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王都動乱9

「じゃあ協力するよ。制御は練習した方がいいし」


 俺はセリスの手を取る。


「どういうことです?」


 戸惑うセリスに答えず俺は軽く魔力を流す、俺からセリスに微量の魔力が流れていく。


 たぶん本来の魔力制御とはちょっと勝手が違うけど、他人が垂れ流してる魔力を制御するのも少しは練習になるだろう。


「これは!?魔力が流れてくる。」


 他人から魔力が流れてくるのが初めてなのか目を見開き驚愕する。


「自分の魔力を制御するのとはちょっと違ってこれで何ができるわけでもないけど、制御の訓練にはなるからさ」


「その年でここまで魔力を自由に使えるんですね!?すごいっ!」


 そういえば言ってなかったっけ?まあ俺も初級ぐらいしか使えないしな。


 初めは他人から流れてくる魔力の感覚に珍しがったり戸惑っていたが納得したのか、セリスが目をつぶり制御を始める。


 勝手の違う魔力制御に苦労していたみたいだが、さすが魔眼の制御をしていただけあって、数分で落ち着かせることに成功していた。


「面白いことをしていますね。さすがその年でEランクともなると魔力の扱いもかなりのものです、驚きです」


 俺とセリスが魔力制御の訓練をしていると、ロック先生が近づいてくる。


 ロック先生は生徒たちのやる気を起こそうとしているのか何なのか大声で俺を褒め称えてくれる。


「俺の魔力制御の練習にもなるので。」


 周りを見てもこっちを睨んでくるやつはいるが、そこで対抗しようと頑張り出すヤツはいないな。


 この世界では強くなくては生きていけない、一歩町の外に出ると命の危険が常にあるからだ。


 俺は人工勇者としてバカみたいな訓練をさせられていたからできることが多いけど、ある程度力がないとすぐに死んでしまう。


 だが、王都は魔物の脅威が他に比べるとかなり少ない、その辺の意識が貴族には低いのか力を求めていないように感じる。


 自分は大丈夫だと本気で思っているのだろうか?


 ちょっと前にアース大陸同盟が魔族領に攻め込んで、返り討ちにあったばかりなのにここは貴族の後継が来る学園ではなく、どちらかというと前線で武功を立てないといけない立場だというのに。


 二時間ほどの魔力制御の訓練の後、剣術の授業に入る。


 これはみんなやる気があるのか気合いを入れて木剣を振り回している・・・確かに剣術はかっこいいとは思うが、俺は魔法の方が派手でかっこいいと思うんだが・・・そこは転生者と元からこの世界にいるものの意識の差なのかな。


 この授業はセリスの傍にいるわけにもいかず、余裕を持ってフォローに入れる位置に他の護衛達と一緒に待機して見守っている。


 ただ警戒は一切怠らない。


「おい、お前は本当にEランクなのか?」


 やっときたか、いつになるかと思ってたよ。


 顔を向けると筋肉そこそこのデカいおっさんがいる。


「ああ、本当にEランクだよ。ギルドプレートでも見せるか?」


 俺はギルドプレートをおっさんに見えるようにかざして見せてあげる。


「ちっ・・・最近のギルドはそんな簡単にガキでもEランクになれるのかよ、質が落ちたもんだな。」


「かもしれないな。相手の実力も理解できないデカいだけのヤツが、王都のギルドには最低でも四人いたからな」


 俺は王都に来て早々絡んできた、確か四重牙とかいう冒険者パーティーを思い浮かべる、あれはもう冒険者じゃなくてただのチンピラだったな。


 おっさんは俺が何を言っているのかわからなかったらしい、関係ないもんな。


「俺はEランクのナインだ。アンタは?」


「俺はDランクのバズウだ。この先輩がお前が本当にEランクの実力があるか試してやろうか?」


 俺を見下しながら言ってくる。


「たかだかDランクのアンタが冒険者ギルドよりも正確に実力を測れるとは思えないな」


「何だと!?クソガキがっ!喧嘩売ってんのか?」


 バズウがデカい声で怒鳴り出す。


 驚いた生徒たちが手を止めてこっちを見てる、セリスやシルも驚いてポカンとしている。


「売ってきたのはアンタだろ?御託はいいからさっさとかかってこいよ。口だけか?」


 俺とバズウが正面から睨み合う。


「何をしているのですか、あなたたちは!?」


 ロック先生が急いで間に入ってくる、これはちょうどいいな。


「ちょうど学生たちに模擬戦を見せてあげたいなって、このDランクの先輩と話していたところです・・・許可をもらえますか?」


「ああ、そういうことだ。先生、許可をくれ」


 俺とバウズはお互い目を離さず睨み合ったままロック先生に許可を求める。


 ロック先生は軽くため息をつく。


「わかりました。ただ、あくまでも模擬戦というかたちで、使用武器は木剣でということでいいですか?」


 俺たちは頷くと、俺はセリスにバウズは護衛対象に木剣を借りに行く。


「大丈夫なのですか、ナイン?相手はDランクの冒険者ギルドでもそこそこ有名な人ですよ。」


 心配そうに聞いてくるセリス。


 バウズは有名なのか、確か王都ではEランクがほとんどでDランクでもそんなにいないといってたな。


「たぶん大丈夫です。どうせいつかは絡まれるので、やるなら早いほうがいいし、有名な冒険者の方がいい」


「ナイン。まだ初日です。ここで負けることは許されませんよ。」


 真剣なまなざしでセリスが木剣を俺に渡してくる、俺はセリスに頷くと木剣を受け取り軽く三回ほど振ってみる・・・木剣ていうのは結構軽いな。


 ロックが学生たちに説明をする。


「今日は特別ということで、冒険者のお二人が模擬戦を見せてくれます。しっかり見ておくように」


 学生たちは、俺たちの雰囲気にちょっと戸惑いながらも先生の指示に従って俺とバウズの周りを囲むように集合する。


 バウズのところにはニヤけた顔の、金髪の貴族の子供が立って何かを話している、あれがバウズの護衛対象か。


 俺は木剣をもって中央に進んでいく。


「ガキ。ここまで来たら謝っても許してやることはできないぞ」


「名前すら覚えられない程度の知能しかないんだな。お前本当にDランクか?」


 俺はガンガン煽っていく、バウズは顔を真っ赤にしながらブチ切れている。


「審判は私が勤めさせてもらう。・・・それでは、はじめ!」


 ロック先生の掛け声と同時にバウズは突っ込んでくる。


 おいおい、普通は格下が先手を取っていいんじゃないのか?いや、それなら合っているか。


 俺はバウズの上段からの斬撃を一歩引いて躱す、すぐさま斬り上げてくるがそれも一歩引いて躱す。


「ガキ、逃げてばかりか?口ほどにもないな。」


 バウズが煽ってくるが、こいつは気がついてないのか?俺が一歩踏み込むだけで簡単に懐に入ってボコボコにできるのを。


「学生に見せるのが目的の模擬戦だからな。簡単に勝ったら勉強にならないだろう?悔しかったら当ててみろよ」


 俺が煽ると、さっきよりも勢いを増して斬りかかってくる。


 それを俺は紙一重で避けて、軽くバウズの手首に木剣をコツンと当て、ニヤリとする。


「真剣ならこれでお前の手首はスッパリ斬れているな、どうした?Dランクってその程度なのか?お前の言う通り冒険者の質が落ちてるのかな」


「クソがっ!!」


 バウズは何度も斬りかかってくるが俺はそれを紙一重で避ける、途中から蹴りや拳も飛んでくるが、それも全て避ける。


 その度にバウズの身体の急所になる部分に木剣を掠らせるように、コツン、コツンと当てていく。


 もうこの程度で十分だろう。


「実力差はわかりきっただろう。降参すればここで終わらせるぞ」


「はっ!避けるばかりでまともに一本も入れられないくせによく言うぜ!」


 こいつ、本当に何もわかってないんだな。


 しょうがないので俺は大ぶりの一撃を躱すと同時に踏み込んで、カウンターで鳩尾に突きを抉りこむように叩き込む。


「えぎぇ・・・」


 バウズは膝から崩れ落ちるように顔を地面に叩きつけて気絶した。


「勝負あり、ナインの勝ち!」


 ロック先生の終了の合図で、周りの歓声と、セリスとシルが駆けてくる。


「よかった・・・ここまでナインが強いなんて思わなかった」


 セリスが安心したように息を吐き微笑んでくれる。


 まあ王都のDランクがちょっとレベルが低いからな、それに盗賊数人相手にするよりも楽だったし。


「ちょっとやり過ぎだとは思うけど、ナインは強いな。さすがセリスが護衛にするだけのことはある。一度手合わせして欲しい!お願いします」


 そういうとシルは頭を下げてきた、シルも俺の実力を理解したのか格上に話すようにちょっと話し方が変わったな。


「時間があればということで。俺は毎度毎度絡まれるので、一回こうやっておかないと面倒なんだよ。」


「そうか、私も侮っていたことは否めない。ごめん」


 シルさんはさらに頭を下げてきたけど、絡まれなければ問題ない。


「いえいえ、絡んでこなければ大丈夫。ある程度は仕方ないと思ってますから」


 それで授業は一旦停止になり、俺はロック先生と一緒にバウズを壁際に寄せる。


 彼は尊い犠牲だからな・・・丁重に運んであげるが結構重い。


「まさかあれほどとは。どこで訓練したんだい?もっと小さい頃から訓練しないとそこまでにはならないだろ?」


 ロック先生が聞いてくるが俺は答えを濁す、冒険者が色々喋りすぎるのもな。


 たぶん、セリスを殺そうとしてる一派が聞いているかもしれないし、ロック先生が違うとは言い切れない。


「そこはあまり聞かないで欲しい部分です。冒険者ですから手札は教えられません」


「そうだな、失礼した。」


 ロック先生と話している最中も、バウズの雇主の金髪少年が俺の方をずっと見ていることに、俺は気がついていた。


 様子を伺うが、敵意みたいなものはほとんどないように感じる。


 自分の護衛が負けた悔しさはあるだろうが・・・残念だが、バウズは生贄になったのだ。


 他の護衛さん達は、俺はヤバいと思ったのか、一切こっちを見ようともしない。


 冒険者ならパッと見て強さはわからなくても、実際に戦っているところさえ見れば俺とバウズの実力に天と地ほどの差があるのははっきりと理解できるだろう。


 散々屈辱を与えた上で一撃、もう俺に無意味に絡んでこようとはしないだろうな。


 これで少しでも護衛に専念できるといいんだけど。


 それから少しの間、剣術の授業が行われてチャイムと同時に昼休憩に突入する、剣術の訓練はほとんどの生徒がやる気を出してくれて模擬戦がいい刺激になったとロック先生が語っていた。


 さて、忘れていたが心配するのは俺の昼飯だ、どうすればいいのだろう・・・。

改稿

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