王都動乱3
街道の隅っこで野宿をし起きた時には焚き火は消えていた。
随分よく眠っていたらしい、少し空が明るくなってきている、起きるのにはちょうどいい時間帯だな。
魔物避けの結界のおかげか魔物に襲撃を受けることはなく、人も通らなかったのか俺が夜中に起きることはなかった。
多少の眠気が残る中、あくびをしながら半分寝ぼけたまま周囲を見渡す。
毛布から出ると魔法を使って水を出し顔を洗う、朝方はちょっと冷えるな。
パシャパシャと顔を洗って残りの水は念のため焚き火跡にかけておく、完全に鎮火しているとは思うが念のためだ。
まだ完全に明るくなっているわけではないが、街道を朝食代わりの干し肉を齧りながら歩いていく。
たまに索敵を使うと魔物の気配はするが弱い魔物なのだろう、街道に出てくることはない。
歩きながら地図を見ていると、街道から少し外れたところに小さな村がある。
本当は初日はこの村まで行く予定だったのだが馬車の襲撃や盗賊のアジト襲撃で時間がかかりこの村までたどり着かなかったんだよな。
今から村に行ってもただ通り過ぎるだけになってしまうのでスルーということで、急ぐ旅ではないが無駄に日数をかける理由もない。
俺が観光したいのは王都なのだ。
森の間の街道を抜けて分岐をいくつか通ると、やっとというか当然といえば当然だが他の馬車とすれ違うようになってくる。
子供が一人で歩いてるのを変な目で見てくるが、当然声をかけてくることはない、行き先が真逆だからな。
馬車の荷台には護衛依頼を受けた冒険者なのかゴロゴロしながら暇を持て余している。
あぁ、俺も本当はあんな感じでゴロゴロしながら馬車の旅をしているはずだったんだけどな、しかも魔物が全く出てこないとか護衛なんて必要ないレベルだったし、まあほとんど盗賊ようなのかな、壊滅したけど。
それからの道のりは何事もなく、俺は王都ツリーベルの外壁へとたどり着いた。
王都に近づいていくと、街道にぶつかっている外壁にはいくつかの列ができていた。
こりゃ入るまでに時間がかかりそうだ、俺はどこに並べばいいのだろう?
間違えても並び直しってのが面倒なので列を追い越して門のそばに立っている兵士に聞きにいく。
「すみません。王都に初めてきた冒険者なんですが、どこに並べばいいですか?」
「君はその年で冒険者なのかい?それだとあそこの馬車が並んでいない所に並んでくれ。」
兵士さんが指を刺した方向には一箇所だけ人だけしか並んでいない場所が見える、あそこなら早く入れそうだ。
俺はお礼を言って早速並び始める。
ちょこっと見たところ、ここに並んでいるのは冒険者ぽい人や徒歩の行商というのか大荷物を背負っているばかりだな。
回転率がいいのか身分証を出してすぐに中に入っていく。
俺の順番になったのでギルドプレートを見せ、名前を申告する。
「ヘプナムの町からきたEランク冒険者のナインです。」
兵士はギルドプレートに書いてある名前と照合し、手に持っている紙に何か書いていく。
「その年でEランクとは凄いね。一人で歩いてきたのかい?Eなら護衛依頼も受けられるはずだけど。」
コミュニケーションの一つなのか、質問事項なのかはわからないが兵士さんが俺に聞いてほしくないことを聞いてくる。
「・・・それが募集人数が二人以上になってて受けられませんでした。複数パーティーは子供って理由で断られました」
俺が悲しい事情を話すと兵士さんは苦笑しながら納得してくれた。
「そうか、大変だったね。通ってもいいよ。」
そして俺は王都の門をくぐることができたのだ。
門を潜って町に入ると、そこは白く綺麗な街並み、広い大通り、遠くに見える貴族街まで石畳が続いていく。
人はものすごく多く栄えているが町並みはとても綺麗で変な臭い匂いもしないし、道にゴミが落ちていることもない。
ここツリーベル王国の王都には三重の門がある。
一つ目は、外から中に入る外壁につけられている門、ちょうど今俺がくくったものだ。
二つ目は、王城を囲むようにして作られている貴族たちが住む屋敷を隔てる貴族門。
ここから先は貴族か用がある人じゃないと入れず、チェックがかなり厳しい。
三つ目は、王城を囲む城門、城に用がある人じゃないと入れない。
俺たちみたいな平民は外壁と貴族門の間の一番広いエリアが生活の場になる。
人口が増えるに従って拡張する計画があったみたいだが、魔王討伐作戦の失敗でご破算になったそうだ。
兵士さんに冒険者ギルドの場所を聞いてみたところ大通り沿いにあるそうなので、ゆっくりと大通りの店を見て回る。
武器防具の専門店から、さらには何でも売っているところ所謂ド◯キみたいなのもある。
王都の街並みをキョロキョロしながら、お登りさんのように歩いていると、前から来た筋肉ムキムキの冒険者さんがわざと俺の方に突っ込んでくる、が、俺は超速で華麗に回避して何事もなかったように歩いていく。
後ろの方で誰かが転けた音がするが俺は当たってないのでセーフ。
あれが当たり屋ってヤツなのかな?田舎者丸出しの俺をカモにしようとしたのだろう、都会って怖い。
「ガキ!待ちやがれ!」
ただ一言だけ言わせてほしい。
俺の前世は東京生まれの東京育ちなのだ。
そう!どちらかと言うと都会に来たお登りさんじゃなく、観光地に来たお登りさんという方が正しいのだ!
「無視すんなっ!クソガキがっ!」
声とともに後ろから掴みかかってくる腕をまたもや華麗に回避した俺は、腕を掴んでその勢いのままお辞儀する。
これぞ必殺一本背負い。
ガズッ!!!
俺が下手くそだったのか身長差の問題なのかはわからないが、子供に掴みかかってきた変質者A(仮)は頭から石畳に叩きつけられ崩れ落ちる。
おかしいな、こんなはずじゃなかった、俺は首を傾げる。
体育の柔道の授業でやった時はちゃんと背中から落ちたんだけどな・・・ああ、わかった!授業でやってたのは背負い投げだ。
たぶん、教わったこともない、漫画で見ただけの一本背負いをイメージだけでやったから失敗したんだな。
まあいっか。
変質者A(仮)は静かになった、これ以上大通りで立ち止まっているのは迷惑だ、俺と倒れている変質者の周りには円状にスペースができて道行く人達が何事かと見ている。
俺はその場でぺこりとお辞儀をすると変質者A(仮)をそのままに、冒険者ギルドを探して大通りを歩いて行った。
冒険者ギルドはすぐに見つかった。
王都の冒険者ギルドはヘプナムの冒険者ギルドと同じぐらい大きく、そして看板が何故かデカい。
王都だとある程度周辺が整備されているから魔物討伐は他より少なく、町の移動間の護衛や大商会の臨時用心棒などが主だと聞いている。
そして、ほとんどがEランク冒険者ばかりだということだ。
強力な魔物もほとんど出ることはないし、出たとしても騎士団がいるので冒険者の役割というのが調査で終わってしまう。
なので上を目指す冒険者は拠点を移動してしまうそうだ。
ただ、それでも一日生活できる日銭を稼げてしまうってのが王都ってところだ、物価も高いが報酬もそれだけ良いのだろう。
俺は冒険者ギルドの扉をくぐる。
作りはヘプナムの町の冒険者ギルドとあまり変わらない、隣接している酒場がちょっと大きいぐらいかな。
昼間だというのに酒場にはそこそこに人がいる、仕事がなくて暇を持て余しているのかただのダメ人間なのかはわからないが・・・。
俺は盗賊団から頂いたお宝たちをギルドで売っぱらうのが目的だからどうでもいいがな。
少し見まわしてすぐにギルドの買い取り用窓口を見つけると一直線に買い取り用受け付けに行く。
冒険者ギルドは基本的に何でも買い取ってくれる、武器防具はもちろんのこと冒険者が欲しがる便利アイテムから日用品まで。
ギルドからいろいろなお店に流されたり、オークションにかけたりするので仲介手数料は取られるが、適当な店で売却すると初心者や俺みたいな子供は足元を見られることがある。
なので冒険者の基本は冒険者ギルドを通しての売買が良いとされている、と見習い時代の授業で習った。
受け付けに座っている暇そうなおじさんに声をかける。
「すみません。買い取りをお願いします」
「うん?見ない顔だな。ここの新しい見習いか?」
受け付けに座ったまま慎重さもあって見下ろすようにおじさんが見てくる。
「今日、他の町から来たEランク冒険者です」
俺はギルドプレートをおじさんに見せながら答える。
「は?お前さんみたいな子供がEランク?・・・本当だ。これは失礼したね。で、何を買いとるんだ?」
おじさんはたたずまいを直すと仕事モードで話し始める。
「大量にあるんだけど、ここに出していいの?」
「じゃあ奥に来な。倉庫があるからそこで査定しよう」
俺はおじさんに連れられて冒険者ギルドの裏にある倉庫に連れていかれた。
「ここに持ってきてくれ」
俺はアイテムボックスの中から、武器、防具、何かわからないアイテムなど、盗賊のアジトから持ってきた荷物をポンポン出していく。
「こりゃまた多いな。その年でアイテムボックスまで持っているのか・・・ちょっと出しておいてくれ、一人じゃ大変だから人を呼んでくる」
そう言うとおじさんは走って人を呼びに行った。
ある程度、場所を別けたほうがいいな、剣は剣、盾は盾など種類別に別けて出していく。
俺が出し終わると同時におじさんが二人ほど連れて帰ってきた。
「よし、なるべく早く終わらせるからちょっと待っててくれ」
おじさんたちは三人でてきぱきと俺が出した物品を査定していく、結構大雑把でもいいんだけどな、中古の服みたいにgで買い取りなのかと思っていたが結構しっかり査定してくれている。
査定がされている間、手持無沙汰に査定の様子を眺める・・・あっ、そうだ、俺はセリスにもらったナイフを取り出す。
これも売ってしまおう、売っていいって言ってたしね。
査定が終わってギルドのおじさんが俺の方にやってくる。
「いや~かなりの量だったね。まあほとんどの武器や防具は既製品ってところだね。悪いものはほとんどなかったけど、逆にとても良いものは無しって感じだったよ。金額はこれね。」
うん、まあこんなもんだろう。
リストを見ながら、正直お金に困ってないので適当にサインをする。
「ついでで悪いんですけど、これも買いとってもらえますか?」
「ああ、じゃあちょっと見せてもらうよ。」
ナイフを手に取り、鞘から抜いて、おじさんはロゴを見て驚いた表情になる。
これは中々の一品だったか!?
「お前さん、これをどこで手に入れた?」
真剣な表情で顔を近づけてくる。
怖いから離れて!・・・何かとても嫌な予感がする・・・。
「これは王都に来る途中で馬車が盗賊に襲われていまして、それを助けたというか護衛している人に助太刀に入ったら、お礼としてこのナイフをくれました。売ってもいいと言われたので、この装飾なら高く売れるんじゃないかと思いまして・・・」
おじさんは俺の説明を聞いて黙る。
怖いから何か言ってほしいんだが、まさかヤバいものを押しつけられた?
おじさんは何度も確認するようにナイフを眺める。
「すまねぇな。これは買いとれないんだ。このナイフはな、ツリーベル王立学校の生徒のものだ。お前さんはその子と知り合いだったのか?」
「いいえ、初対面ですが・・・何でですか?」
「簡単に渡すようなものじゃないはずなんだが・・・いや・・・お前さんは、その年でEランクなんだよな?」
いやいや、何でって聞いてるんだから俺の質問にも答えてほしい。
「はい、ヘプナムの町の西の森でゴブリンの大量発生があったのは知っていると思いますが、それに参加してEランクになりました、で、何なんですかそのナイフ?」
「これはな。ツリーベル学園の敷地内に入るための身分証みたいなものなんだ」
改稿




