仄暗い闇の中で9
俺は西の森に転移するとまずは魔窟に向かった。
初めはギルドマスターのところに作成中のマップがあるかと思ったが結局はまだ作成中のはずだ。
町と森を往復するのではなく魔窟の近くでマップを模写して、ある程度できた物をギルドに持って行ってるのだと思っている。
そうしないと手間がかかりすぎる。
フードを被って気配を殺し魔窟に近づく。
予想通り魔窟の入り口には柵が設置されていて簡単には入れないようになっている。
そして周辺にはテントが張ってありギルド職員や冒険者が行き交っている。
ここにいるのはCランク以上の冒険者だ、もしくはパーティーだ、俺が知らないだけでCランクよりさらに上の冒険者も参加しているかもしれない。
カレンさんはアンジェさんとパーティーを組んでいるが自身はBランク、パーティーの蒼月はCランクだったしな。
セバンスみたいな感知能力に優れたスキル持ちがいたら衣を纏っていても察知してくる可能性はある。
俺は全体を見回せる木の上に慎重に登り冒険者が多くいるテント周辺を観察する・・・探索をおえて休憩中の冒険者だろうか、テント近くで休んでいる集団がいる。
「いつになったら終わるのかねぇ?もう結構進んでるはずだろ?」
「ああ、明かりがあると言っても四六時中洞窟の中はキツいものがあるな。早くおわらねぇかな」
観察してわかったのが、何組かのパーティーが泊まり込みでここにいるみたいだ。
数組のパーティーが探索しつつ明かりを設置、持ってきた明かりを設置し終わったら帰還して次の組に引き継ぐという形らしい。
魔物の話は出てきてないからゴブリンはもうほとんどいないのかもな。
俺は少しの時間そこにとどまって観察をした。
わかったことは前のパーティーが入ってから二日経過しているからもうすぐ出てくるんじゃないかということだ。
俺はそのまま木の上で待機し夜になるまで待って地図を模写しているであろうテントに侵入した。
机の上には地図が広げてあり、それを見ると魔窟は下に下に降りていっているわけではなく、ある程度降りるとそこから横に広がっていく感じになっている。
これを書き写すのはちょっと大変だな。
ただ所々にチェックポイントが書かれているので迷うことはなさそうだ。
大雑把にだが地図を書き写した俺は封鎖されている柵の一番端に行きそこをこっそりよじ登って柵の内側に入る。
索敵を使い周囲を確認するが魔窟の中には感知できる範囲に気配なし。
探索中のパーティーがまだ帰ってきていないから脇道がない部分で鉢合わせしないように気をつけながら魔窟に入っていく。
魔窟の中はわかりやすくいうと鍾乳洞の中みたいな感じだ、ダンジョンみたいに高さや横幅がほとんど揃っているわけではなくまちまちになっている。
ただゴブリンが大量にいただけあって地面は歩きやすくなっているのだけが幸いだった。
暗さも懸念していたが魔素を吸いこんで光る魔道ランプが一定間隔で設置してあるので問題なく歩いていける。
これは探索チームの冒険者に感謝だな、まあ横からダンジョンコアのなりそこないは俺がかっさらっていきますが。
まずは一度広がっている一番深いところまで降りよう。
入り口からは真っ直ぐではないがほぼ一本道で下まで続いている、脇道もあるが地図上では全て行き止まりで広い空間になっている。
ゴブリンの待機所というか生活空間になっていたのだろう、俺は足早に洞窟を下っていく。
ふと索敵に前から気配が入っていた。
集中するとこれは魔物ではなく人族のものだな。
俺は少し引き返し脇道に隠れて様子を伺う。
四人パーティーが俺の前を通り過ぎていく。
探索に入っていたパーティーの一つだな、後何組かいるはずだからさらに慎重に行こう。
一つのパーティーをやり過ごした俺は一番下まで到達する。
一番深いところまで到達するとそこは天井も高くなっていて横幅もかなり広くなっていた、どうせならここに拠点を作ればいいと思うが・・・精神安定上の理由でやめたのかな?
近くに設置されている魔導ランプの元に行き地図を開いて確認する、ここからは複数のルートに分かれていて冒険者パーティーもここから各自自分たちが指示されているルートに魔道ランプを設置しているのだろう。
少し悩んだ結果、この一番進んでいるルートを行ってみよう。
索敵のおかげで周囲に魔物がいないのもわかるしランプのおかげで暗くもない、これなら直ぐにマッピングしてあるところまで辿り着けるだろう。
それから数時間後、俺は地図の端にたどり着いた。
まだランプは続いているが、ここからは今マッピングしている人達が置いた物だろう。
ここから鉢合わせになる可能性もある、俺はゆっくりと歩きだした。
途中途中で地図を書き足す、帰るときに迷子になったらたまらないからな。
しばらく進んでいくと鉄臭いにおいが漂ってきた。
これは・・・ゴブリンとの戦闘があったのかもしれない。
俺は足音を立てないように、けれど速足で洞窟内を進んでいくと進めば進むほど鉄臭いにおい、血の匂いが濃くなってきている・・・洞窟内だから換気されにくいのだろう。
しばらく進むと広く大きいスペースが見えてきた、俺はすぐには入らず壁に身を寄せて中を伺う。
そこは壁や床一面に苔がびっしり生えておりそれが薄っすらと光を発していた。
ヒカリゴケっていうやつかな?
天上は高く横幅もかなり広い縦は薄暗さもあるが先が見えないほどまで広がっている。
目を凝らして奥の方を見るとはっきりとはわからないが何かが蠢いている。
ゴブリンか?索敵にも魔物の気配が引っかかっている。
気がつかれないように慎重に近づいていくと、くちゃくちゃ音を立てて何かをしている。
そこには四体のゴブリンがいて何かを食っている。
食事だろうか?嫌な予感を抱きながらさらに近づいていくと剣が落ちていた。
嫌な予感が当たった・・・食われていたのは冒険者だ。
だがおかしい、ここの探索はCランク以上の冒険者だ、ゴブリン四体程度でCランク以上の冒険者に勝てるとは思えない。
暗さを活かした奇襲?いや、他に冒険者を殺せる存在がいると考える方が自然だ。
それに他のパーティーメンバーはどうした?
俺は音を立てないように剣を抜き後ろからゴブリンの首を斬り落とす、すぐさま剣を返してもう一匹。
さらに二匹が声を出す間もなく斬り捨てる。
俺は剣を持ったまま先に進んでいくと、薄暗くなっている前方に蠢いている場所が確認できる。
たぶんそこに冒険者の仲間がいるのだろう。
俺は同じように近づくが他のゴブリンの気配のある場所と距離が近い。
どうするかと一瞬迷ったがここまできたら迷っていてもしょうがない、結局は倒さなければ進めないのだ。
俺は一気に近づくとゴブリンを斬り捨てる、さっきと同じように最速で音を立てず。
だが距離が近かったためゴブリンの倒れる微かな音を聞きつけたのか一斉に他の場所で食事をしていたゴブリンがこっちを向く。
「グギャグギャグギャ!!!!!」
一斉にゴブリンが吠える、うるさい。
俺はゴブリンの雄たけびに顔をしかめつつかまわず次の集団に接近する。
ゴブリンたちは棍棒や剣を構えるが気にせずそのまま剣をふるう。
武器ごと切断してゴブリンは血を吹きだして倒れる、そこからは乱戦だった。
他のところにいたゴブリンも集まってきてすぐに俺は囲まれそうになるが、足を止めず、囲まれないように動きながらゴブリンを一匹、また一匹と仕留めていく。
ゴブリンの数はそう多くないせいぜい二十匹程度だ。
魔法を併用することで苦労することなくゴブリンを殲滅できたとき、そいつは現れた。
ゴブリンと同じ緑色の肌、ゴブリンと同じ頭に一本角、そしてゴブリンとは違う二m以上ある巨漢。
鉄製の大剣を片手で持ってこっちを伺うように歩いてくる。
こいつか?ダンジョンコアを吸収したってやつは。
俺はグッと体に力を入れると一気に仕留めるために飛び出そうとする。
「グギャギャギャギャ、お前も食われにやってきたのか?人族の子供?」
ゴブリンがしゃべった!?
ゴブリンはある程度の知能を持つが人の言葉を話すことはない。
声帯がそう作られていないのか、しゃべらなくてもゴブリン同士でコミュニケーションをとれるからなのかはわからないが・・・。
俺はびっくりして身体の動きを止める。
「お前話せるのか!?ここで何をしている?」
「グギャ、俺はここの支配者だ。神になったんだ」
やはりこいつがダンジョンコアを食った個体みたいだ、もうとっとと終わらせよう。
俺は雷鳴の剣に魔力を流して突っ込んでいく、一気に仕留めるためにジャンプして頭を狙う。
ガギィ!!
俺の一撃は、何と命名デカゴブリンに受け止められた。
反応されたことも驚きだが持っている大剣も断ち切ることができなかった。
ジャンプで浮いている俺はデカゴブリンが受け止めたまま振り回した大剣に押されて吹っ飛んでいく。
地面の苔で若干滑りながらも何とか体勢を立て直す。
こいつBランクかそれ以上に進化してるのか!?
Bランク以上の魔物は自信からたれ流している魔力で持っている武器を強化できる、見た感じデカゴブリンの持っている剣は魔力剣ではない、そういうことなんだろう。
元々の武器の性能もあるが雷鳴の剣の一撃を受け止めた上に押し返すことができるなんて・・・。
「グギャ、お前今までの餌よりも強いな、ちょっとめんどくさい」
めんどくさいのはこっちも同じだ、ここまで強化されているなんて聞いていないですよ魔王様!ちょっと強化されるって言ってたじゃないですか。
ゴブリンの元々の魔物のランクはFだ、それがB以上になっているなんてもうそれはゴブリンじゃない。
しゃべれる知能がある上に図体がデカくて大剣か、リーチはかなり長いが懐に入れば何とかなるか?
俺は再度特攻する。
振り降ろされる大剣を避けると次は横に振ってくる、力任せではあるが振りも早い。
凪払いを剣で逸らして足元に飛びこもうとするが、そこに拳が落ちてくる。
それをさらに避けて後ろに回り込み膝裏を一閃。
切断まではいかないが、これで左足は使えないはずだ。
俺は大きく離れると様子を見る。
ビクン、と一瞬体勢を崩して前のめりになるがすぐに振り返ってこっちを向く。
これは・・・俺が斬った部分が黒い煙を出しながら再生している。
これはトロール種と同じ再生能力まであるのかよ、もうオーガ以上の強さになっているな。
一瞬動きが止まったから雷撃はそこそこ効果を発揮しているが・・・ちょっと面倒だがもっと踏み込んで切断しないとまともにダメージを与えられないかもしれない。
デカゴブリンが動き出すのに合わせて魔法を放つ。
「ファイア・ランス」
デカゴブリンは向かってくる魔法を大剣で弾き飛ばすとそのまま突っ込んでくる。
俺は距離を詰められないように離れながらさらに魔法を放つ。
「ストーン・バレット」
三つの石礫がデカゴブリンに向かっていく、これも剣で弾こうとするがそこはゴブリン、一つは防げたが二つは体にめり込む。
「グギャグギャ、お前ウロチョロするな。早く潰されろ!」
改稿




