん殴る。


 すぐに矢を放ってくるゴブリンがいるがそれも回避しながら近づいて大ぶりの氷剣で斬り裂いていく。


 下に行くにつれて数が多くなってきてるな、確かにゴブリンとウェアウルフだけとは言え集団で襲われたら低ランクの冒険者だと危ないかもしれない。


 数の多さに飽き飽きしながらやっと五階層に降りる階段にたどり着く。


 ダンジョンには五階層ごとにセーフポイントがあるのでそこで一休みしようかな。


 俺は五階層に降りると索敵を使いながらセーフポイントに向かう、上手く『徘徊する魔物』が引っ掛かってくれれば良いのだけど。


 すると、索敵範囲ギリギリに気配の大きい魔物がいる、多分これだ!


 セーフポイントに向かう道から一旦外れて目標の気配まで一気に突っ走る。


 もうすぐ到着ってところで別の方角からかなりのスピードで大きい気配に向かっていく魔物以外の気配を感知する。


 まずい、先に戦闘されると割って入るのはマナー違反になる。


 冒険者の間では先に戦っている方に優先権があり、後から来た人が獲物を奪うのは横取りとされて、全ての冒険者から嫌われる。


 くっそ、道のり的には俺の方が近いけど、向こうの方が若干早い!


 俺も全力で壁を蹴りながらスピードを落とさず走る⋯⋯見えた!


 あれはオーガに似ているがこんな低階層までオーガが上がってくるとは考えられないから別の魔物だろう。


 まあいい、この『徘徊する魔物』は俺がもらったっ!


 俺は魔力剣を抜き放ち鬼の魔物に急速接近する、同時に反対側からも覆面の二刀流の剣士が走ってくる。


 こいつか、お互いスピードを弛めるどころか加速して自分の獲物だと主張する。


 俺は魔物の右側から、覆面は左側から、ほぼ同時に魔物の首を跳ね飛ばす。


 俺は壁に当たる前に急ブレーキを掛けて振り向くと同時に覆面も振り向く。


 魔物が首から血を噴き出して倒れると、ボトリと胴体から切り離された頭が倒れた魔物の上に落ちてくる。


 魔物が倒れお互いの姿がはっきりと見える。


 こいつは……俺がバッツさんのDランク試験を受けていた時にただ一人見学していたターバンの人だ。


 俺の全力疾走を僅かに上回るスピードと、かなりの遠くからでも魔物を感知する索敵能力、そしてお互いの斬撃が当たらないように魔物の首を切断できる剣技。


 相当高位の冒険者だぞ、ハイライトレベルかもしれない。


 俺とターバンは睨み合う、判定できないレベルで同時に首に剣を当てていたと思う。


 それのしても……ターバンちっちゃいな……身長が俺と同じぐらいしかない。


 そういう種族なのかな?目しか見えないからわからんけど。

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