王都動乱16
俺は木の影に隠れつつアイテムボックスから一山いくらで買った投げナイフを取り出す。
焚き火の前で会話をしている二人のうち、俺から近い方に狙いをつけ、投げる。
「ぐっ!・・・敵か!?聞いてないぞ」
狙いは外れず冒険者風の男の革鎧の肩部分に軽く刺さる。
あっぶねぇ!ちょっとズレてたら首に刺さってた、安物だから精度が悪いな。
ちょっと冷や汗をかきながら仮面の下の汗を拭う、今は殺しに来たんじゃなくて争わせる事が最優先だ。
焚き火を囲んでいた男二人は慌てて構える。
「敵襲だ!起きろ!どこかから狙われてる!」
テントから寝ていた二人が出てきて、四人で周囲を警戒し出す。
俺はガサガサ音を立てながら別のグループがいる所へ走り出す。
「あそこだ!まだ仲間がいるかもしれない。警戒しながら追うぞ」
よし、釣れた。
わざと音を立てながら引き離さないように走り別グループの近くまで来ると、俺は木の上に飛び上がり、気配殺して静かに待つ。
追いかけてきた冒険者達が警戒しながら俺の真下を通り過ぎ、別グループの前に現れる直前に、投げナイフを別グループの男に投げつける。
ちょっと遠かったので外れて焚き火の中にナイフが突っ込んでいったが、一瞬全員がそこを向いたのでOKとしよう。
俺はすぐさま木を降りて魔物の檻の所まで戻ると、檻を剣で切り裂いて破壊する。
魔物は寝てて起きないが、まあそのうち起きるだろう。
直ぐにさっきの別グループ同士をかち合わせた所に戻ると、お互い警戒はしているが争いだす感じじゃない。
どうしようかな、まあ何でもいいか。
「ファイア・ランス」
俺は魔法を唱えるとテントに向かって放つ。
魔法が当たったテントはいい感じに燃え上がり、周囲に残骸をまき散らす。
「どこかに潜んでいるぞ!警戒しろ!」
「てめぇ!これをやってんのはお前らだろっ!」
夜の気が抜けている時間帯だったのも良かったのか、判断を鈍らせてくれて助かる。
さらに喚いているヤツに向かってナイフを投げつけて、左腕の鎧に命中させる。このナイフは精度がまちまちだな。
「あそこだ!そこの陰から狙ってきている、警戒しろ!」
ここはもういいだろう。
俺は騒いでいる彼らを放っていおて次のグループのところへ走りだす。
投げナイフは当てる用、混乱用にファイア・ランスでテントか何かを燃やしてあげるのが良いかもしれないな。
また近くのグループのところにたどり着くと、さっきの声が聞こえていたのか焚火を背にするように囲んで周囲を警戒しているのがわかる。
俺は後ろ側にまわりこむと、焚火越しに適当に二本ほどナイフを投げる。
「ぐっ」
「後ろだ!何人かいるかもしれん、警戒を怠るな!」
当たったみたいだな、ここはこれでいいかな。
さらにファイア・ランスで荷物を燃やして、ここもガサガサ音を立てながら俺は逃げていく。
それを何度か繰り返しているうちに、森の中は夜なのにかなりの喧騒が聞こえてくる。
剣戟の音も聞こえてくるから争いだした勢力もあるだろう。
途中で魔物も暴れてほしいのでナイフを軽く刺して起こしたり、ファイア・ランスで檻を燃やして破壊したりと、できるだけ寝起きで混乱する状態にしておいた。
現在は森の中で潜伏していたほとんどの勢力が周囲のグループに対して敵対行動をとっている。
その中で動きがない、もしくは異常な反応を示しているのが外側にいる二つ。
片方のグループはほとんど動いていない、もう片方は・・・気配が薄くなったり戻ったりと通常ありえないことを繰り返している。
初めは特に気にしていなかったのだが、そのグループだけがそれを繰り返している。
俺はこれがはぐれ魔族、そして動きを見せないのがエヴァさんたちだと推測している。
俺の目標はあくまでもはぐれ魔族を人目にさらして、セリス暗殺計画を裏で操る主犯として王都の貴族たちに周知することだ。
このまま静観させるわけにはいかない。
俺は一直線に外周部にいる気配の元へ向かう。気配は四つ。
ここに四体のはぐれ魔族がいると考えられる。
目的は一つだけ魔族一人の確保。
腕輪を一つ外している今の俺なら何とかなりそうな気はするが、もう一つの魔族勢力のエヴァさん達がどう動くのかはちょっとわからない。
できる限り早く、一体を確保して逃げるのも手段としてはありだと思っている。
目標の場所にたどり着いた。
こっそり覗くと、冒険者風の男女合わせて四名が焚き火の周りに集まって警戒をしている。
パッと見た感じだと・・・人族の冒険者にしか見えない。
俺の感が大外れだったか、人族に化けているか、ただ今まで見た王都の冒険者よりはできる印象を受ける。
まあいいか、人族ならそれはそれでこのイベントに強制参加して貰えばいい。
「ファイア・ランス」
俺は集まっている彼らの直線上にある焚き火に向かって威力を弱めた魔法を放つ。
気がついた彼らの反応は早かった!
素早く散開するとこっちをしっかりと見つめてくる。
今までの冒険者達とは全く違うな。
俺は警戒する彼らの前に姿を現す、もちろん仮面は被ったままだ。
「こんばんは、はぐれ魔族さん。こんな所で野営ですか?」
俺の魔族、という言葉にピクリと反応する。
「何を言っているんだ?魔族?襲撃してきて意味のわからない事をっ!」
彼がリーダーかな、全員が黒い髪、黒目、黒い革鎧を着ている。
他の三人は静かにゆっくりと俺を囲むように移動している。
うむ・・・これ間違ってたらちょっと恥ずかしいな、でも冒険者になって活動していたなら、貴族街で動きがなかったのは納得できる。
俺は左に回り込んできた女性に瞬時に近づくと、腹パンを入れて吹っ飛ばし木に叩きつける。
「えぎぇ・・・」
女性が出しちゃいけないような声を出して気絶する。
「なっ!?馬鹿な!目で追うのがやっとなレベルのヤツが王都にいるだと!?」
絶句している彼らを無視して倒れた女性に近づいていく。
女性は特に角が生えるなどの形状の変化はない、が、暗くてよく確認できないが、肌の色が薄黒く変わっているように見える。
「ライティング」
女性を仰向けにして上空に明かりを出すと、変装の魔法が解けたのか肌が青黒く変化している。
これは確定だな。
「知ってる。影族だな。確か影を使った能力を持ち、上位の魔族になると短い距離だが影の中を一瞬で移動できるとか。」
夜に影族か・・・後三人の中に同じ種族や上位者がいると、夜の森とか相性最悪だな。
影移動がどれぐらいの速度でできるか知らないが、逃げられる恐れもある。
俺は剣を倒れて気絶している影族の女性に突きつけるとまるで悪役のような台詞を吐く。
「おい、コイツの命が惜しければ降伏しろ。一人だけ捕虜にする。」
「クソがっ!てめぇの要求はそれだけか?その程度で俺達が従うとでも思ってんのか?」
リーダーの言葉で周りが殺気立つ。
思ってはいないけど、できるならもっと魔族魔族してる見た目の捕虜がほしいんだ。
「リジェクト・ケージ」
倒れている女魔族を結界で包む、これで早々奪われないだろう。
魔法を使ったと同時に、右側にいたデカい男に向かっていく。
反応されたが、その程度じゃ遅い。
懐に潜り込むと下から斬り上げて腕ごと胴体を斬る。
腕は切断されて何処かに飛んでいったが、殺さないように手加減しているから真っ二つにはなっていない、が胴体はかなり深く斬ってしまった。
血を吹きだして倒れる、デカい男にアイテムボックスから出した低級ポーションをかけて傷をふさぐと同時に俺はその場を飛びのく。
ザシュ!!
俺が飛びのいた場所の地面から剣が生えてきてすぐに地面に引っ込んでいく。
これは影移動か、明かりをつけているからある程度限定的にはなっているが、影の中にもぐって攻撃してきたと。
俺が地面に着地する瞬間にも剣が生えてくる、二人の連携で俺を串刺しにするつもりか!
飛びのいて浮いた状態で俺は身体をひねると地面から生えてきた剣を、右手を一振りして持っている片手剣で切断し着地する。
はぐれ魔族二人の気配は下方向だ。
そこまで詳しくはないが、どれほど潜っていられるんだ?
すぐさま気配が俺の真下に移動し、剣だけが飛び出してくるタイミングで俺はそれを躱して地面に片手剣を突き立てる。
微かに手ごたえを感じる、影にもぐっているからと言って無敵なわけじゃないってことはわかった。
離れたところにいる地面の気配目掛けて投げナイフを投げて刺さるが、スッと気配は移動する。
これはあれか、片手剣は魔力剣だからダメージを与えられたが、魔力が込められていない武器だと影移動中はノーダメージって感じだな。
二つの気配が俺から離れた場所で影から実体が出てくる。
女魔族の肩に傷がついて血が流れている、さっきの手ごたえはこれか。
「どうする?実力差は明白。これ以上やっても無駄だと思うが・・・」
そう言いかけた俺に、二人で何か能力を使ってくる。
暗い影が二人の足元から立ち上り、波紋上に広がって俺に襲い掛かる。
何だこれは?魔法じゃなくて影族特有のスキルか何かか?
俺は片手剣に魔力を強く流し込めると、その黒い波を斬り裂いた。
斬り裂かれた影のようなものは飛び散り霧散する。
「これも効かないのか、クソッ!化け物め!」
まあ普通とはちょっと違うとは思うが化け物は心外だな、俺なんかよりももっとヤバいのが世界にはいるからな。
そのまま突っ込んでいくと二人同時に斬りかかってくるが、片方を片手剣で受け流し、片方をシールドで流して女魔族の方は片手剣の背で叩きつけて昏倒させる。
「さて、後はリーダーのお前ひとりだな。」
改稿




