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一族皆殺しにされた没落領主、メッセージウィンドウの指導法で最強剣士に成り上がる  作者: 森田季節
剣豪領主

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ナルエンの戦い2

 やがてガストス・ベルトランの陣が見えてきた。1500だからそれなりの兵力だ。たいして人望もない太守でも遊軍だけでこれだけの兵を用意できる。アルクリア竜騎士家は全盛時代でもこれだけの数は用意できなかった。


 だから、一族ごと滅ぼす必要なんてなかったんだよ。


 本当にベルトラン太守家を滅ぼすほどの実力は当時の竜騎士家になかった。それなりに力のある重臣としてやっていけたはずだった。


 でも、そうはならなかった。お前らに竜騎士家は滅ぼされた。

 一族の恨みのためとは言わない。お前よりいい領主になれるから、俺はお前を倒す。


「レオン、ここは私も全力でいきます」

 ラコが真剣な顔で言う。

「私の独断で歴史が変わるようなことまではしません。歴史はレオンたちが決めてください。でも、私も竜騎士家の弔い合戦をしたいんです」


「好きにやれよ。【竜の眼】を止める力なんて俺にない」

 ラコはうなずいて戦場に突っ込む。

 それを見たほかの兵たちも駆けていく。


 ラコの大きな剣が敵をなぎ倒す。

 斬るのではなく、強引にその場のものをはじき飛ばす剣。


 敵兵の中に穴が空いたら、そこに攻め込んでいく。

 まあ、俺もいいよな。


 俺もそれに続いていく――のを、ナディアに腕で制された。

「レオン・アルクリア様、あなたは我が軍のトップですから気安く乱戦に出てはいけませんわ。剣では勝てても矢を防ぎきることはできないかもしれません」

 反論の言葉が俺の中になかった。


「わかった。もう少し待つ」

「少なくとも、ラコさんとともに行ってください。戦場ではあの方ほどあなたを守ってくだささる方はいません。気づいてないかもしれませんが、あの方がいなければ3回は戦死していましたわ」


 たしかにラコのおかげで俺は知らないうちに命を助けられていたんだろうな。あいつはこっちがひやっとするような事態さえ起きないようにつとめてるだろうし。


 戦局はこっちの有利に進んだ。それはわかっていたことだ。兵士の練度がヴァーン州と俺とでは違いすぎる。

 ヴァーン州で最強の鍛え方をしていたアルクリア竜騎士家が消滅して、それより厳しい鍛え方を俺も精鋭の兵もこなしてきたんだ。主にラコのおかげで。

 だから、五割の兵力の差ぐらいなら跳ね返せる。


 ラコがこちらを向いて、手で出て来いと合図する。

「よし、行くか!」


 俺はヴァーミリオンを抜いて敵が逃げ腰になっている戦場に突っ込む。

「俺はレオン・アルクリア! 竜騎士家の当主だ! 竜騎士家を不当に滅ぼした太守に物申しに参戦した次第! さあ、顔を見せていただきたい!」

 その口上に敵兵が目の色を変えて襲ってくる。もし倒せばとんでもない武勲になる。戦争に勝とうと負けようとその名誉だけで一生食っていける。


 でも、実力が知れてるんだよ。


 俺は連中のステータスを見る。


 そいつらの運動の数字は60未満ばかり。止まって見えるというのは言い過ぎだが、それで剣を振られても当たる気はしない。


 俺は徹底して敵を斬って先へと進む。

「弱い、弱い! そんなんじゃ誰も止めらないぞ!」

 ヴァーミリオンは薄い金属の鎧ごと斬ってしまう。破格の木剣だ。


 ガストス・ベルトランの顔が眼前に現れた。

 こちら側のほかの兵もガストスに気づいたらしく、すぐに取り囲む。ガストスを取り戻そうとする敵の兵もいたが、槍で突き殺された。


 ついにガストスの真ん前に俺が立った。

 さあ、一騎討ちだなと思ったが――


「た、助けてくれ! た、頼むっ! 助けてくれっ! 降伏する!」

 ガストスは俺にすがりついてきた。


 その場で斬って捨てなかった俺を褒めてほしい。

 俺もそのへんのガキではなくて、いっぱしの領主の考え方ができるようになっていたらしい。


 ガストスは俺の周囲の兵士に捕縛された。





「これ以上の進撃は危険なので、引き返すべきです」

 このまま主力のベルトラン側の軍隊に向けて攻め込もうという機運になっていた中、ラコが正反対のことを唱えた。


「総大将が捕らえられて、士気が下がるとは限りません。全力でこちらにぶつかってこられれば相応の被害が出ます。太守を捕らえたことだけ伝えれば十分でしょう。それで戦線が崩壊するようなら、サウザンリーフ家を総大将にしたこちらの軍でどうせ打撃を与えられます」


 ラコがこう断言するなら無理はできない。


「わかった。ただ、山から東に出て、エンゾの軍とは帰りに合流したい」

「まあ、それならいいでしょう」


 ラコからの許可は得た。



 そのあと、ガストスが敗れて捕らえられた旨を聞いたベルトラン側は撤退することに決めた。エンゾ・サウザンリーフは多少の打撃をここで与えたものの深追いはしなかった。これは最初から取り決めてあったことだ。

 エンゾに大軍を本格的に指揮する能力はなくて、あくまで盟主だからそれ以上の活躍をしてもらう必要はない。


 後日、俺たちは再び、ヴァーン州を攻撃した。今回の目的はアルクリア竜騎士家に謀反の疑いをかけたとおぼしき連中だ。恨みもあったが、単純にこいつらがアルクリア竜騎士家の復権を喜ぶわけがないので、俺がヴァーン州に本格的に入る前に排除するしかない。


 連中の拠点は多くがベルトラン家のミンヘイ城に近かった。ベルトラン家の遠縁の家もある。西に20キーロは離れていたアルクリア竜騎士家は部外者に映ったのだろう。


 こういった領主たちを滅ぼして地ならししたあとにガストスのいないベルトラン家の居城、ミンヘイ城を攻撃した。


 過去に一度訪れた壮大な太守の屋敷が焼けていく。

 敵が諦めて、火を放ったらしい。ベルトラン家の者の多くはそこで死んでいた。



 ヴァーン州の太守は消滅したので、俺はエンゾ・サウザンリーフに太守を名乗らせた。



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