仄暗い闇の中で6
改稿
緊急ゴブリンの巣襲撃作戦。
こう作戦名が決まった当日の朝、俺は集合場所の町の外に向かった。
まだ夜が明けたばかりで薄暗い町の外に出るともうかなりの人数が集まっていた。
その中をウロウロ歩いてマリンを発見する。
「おはようマリン。今日は頑張ろうね」
「おはようナイン君。昨日は大変だったね。でも本当に強いんだね!今日はよろしくね!」
マリンと挨拶をしていると、サイモンとユリゲールが合流した。
「今日はいい天気になりそうだ。これなら何の問題もなく作戦は成功するだろう。改めて説明するが、僕とサイモンが前衛、中衛のナインが前後のフォロー、後衛のマリンが支援と魔法攻撃だ。危なくなったらすぐに僕に言うように」
俺たちは頷くと、サイモンが寄ってきた。
「昨日はすまなかった。今日は期待している」
それだけ言うと離れていった、昨日はあれから話さずに解散になったからな、俺のことは認めてくれたってことでいいのだろう。
そんなこんなしているとギルドマスターが前に立ち作戦概要を説明し始める。
「よく集まってくれたヘプナムの町の冒険者たち。俺はギルドマスターのギルバートだ。今日は俺が全体の指揮をとらせてもらう。そしてAグループの指揮は蒼月の二人、Bグループの指揮は自由の翼の二人だ」
そう言うと前に四人が出てくる。アンジェさん、カレンさん、そして自由の翼の二人だ。
情報によると自由の翼は現在は二人で行動しているということだ。
リーダーのハイライト、茶髪茶目、髪の毛は主人公カットの男性だ、冒険者ランクはAでこの中では最大戦力と言われている。
そして聖女と言われるメリッサ、青髪、青目、ロング、回復専門職だが杖術を使い近接もできる、冒険者ランクはB。
聖女というのは聖教国での称号みたいなもので冒険者だと二つ名に相当する。
作戦の内容はこうだ。
目標は存在していると思われるゴブリンキングの討伐、もしくは巣穴から出てくるゴブリン種の殲滅になる。
ゴブリンキングが出てくればそこで討伐して残りのゴブリンも討伐になるが、ゴブリンキングが出てこない場合は先に巣穴から出てくるゴブリンを殲滅してこの緊急依頼は終わる。
その後は探索を得意とする高ランクの冒険者パーティーを複数巣穴に送りこみ、巣の調査、マッピングを行いゴブリンキングの討伐を目指す。
俺たち下級冒険者の役割はローテーションを組んで巣穴から出てくるゴブリンの殲滅に協力すること。
まずはAグループが二つに別れ一時間交代でゴブリンを攻撃、その間に見習い冒険者が陣地の構築。
Bグループは周囲の警戒、六時間たった時点でAとBグループと交代、Aグループは休憩時間となりそれを繰り返す。
巣から離れたところに広い場所がなかったので巣穴の近くに陣地を作ることになる。
ギルドからの支給はポーション、マナポーション、リカバリーポーションを各自一つづつ。
ユリゲールの提案で俺たちはそれをパーティーで役割ごとに分けることにした。
マナポーションはマリンに三つ、俺に一つ、リカバリーポーションとポーションは各自一つづつ。
説明が終わった時点でギルバートを先頭にAグループが続いて、その後ろを荷物を持った見習い冒険者が続く、最後はBグループだ。
今回は人数が多いので馬車は荷物を載せていくだけで冒険者は歩きだ。
余裕があるEランク以上の冒険者は西の森に入るまではガヤガヤ雑談しながら歩いていくが、余裕のないFランクパーティーは緊張した顔をしている。
この作戦にはかなりの冒険者が参加していて戦える冒険者だけで二百人を少し上回った、だが戦力の半分はFランク冒険者でありさらに俺たちみたいな臨時パーティーも多いので油断は禁物だ。
俺たち臨時メンバーは周囲を警戒しながら西の森を歩いて行く、少し索敵を使ってみるとゴブリン以外の魔物も存在するがこの大部隊にはさすがに襲いかかってはこない。
そして日が上り切った時、ゴブリンの巣に到着した俺たちは作戦を開始する。
前の作戦の時と同じで巣の入り口を囲むように冒険者が配置され、二体いる見張りのうち一体を矢の一撃で絶命させる。
「グギャグギャ!」
残りのゴブリンの一声で巣から大量のゴブリンが出てくる、ここからが俺たちの仕事だ。
「よし、僕たちも行くよ!」
ユリゲールの一声で俺達は飛び出すと、ユリゲールとサイモンは自分の持ち場の範囲のゴブリンに斬りかかる。
まずは場を安定させるために俺も二人と一緒に前に出る。
襲いかかってくる二匹のゴブリンの首を一瞬で斬り飛ばす。
それと同時にゴブリンが固まっている場所にファイア・ランスを撃ち込んでゴブリン達の連携を崩す。
すぐに場が落ち着いてサイモンとユリゲールが壁になる、瞬殺とはいかないまでも二人の活躍でほとんどゴブリンが後ろに回ってこない。
俺とマリンはたまに抜けてきたゴブリンを魔法で討ち取っていくぐらいだ。
マリンは水魔法が得意とあって水属性の初級魔法ウォーカッターが使えるのでゴブリンを両断とはいかないが致命傷を与えていく、かなりの威力だ。
少し経つと死体回収班がきて、邪魔にならないようにゴブリンの死体をアイテムボックスに入れて回収していく。
俺も状況を見ながら前衛が押されそうなタイミングで、前衛に介入、抜けてきたゴブリンを魔法や剣で倒し、手が空いたときにはゴブリンが固まっているところに適当に魔法を撃ちこんでいく。
この前よりもゴブリンの連携がしっかりしてきているな。
そんなことを考えていると、声がかけられる。
「交代だ、ゆっくり戦線を維持しながら下がってくれ。」
いつの間にか一時間がたちA2班がやってきた、A2班は俺たちのフォローに回れるようにEやDランクパーティーが配置されている。
俺はサイモンとユリゲールが下がってくるのを待ちながらそこら辺の死体をアイテムボックスに回収していく、少しでも邪魔な死体はないほうがいい。
完全に切り替わるまで少しだけ待って全員で後ろに下がって休憩をとる。
前衛の二人はかなり疲れている・・・一時間も戦いっぱなしならしかたないか。
「俺はちょっと死体を捨ててくる。」
アイテムボックスに入っている死体を焼却場所に持っていき、軽く油を撒いてファイア・ランスで火をつける。
休憩所に戻るとユリゲールが声をかけてくる。
「ナインとマリンはまだまだ余裕そうだな。俺たちはかなり疲労している。この程度なら休めば大丈夫だが、ゴブリンが予想以上に連携をとって攻めてくるな」
「そりゃ二人がほとんど抑えててくれたからね。」
「私は体力は大丈夫ですが魔力が不安です。今のうちにマナポーションを飲んで回復させておきます」
そういうとマリンはマナポーションを飲み始める・・・一時間の戦闘で魔力が厳しいとなると、もうちょっと戦い方を考えないと持たないかもしれないな。
マナポーションは魔力の即時回復ではなく、魔素の吸収量を上げるものだから早めに飲んでいた方がいい。
これでFランクの冒険者には厳しいのか・・・俺は今回中衛にいるから疲労はあまりない。
前回の十五人で巣を攻めたときよりは人数がいるからFランクでも大丈夫かと思っていたが、予想以上にゴブリンが連携をとって攻めてくるので精神的な疲労が激しいみたいだ。
それでもこのパーティーは俺がゴブリンの連携を崩すように攻めているから大丈夫だが、他のFランクの集まりはどうなんだろう。
念のため周りにはDランクやEランクがメインになるパーティーが配置されているはずだけど、この戦いが長時間続いたら崩れだす可能性もあるな。
俺は考えて提案する。
「長期戦になるし、少しフォーメーションをいじりますか?二人が常に前衛ではなく、俺も含めた三人でローテーションを組む。そうすれば二人も負担が軽くなると思う。」
「そうだな・・・マリンはそれで行けそうか?」
「はい、魔力が切れたら短剣で何とか時間を稼ぎます。その間に中衛がきてくれれば大丈夫かな」
「よし、では状況を判断するために、僕が一度中衛になる。難しいと思ったらすぐに変えるぞ。サイモン行けるか?」
「任せろ。少し休めば何の問題も無い」
俺たちの二回目の戦いはそうして始まった。
俺が左、サイモンが右、俺はほぼ一撃でゴブリンを斬り捨てていく、さらにサイモンにゴブリンが集中しそうになった時はファイア・ランスも併用して倒していく。
俺の方からは全く後ろにゴブリンを通さずできる限りサイモンのフォローを行っていく。
三十分程度たった時にサイモンに変わってユリゲールが前衛についた。
さすがEランク、俺のフォローもあって全くゴブリンを通さず交代の時間になった。
ここまではまだ大丈夫。
みんなの顔を見ると疲労はあるが一回目終了時点のようなキツさはなさそうだった、ただこれからが危険だな、俺も結構頑張っているからこれを続けるってのはさすがに厳しい。
「さすがだな、ナイン。君のフォローもあって俺たちはかなり疲労を軽減できている。君は大丈夫かい?」
「今はまだ大丈夫ですが、これを数日続けろと言われると厳しいかな。」
「そうか、次は僕とサイモンで前衛を務めよう。もう少し後ろに通してもいいかい?」
そうだな、限界まで前衛で抑えると消耗が激しい。
俺が中衛の時に多く回してもらったほうが全体の消耗を抑えられる。
「了解。もっと回してもらっても大丈夫」
「私もかなり休ませてもらってので魔力もほとんど回復してます。どんどん回してください」
マリンも何とか大丈夫そうだ、ここからが勝負だ、何とか崩れずに持たせたいものだ。
三回目の戦闘が終わった時にサイモンはかなり消耗していた。
俺たちは何とか耐え抜いたが他の臨時Fランクパーティーが崩れて周りのパーティーや休憩中のパーティーにフォローに入ってもらっていたという情報が入ってきた。
Aグループが終わった時には死者はなしだが、負傷者が十人でて戦線を離脱するパーティーもでていた、予想以上にゴブリンが多い。
ここから六時間の休憩が取れるが警備班がいるとはいえ森の中、すぐ近くが戦場となっている場所で寝るのは中々度胸がいったが、無理にでも寝ないと身体がもたない。
あと何日続くのか・・・。




