仄暗い闇の中で7
二日目に入った時には多くのFランクパーティーが離脱した。
特に臨時パーティーは加減がわからず張りきり過ぎて体力を無駄に消費してしまっている。
ベテランのパーティーがフォローに入り、修正を重ねているので完全に崩されることはないが人数が少なくなった分、疲労も蓄積されていくだろう。
そして明かりをつけてはいるが夜の戦闘は精神を消耗するのでベテランの中からも負傷者が出てきた。
ここまでやってもまだゴブリンはいるのか?もう数万匹は倒しているはずだ、一体ここにどれだけのゴブリンがいるのだろう。
二日目が終わった時点でサイモンが体力的に限界に来ている。
本人は言わないがかなり疲労が濃いのだろう、ほとんどしゃべっていない。
そろそろ限界か、と思った時に伝令が走ってきた。
「ゴブリンが出てくるスピードが極端に落ちた!」
やっとか・・・ただまだレア個体は確認されていないそうだ。
「みんなもう少しだ。最後まで戦い抜いて凱旋しようじゃないか!」
張り切るのは良いがユリゲールの疲労もかなり濃い、できることなら金属鎧じゃなくて皮鎧にして少しでも疲労をやわらげたほうがいいのだが。
とりあえずもう少しって事で、みんなでギリギリまで残しておいたポーションを飲んで疲労を回復させる。
そしてとうとうゴブリンが巣穴か出てくることはなくなった、約二日と半日でこのゴブリン討伐の依頼が完了したのだ。
余裕のあるC級パーティー以上がここに残り巣穴の監視依頼を受け、残りの冒険者は一旦町に帰り依頼完了の手続きをする。
俺達も何とか最後までやり遂げることができ、みんな疲れているが明るいムードで町に帰ることができた。
俺も早く寝たい・・・こんな仕事してたら不健康すぎて背が伸びなくなってしまうのではないか。
ギルドに帰った後に盛大に打ち上げが始まったが俺はそれを辞退して宿に帰った。
それから二日後にはゴブリンの巣の調査依頼が出ていた、二日たった今もゴブリンは出てこないらしい。
それならばということで巣の調査をして中の様子、あわよくば他の出口を探すというものだ。
そして驚くことにゴブリンの数が九万匹以上だったこともあり、どこかに存在するであろう上位種を警戒してCランク以上のパーティー複数でマッピングとゴブリンキング討伐を行う。
問題なのはそこがダンジョンではなくただの洞窟ということだ。
ダンジョンとはよくあるゲームのように魔物がいてアイテムが落ちていて、人間が入って戦い下に降りていってボスを倒す、そのように作られたものだ。
この世界にもダンジョンがありそこに潜る冒険者も多くいる。
ただの洞窟はそう作られているわけではないので簡単に崩れるし、明かりがないと真っ暗だ、そして狭い。
そんな中で何日も潜っていたらおかしくなってしまうだろう。
なので期間を区切って複数のパーティーで巣のマッピングを行なっていく、そんな依頼だ。
俺と言えば何とEランクにランクアップした、俺だけじゃなく俺と臨時パーティーを組んでいたサイモンとマリンも一緒だ。
臨時パーティーで最後まで崩れず戦い抜いたのが俺たちだけだった事が評価されたらしい。
流石にユリゲールはランクアップしてはいないが、パーティーメンバーがランクアップしたわけだから高評価に違いないとDになるのは近づいたと喜んでいた。
そんなわけで俺たちは打ち上げ兼ランクアップのお祝いをしているのだ。
この世界では特にアルコールに対しての年齢制限などはない。
だから俺でも飲むことはできるのだが子供のころからアルコール依存症になるわけにはいかないので飲んでいない。
果実を絞って薄めたジュースを飲んでいる。
「ということでだ。臨時で組んだパーティーだが、僕たちでパーティーを組まないか?かなりバランスの良いパーティーになると思うんだ。前衛の僕とサイモン、中衛のナイン、後衛のマリン。」
ユリゲールの勧誘が始まった、そういえばこの依頼が終わったら勧誘するとか言ってたっけ。
そういえば何でみんなパーティー組んでないのだろう?同じ年齢ぐらいのFランクは多くいるはずだ。
「俺は良いぜ!ユリゲールとならいいコンビになりそうだ。」
すでに酔っているのかサイモンが酒を煽りながら意気揚々とグラスをあける。
サイモンはOKなのかマリンはどうなんだろう。
「私は・・・あまり遠くへ行けないの。だから、ごめんね。」
マリンは不参加ってことか、遠くに行けないってのはこの町に何かあるんだろうな。
「そうか。マリンは残念だが仕方ないね。ナインはどうだい?パーティーに入っていれば無駄に年齢で絡まれるようなことは減るよ」
ユリゲールは酒が強いのかカパカパ飲みながら俺に水を向けてくる。
「誘ってくれるのはありがたいが、年齢以外でもちょっと事情があってね。今はパーティーを組めないんだ。悪い。」
残念だけど身体のこともあるし、パーティー組んじゃうと魔王城に行きにくくなるからな。
勧誘した三人中二人が無理だと厳しいよな、ここは話題を変えよう。
「そういえば何でサイモンとユリゲールは今までパーティーを組んでなかったんだ?マリンは何か事情があるんだろうけど・・・。」
ユリゲールとサイモンは途端に苦い顔をする、何かあるのか?
「じゃあ僕から話そう。タイミングってやつかな。みんな知っての通りツリーベル王国では見習い冒険者の制度があるけど、その見習いの時に多くの人がパーティーを組んでしまうんだ。入った時期が悪くてね。パーティー組める相手も新人を入れてくれるパーティーもなかったんだよ。」
ああ、それわかる、俺の時もそんな感じだったな、俺の時はイジメに近かったけどな。
サイモンはどうしてだろう?
「俺はこんな性格してるからな。合うやつがいなかった。自分より弱い奴と組む気はなかったしな」
ああ、うん、それも納得できるな。
初対面であの対応じゃ嫌われちゃうだろう。
「そうか、そう考えると今回みたいなのってパーティーを組むきっかけとかにもなるんだな」
「そうなんだ!他の臨時パーティーもそのまま続行してパーティーを組むことになった人達もいるんだ。」
ユリゲールは楽しそうにパーティーとは何かを語り出す。
そうなるとこれをきっかけとしてパーティー募集掲示板に人が集まるかもしれないな、明日にでもちょこっとギルドを見に行ってみよう。
「マリンとナインはこれからどうするんだ?」
「俺は・・・そうだな、少しこの町から離れて知り合いのところにEランクになった報告でもしに行こうかと思ってる。ただ、ゴブリンの巣は気になるから早めに帰ってくるとは思う」
「私はせっかくEランクになったけど、無理せず今まで通りソロでできる仕事をやっていくつもり」
マリンは無理せずこのままソロで行くのか、マリンの魔法の強さならソロでも臨時パーティーでもなんでも行けるだろうな。
そんな感じで俺たちのお祝いは続いていく。
ゴブリンの巣か、魔王様はこの町によく来てるって言ってたし、この前もいたから何か知らないかな。
一旦魔王城に行こうと思っているからちょっと聞いてみるか。
さっそくお祝い会の次の日に俺は冒険者ギルドに立ち寄る。
パーティー募集掲示板を気になって興味本位で見にきたのだ。
やっぱりというか、Fランク、Eランクパーティーの募集がかなり多く出ていた。
ただほとんど誰も見ていない・・・理由はすぐにわかった、ほとんどが魔法使える人の募集しかないのだ。
いや、みんな魔力は持っているんだから自分で練習しようよ。
Dランク以上の募集だと特殊スキル持ちや剣士、斥候職のもあるけど。
すぐに興味をなくした俺は依頼掲示板の方を見る。
依頼が結構残っているな、ゴブリン討伐でFランクがかなりの数離脱してるからそのせいだろうか。
一通り掲示板を見た俺は満足してギルドを出ようとするがふと気づく。
エンレンさんがいない、いつもならすぐに声をかけてくれるんだけど・・・受付を見てみるがエンレンさんの姿はなかった、お休みの日なのかな。
さて、とりあえず一旦魔王城に戻るかリルに何も言わずに出てきてしまったから怒ってなきゃいいけど。
西の森には今までとは違って人が来る可能性が高いから慎重に遺跡に行かないとな。
急ぐこともないので歩いて西の森に向かう、天気がよく空は晴れわたっていて雲一つない。
こんな日に日向ぼっこできたら最高だろう。
そう言えば前に魔王様が西の森の奥に川か何かがあってそこがいいみたいなこと言っていたな。
俺は散歩気分で西の森に向かっていると、普段は見かけない西の森のほうから歩いてくる冒険者と度々すれ違う。
装備が初心者には見えないのでゴブリンの巣を調査してる高ランクの人達かな、もう洞窟のマッピングは始まっているはずだ。
正直、ちょっと洞窟に入ってみたい気はするんだよな、探検気分とってところだけど。
ただ狭い暗い所で数日過ごすのは嫌だしそもそも一人でそんなとこで迷子になったら発狂ものだ。
後先考えず腕輪二つ外して全力で所構わず走り回る自信がある。
そんなしょうもないことを考えていると西の森についていた。
ここからは索敵を使いながらゆっくり行こう。
西の森の中はとても平和だった、時折思い出したように襲ってくるホーンラビットを一撃で斬り捨ててアイテムボックスにしまう。
そういえば結局短剣使ってないな、盗賊から奪った片手剣もそろそろ切れ味が悪くなってきてるし短剣使おうかな、そういえば大剣も一本あったな。
片手剣をアイテムボックスにしまうと、短剣を二本持ってぶんぶん振り回しながら進んでいく。
刃物振り回して歩いてるとか日本じゃアウトだがここは異世界だからセーフと考えているうちに遺跡についた。
目視しても索敵にも何の気配も入ってこないのでそのまま転移魔法陣を起動させる、ここはゴブリンの巣へ向かうルートから外れているから人は来てないみたいだな。
一瞬で別荘の地下室に着く。
今日はここで一泊して明日魔王城に行こう、やっぱここのベッドと全く誰もいない環境というのがとても落ち着く。
俺はアイテムボックスから月の雫を取りだすと調合を行いながらその日を過ごした。
改稿




