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王都動乱21

 地下水路を出て二日ほど経った。


 街道を歩くのははなく、ツリーベル王国を出るまでは森を突っ切ったり道のないところをいく。


 セリスの歩くスピードに合わせて、俺、セリス、キアリスさんは自由国家フリースペルに向かっている。


 自由国家フリースペルは、多種多様な種族が暮らす移民国家みたいなものだ。


 そこにキアリスさんの知り合いが住んでいるらしくそこでセリス共々お世話になるつもりらしい。


 俺達はこのままこの国にいてもセリスは道具として扱われる人生が決まっている、国を離れたとしてもそれは変わらない。


 セリスもこの国に愛想を尽かしていたからね、だからセリスの死を偽装した。


 筋書きはこうだ。


 英雄達に捕らえられた魔族が仲間の助けで脱走し、一人がスラムで人族を引きつけているうちに、もう一人がセリスを殺害して屋敷に火をつけ地下水路から逃走。


 屋敷と共に焼かれたスラムで拾ってきた死体からでは本当にセリスかどうかは判断できないだろう、かなりの油を使ったからな。


 晴れてセリスは自由の身となる。


 ただまだ街道を歩いてないし村にも立ち寄っていないから、顛末は知らない。


 魔族がどうなったのか?セリスの扱いは死亡なのか行方不明なのかはわからない。


 これで自動発火装置が機能してなかったら笑えないけどね。


 本当は確認してから旅立ちたかったが、犯人は現場に戻るっていうのは前世の世界でのテンプレみたいなものだし、誰かに見られるとまずいことになるからね。


 あれだけ自動発火装置を仕込んできたんだから・・・大丈夫だろう。


 荷物は全てアイテムボックスにある、旅の資金も潤沢にある、後はあわよくば誰にも気がつかれないように自由国家フリースペルに二人を送り届ければいいだけだ。


 俺もフリースペルでちょっと羽を伸ばそうと思っているしね。


 唯一の懸念は・・・魔王軍。


 俺達がフリースペルに向かっているのは誰も知らないし、街道も村も立ち寄っていない、索敵にも魔物ぐらいしか引っかかってない。


 いくら魔王軍のサキュバス隊でも俺の足取りを追うのは不可能だと思いたい。


 たぶんだが俺が依頼を終了し町を出たのは把握されているはずだ。


 その日の内に屋敷が全焼したはずだから、セリスの焼死には疑問を持っているだろう。


 もし俺を追っているのなら、俺がヘプナムの町に帰っていないことは遅くともそろそろ気がつかれている頃だろうと思う。


 どっちに行ったか方向もわからない、周囲の街道や村に立ち寄った痕跡もなし、これなら流石にお手上げだろう。


 今は俺たちは森の中を歩いているのだが、代わり映えのしない景色に俺は若干飽きてきている。


 森の中は暗くなるのが早く今はもう夕方ですぐに真っ暗になるだろう。


「そろそろ休みましょうか、まだまだ先は長いですから」


 俺は歩きながら拾っていた枯れ木とテントをアイテムボックスからだし、テキパキと野営の準備をする。


 セリスは疲れ切った様子で、近くにあった石の上に座っていてキアリスさんはセリスの足をマッサージしている。


 さすがにセリスにはキツいか・・・もう少し歩く時間を減らした方がいいかもしれない。


「ナイン様すみません。準備をやらせてしまって。」


 セリスの足をマッサージしながらキアリスさんが申し訳なさそうに謝ってくる。


「気にしないでくださいキアリスさん。野営の準備程度ならすぐにできますからね」


 テントを作り終わった俺は、すぐに薪に火をつけて鍋に水を入れて火にかける。


 ある程度野営の準備が終わり食事ができるとセリスとキアリスさんがこっちに来て火を囲んで食事にする。


 食事が終わる頃にキアリスさんが話し出す。


「これからの事ですが、明日には森を抜けると思われます。予定通り進んでいるなら抜けたところは近くに村がありますが、そこは素通りしたいと思っています。」


 俺とセリスはキアリスさんの言葉に頷く、まだ王都を出てから二日しかたっていない街道を通らず一直線気味にフリースペルに向かっているとはいえ、道は平坦ではないし徒歩だ。


 歩き続けているとは言ってもほとんど街道を歩いているのと変わらない距離しか稼げてはいないだろう。


 情報は欲しいが焦らず慎重にって感じだな。


 その日はそれで終わり、次の日は予定通り森を抜け村を素通りして平原を歩いているとそれはやってきた。


 前方に複数の人影が現れたのだ。


 平原で見通しがきくので相手からも俺たちの存在は確認されているだろう。


 今更引き返すことは難しい、かと言ってこのまま進むのも・・・


 俺たちが止まっていると人影達はゆっくりと近づいてくる、お互いはっきりと姿が見えるようになり、俺はとうとうこの時が来たかと封魔の腕輪を一つ外す。


 俺は相手が止まったところで話しかける。


「奇遇ですね、エヴァさん。まさかこんな何もないところで会うなんて」


 サキュバス隊とエヴァさんだ、ここじゃ周りに誰もいないから逃げられん。


 だがどうして待ち伏せなんてことができたんだ?情報は一切漏らしていないはずだ。


「やってくれましたね、ナイン様。まさか偽装して王都を抜け出すとまでは思っていませんでした。」


「バレちゃいましたか。でも何故、俺のいるところがわかったんです?」


 エヴァさんが答える前に、その隣に魔法陣が出現し光が収まったときにそこには体にフィットした黒い鎧を纏い赤い髪を靡かせた戦闘スタイルの魔王様が立っていた。


 すぐにエヴァさんとサキュバス隊は一歩下がり首を垂れる。


 冗談だろ・・・何もない平原で魔王に遭遇するとかどんなクソゲーだよ!


 驚いて固まっている俺に魔王様は問いかけてくる。


「久しぶりだな、ナイン。中々城に来ないからリルが会いたがっていたぞ」


 ふぅ・・・落ち着け俺、魔王様のユニークスキルはおそらく結界系かそれに近い何かだ。


「久しぶりです。魔王様。こんなところで会うなんて奇遇ですね」


 そうだ、勇者ですら破壊できなかった結界、それに囚われたらアウトだ。


「なに、ここに私の魔力反応をだす指輪があると聞いてな。」


 そうか見落としていた、五式の指輪には魔王様の魔力が入っている、それを追ってきたのか。


「それは俺の持っているものですね。安心してください、ちゃんと持っていますから」


 魔王様の使う魔法は人族には伝わっていない、もしくは失伝している系統だ。


「それはよかった・・・そろそろ準備はできているか?」


 俺はもう一つの腕輪を外す、周囲の魔素が身体の中を駆け巡り俺の周りだけ台風に入ったような感覚に陥る。


「見逃してもらうことはできませんか?魔王様は命の恩人ですし、なるべくなら。」


 アイテムボックスから雷鳴の剣を取り出し、魔力を通す。


「それは出来ない相談だな。お前こそ引かないか?命の恩人の頼みだぞ」


 今の魔王様はまだ剣を抜いていない、だが魔法の構築は早いと思っていいだろう。


「それがちょっと無理でして。俺のいた世界では子供はできる限り守られるものなんですよ。」


 俺はチラリと後ろで固まっているセリスとキアリスさんを見る。


「セリス、キアリスさん、離れていてください。」


 俺の声に我に返ったキャンセルさんは俺の横に来る。


「何を言うのです。私も戦います。二人なら勝機が見えるかもしれません」


「すみませんキアリスさん。ここからはレベルが違います。巻き込まれてただ死ぬだけです。離れてセリスを守ってください」


 有無を言わせずキアリスさんに俺はそう言うとアイテムボックスから魔石を取り出しキアリスさんに渡す。


 リジェクト・ケージが彫り込まれたBランク魔石だ。


「ここから離れて危ないと思ったらすぐに使ってください。躊躇していると死ぬと思います。」


 俺の真剣な表情にキアリスさんは頷くとセリスを促して離れていく。


「ナイン!・・・勝てるのですか?」


 今にも泣きそうな表情でセリスが聞いてくる。


「わからないですけど、やらなきゃ全滅だと思います。もしもの時は魔眼の力を使ってでも逃げてください」


 セリスが頷いて離れていく。


「エヴァ、お前達も下がれ。下手に近づくと巻き込まれて無駄死にするぞ」


 キアリスさんもサキュバス隊も俺と魔王様から離れていく。


 と、同時に俺は一瞬で魔王様に近づき剣を振り下ろす。


 魔王様は余裕でそれを避けると一瞬で剣を抜いて、斬り返してくる。


 今度は俺がそれをギリギリで避ける。


「アブソリュート・エンブレイス」


 斬り合いが終わった瞬間、魔王様が超級魔法を唱える、これは不味い!


 魔王様から周囲に広がるように冷たい霧が噴き出し、触れるもの全てを凍らせていく。


 間に合うか!?


「ラヴァ・ソイル」


 火属性の上級魔法、自分の周りに溶岩の壁を作り上げる、未熟な者が使うと熱で自分もダメージを受ける扱いの難しい魔法だ。


 俺の周りに溶岩の壁が出来上がり、ほぼ同時に周囲が氷漬けになっていく、溶岩の壁もじわりじわりと氷に包まれていく。


 魔王様は範囲を抑えていたのかキアリスさんやセリスのいるところまでは届いていない。


 危なかった・・・魔王様の魔法の展開速度は俺よりもわずかに速い。


 何の枷もない今の俺なら魔法の展開速度にはかなり自信があったんだが、やはり魔王というのはとんでもないな。


 索敵で気配を探ると少し離れたところに魔王様がいる。


 嫌な予感を感じて俺は即その場から回避行動をとる、ほぼ同時に何かの光が溶岩の壁を貫通して破壊する。


 光が二つ、三つと俺に向かってくるが、雷鳴の剣に魔力を全力で込めて回避できるものは回避、弾ける物は弾いていく。


 くっそ、かなり重いし早い!ギリギリで躱せるといった感じだ。


 何とか目視できるように凍った溶岩の壁から離れると魔王様の声が聞こえてくる。


「ほう・・・あれを避けるか、やはり昔のお前とは一枚も二枚も強さのレベルが変わってきているな」


「ありがとうございます。でもギリギリでしたよ。」


 ダメだな、常に全力で行かないとただただ蹂躙されるだけだ。


 俺は剣を握りしめる。

改稿

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