仄暗い闇の中で4
冒険者ギルドに帰った俺たちはすぐにゴブリンの異常な数を報告し、蒼月の二人はギルドマスターに直接、それ以外のメンバーは別室で状況を説明した。
そこで今回の報酬、想定外の事態だったため成功報酬の半額をもらい、緊急依頼の取り消しが行われることとなった。
別室での報告が終わり俺が部屋を出て帰ろうとするとギルド職員に呼び止められた。
「ナイン。ギルドマスターが呼んでいるのできてもらえますか?君からも話を聞きたいそうです」
俺?蒼月の二人がいるんだから必要ないと思うが・・・何かあったのだろうか。
俺は頷くとギルド職員についてギルドマスターの執務室までついていく。
トントントン
「ナインを連れてきました」
「おう、入ってくれ」
俺は職員に促されるまま執務室に入ると筋肉ムキムキのおっさんと蒼月の二人がいた。
ムキムキのおっさんはギルドマスターのギルバート、約一ヶ月前の領主邸襲撃事件でお世話になった人だ。
「かけてくれナイン。お前からも少し話を聞きたい。」
俺はソファーの端っこに座ろうとすると、アンジェさんがきて持ち上げられ、三人がけソファーの真ん中に座らされる。
ギルドマスターとカレンさんが苦笑している、俺だって持ち上げられるのは結構恥ずかしい。
「さて、二人からは話を聞いた。かなりの異常事態だとギルドとしても認識している、本来なら冒険者ギルドと領主様で連携して事にあたるってのが本来の流れになる」
ううんうんそうだろうな、あの大量のゴブリン達が攻めてきたらこの町も大変なことになるし、そうじゃなくとも西の森にあの数のゴブリンが広がってしまったら、元からいる魔物が追い出され街道などで人を襲うようになるだろう。
「ただナインも知っていると思うが、一ヶ月前の事件のせいで多くの兵士が粛清されてな、人が足りない。警備の依頼が冒険者ギルドに来てるぐらいだ。さらにだ、同事件のせいで王都の騎士団も動き回っていてな、こっちに騎士団を送る余裕はたぶんないだろう」
ギルドマスターはため息をつきながら憂鬱そうに答える。
あれから一ヶ月ちょいだもんな、混乱長すぎるだろって思ってしまうが、この世界では飛行機も新幹線も車もない。
移動に時間が掛かるのだ、特に騎士団が粛清に動いているならここに来るにも時間がかかる。
「それではどうするのでしょうか?俺が役に立てることはあまりないと思いますが・・・」
「まあ待て。伯爵には今状況を伝えている。もし兵士も騎士団も難しかった場合、蒼月の二人と話し合ったんだが、こちらも正攻法の数で攻めようと思っている」
数か・・・いやまて、数が足りないって話じゃなかったか?
「数が足りないって話じゃなかったんですか?よく意味がわからないんですけど」
「そうだな、数が足りない。だからFランク冒険者を動員する」
Fランク冒険者か、確かに多くいるFランク冒険者を動員できれば数だけは揃いそうだけど・・・数匹のゴブリンならまだしもあの異常なゴブリンに対応できるのか?
「そこで、何かいいやり方はないかと思ってな。お前は頭が切れるから呼んでみたわけだ。どうだ?予定として二百人の冒険者を予定している」
ギルドマスターは俺を覆うように上から見てくる、身長差があって威圧感がすごいんですけど。
「うーん、例えば冒険者二百人を使えるとして、陣地を張って五十人づつの四交代制で戦うとかですかね?ただ戦っていると死体の山ができるので、死体を回収する人、死体を燃やす人も必要になってくるかと。」
ただここの一日はおよそ二十四時間だ、四交代制だと一グループ六時間の戦闘になる、今日よりも一回の戦闘の人数はおよそ三倍以上だけど、ぶっ続けで六時間は厳しいな。
「俺たちも同じ考えだ。ローテーションを組んで長期戦で潰していくしかないだろう」
「ただ六時間ぶっ続けで戦うのは厳しいと思うので、五十人づつABCDに分けてAとBで一時間交代で戦闘を六時間、その後にCとDに交代して六時間戦闘でどうでしょう?一時間おきに軽く休憩がとれて、六時間の纏まった睡眠時間もあります。」
俺の提案に計算するように考えるギルドマスター、問題はそれを統率できる人材がいるかどうかなんだよな。
「よし、それで行こう。A1A2B1B2としよう。全体の指揮は俺がとる。一時期毎の休憩、責任者はAグループは蒼月、二人に任せる。Bグループは高ランクの参加者から選べばいいだろう。依頼受注ランクはF以上で討伐依頼の経験がある者、見習いには荷物持ちと雑用をさせる」
「私達か、できるかな?」
アンジェさんはちょっと不安そうに首をかしげる。
「基本パーティー単位での戦闘だから時間になったら声をかけるだけだから大丈夫よ」
カレンさんはそういうのは慣れているのか問題なさそうだ、さすがBランク。
蒼月の二人は問題なく参加ってことだな、この二人なら大丈夫だろう。
「ナイン。お前はどうする?Fランクから参加できるが、少しでも戦力はほしい。ソロの冒険者は何人かでまとめて臨時のパーティーを組んでもらうことになる。ギルドの貢献度も高い、ランクを上げるなら参加して損はないはずだぞ」
・・・俺はどうするかな、確かにランクは上げたいし他の冒険者を見ることができるから参加して損はないはず。
ただパーティー組めるのはいいけど、子供の俺はお荷物扱いされるだけで面白くも何ともないんだよな。
だったら荷物持ちでもやってた方がまだいいって思ってしまう、荷物持ちなら最初から戦力としてみなされてないから俺も気分が楽なんだよな。
「じゃあ、参加しますが、荷物持ちってのはダメですよね?」
「何言ってんだ。貴重な戦力をわざわざ荷物持ちにするわけないだろう。今回はそれは見習いの仕事だ。冒険者になったのにわざわざ見習いの仕事がしたいなんて変わったこと言うな?」
ギルドマスターは不思議そうな顔をして俺を見ている。
でしょうね、自分でもおかしなこと言っているのはわかってる、わかっているけども・・・。
「頑張ります・・・」
話が終わって一度解散になる、俺たちが話している間にすでに緊急依頼が出ていて人数が集まり次第、早ければ明後日から依頼が始まるそうだ。
俺は緊急依頼が出ているゴブリン討伐に名前を記入すると冒険者ギルドを出て宿に帰った。
宿に帰った俺は今回の依頼の内容を振り返る。
やらなければいけないことはゴブリンの殲滅だ。
ゴブリンがどこから来ているのか、どれだけのゴブリンがいるのか、どれだけの規模の地下空洞があるのか・・・
今回は確認できなかったが上位種のホブゴブリン、ゴブリンキングなどのレア個体は確実に存在する、という前提で話は進んでいる。
ゴブリンキングは魔物としてのランクはDランクだ。
強いことは強いがDランク冒険者複数であたれば問題なく倒せるだろう。
ホブゴブリンなどの上位種も同様で出てきたら優先的にその場の高ランクのパーティーが対応することになった。
ゴブリンを一時間で千五百体倒すとしてゴブリンが五万として一日半程度かかる計算になる。
問題となってくるのは連携だ、俺たち冒険者のってのもあるけど今回ゴブリンが戦えば戦うほど頭を使って、というか誰かに指揮されているように連携が取れてきていた点が気になる。
明日は一日休みだから、図書室にでも行ってゴブリンキングの記録を見ておいたほうがいいかもしれない。
もしかしたらギルドが情報をまとめて張り出している可能性もあるしな。
次の日、ギルドに行くと大勢の暇そうな冒険者が大量にいた、働けおっさん・・・まあ考えなくてもわかるがほとんどがゴブリン退治に向かう人だろう。
そう思うと俺も全く同じなんだとブーメラン。
こちらも受付で暇そうにしているエンレンさんに声をかける。
「おはようございます、エンレンさん。今日は混んでますね。」
「おはよう。ナイン君。みんなゴブリン退治の参加者よ。だから今日は開店休業って感じね。最優先の緊急依頼だからね」
周りを見渡すと朝っぱらから酒を飲んでいたり雑談していたりと随分と余裕そうだ、中には気合入っている人もいるが。
「余裕そうなのはEランク以上のベテランね。Fランクの人たちはランク上げるチャンスだからね、かなり気合入ってたわよ。ナイン君は・・・余裕そうね。まぁナイン君は誘拐犯数十人を瞬殺しちゃう腕前だから余裕よね」
んん?何か数十人とか数字変わってない?十数人なんだけどな、いやまあもうどっちでもいいけど。
「俺の場合は余裕じゃなくてちょっとビビってる感じです。慣れても怖いものは怖いですから。気になることもありますし。」
「ナイン君はまだ子供だし仕方ないよね。危なくなったらちゃんと逃げるんだよ」
エンレンさんは心配そうに俺の頭を撫でてくる。
撫でられるぐらいならまあいいか、持ち上げられるのが一番恥ずかしい。
「えっと、ゴブリンキングに関する資料を見たいんですが、図書室にありますか?」
「ごめんね。今はないわ。ギルドの方で資料をまとめるのに使ってて。ゴブリン種の情報を掲示板に貼るのよ。」
ないならしょうがない、もう少ししたら見に来ようかな。
「じゃあ、もうちょっとしたらまた来ます」
「お昼頃には張り出される予定よ。あ、あとソロの冒険者の臨時パーティーが参加が決まっている人だけ組まれているからそれも見ておいてね」
臨時パーティー組むの速くない?それ登録した順で適当に組んでないかな。
エンレンさんにお礼を言うと、俺は混んでるところを避けながら掲示板を見に行く。
俺の名前は・・・あった、四人パーティーか。
俺を含めて三人がFランクで、一人だけEランクの人がいるからその人がリーダー的な?
「失礼。君がナイン君かな?」
掲示板を見ていると後ろから声をかけられる。
後ろを振り向くと金髪碧目、長髪のどこかにいそうな貴族風の青年がいた、とても爽やかな笑顔をしていて全身金属鎧で初心者Bセットを豪華にした感じだ。
「そうですが、何か用ですか?」
俺が答えると俺の顔や装備をジロジロと見る、ちなみに俺の装備は《万々歳》製の初心者Aセットだ。
初心者装備だと侮ることなかれ、動きやすくて気に入ってるのだ、盾はいらんけど。
「ふむ、初めまして。僕はユリゲール・・・いや、今はただのユリゲール、Eランク冒険者だ。」
長い髪をふさっと掻き上げつつ彼は名乗った。
あっはい、貴族か何かで家名を名乗っちゃいけないとかそんな感じですね、わかります。
改稿




