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一族皆殺しにされた没落領主、メッセージウィンドウの指導法で最強剣士に成り上がる  作者: 森田季節
郡の有力領主に

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ラコ・エレヴァントゥス、村の規模の領主となる

 ゲイルー州のウォーインに到着した俺とラコはまたおのぼりさんみたいに口を大きく開けていた。


「道広っ! 建物多っ! 人も多っ!」

「商都ハクラよりはコンパクトかもしれませんが、それでも相当な栄えようですよ……。しかも、ハクラと違ってこの権益はまるまる一領主のものなわけですから……」


 ウォーインは4州太守と呼ばれるフィルマン・クルトゥワの本拠地だ。俺が領主をしている村のあるコルマール州の太守もクルトゥワ家ということになっている。

 それが形式的なものなのは、クルトゥワ家の名前を出す役人すら全然見ないことからも明らかだ。どこの領主も理由をつけて、まともに税金も納めてないだろう。とはいえ、さすがに本拠地の発展ぶりはすさまじい。


「もう、ここの太守にヴァーン州の太守のガストス・ベルトランを滅ぼしてくれと頼んだほうが仇討ちも早く終わるんじゃないか」

「そこを人任せにしちゃダメでしょう。あと、クルトゥワ家もそれどころじゃないのはレオンもご存じのはずですよね」


 それはそう。

 ゲイルー州南のソマ州でクルトゥワ家は手を焼いている。別に攻め立てられて滅びそうなんてことはないようだが、やはり大国になると完璧な統治は難しいようだ。





 俺たちはウォーインの町で、まず海神神殿のエレヴァントゥス家の人間に会った。


 一種の人質兼外交官みたいな立場の人だ。エレヴァントゥス家は少し前までかなり有力なコルマール州の領主だった。最盛期にはドニよりずっと格上だったはずだ。その規模だと一族をクルトゥワ家に仕えさせるという名目でウォーインに置いていくのはおかしくない。


「は~、あんたらが村3つの領主になったって子供か」

 別に嫌味を言われることもなく、その人は素直に感心していた。

「伯爵は礼儀正しい奴には優しいからな。そこをちゃんとやれば問題ないよ。もっとも、具体的な見返りをくれるほどの余裕はないんだけどさ」


 伯爵への謁見は無事に終わった。現地のエレヴァントゥス家の人の言ったとおりだった。


 その日は自分たちでとった宿に宿泊したが、そこで本音を話した。

「なんか、凡庸ってほどでもないんだけど、剣士でも騎士でもなくて政治家って感じだったな」

「そりゃ、そうでしょう。複数の州の太守ですよ。うかつに戦場の前に出られて死なれでもしたら周囲が迷惑です」


 そうっとフィルマン・クルトゥワのステータスを確認したけど、そのへんの剣士ぐらいの実力だった。


「まあ、レオンはどうせ自分から突っ込んでいくと思いますよ。良くも悪くも生まれながらの大領主ではなかったのが影響しています」

「それのどこがいいんだよ……。悪い意味しかないだろ」


「大領主として生まれれば、味方が少し死のうと何とも思わないでしょう。記録で何人死亡とと書かれたものを後で受け取っても心も動かないでしょう」


 ぞっとする話で、口が一気に渇いたように思えた。

「是非の問題ではないですよ。事実の話をしています。大領主が戦争をして誰も死なないようにしたいと思ったら、それは愚人です。これはどうにもなりません。フィルマン・クルトゥワは生まれながらに兵士が何人死んでも数でしか考えない立場なわけです」

「俺は家臣0人で動き出したからな」


「そういうことです。レオンは味方を数字で見ることはなかなかできないでしょう。それが優しさにつながるかもしれないし、甘さになるかもしれない。これはどうなるかはわかりません。かといって、実は太守クラスの大領主の生まれだったということには今更できませんし」


 持っているもので戦うしかないってことだ。

 別にこの人生に問題があるとも思ってないからいい。幸運の数値が異常に低いのが気になるけど……これも生まれ持ってのものだしな……。





 冒険者稼業を始めるところから3つの村の領主になるまでわずか半年ほどの期間しかたっていなかったが、そこからの半年は驚くほど静かに過ぎた。


 といっても、それは自分の身分や立場が変わるような大きな仕事がなかったというだけで、やることはいろいろあった。はっきり言って、大半はあまり楽しくもない仕事だ。


 まずミュー海神神殿にちょくちょく出向いて、海神神殿の家臣や一族と顔合わせをさせられた。


 エレオノーラさんが「そんな頻繁に来なくてもいいですよ」と言ってくれるぐらい行った。ラコが「こういうのはこまめに行くべきです。足で稼いでください」と言うので素直に従った。


「エレオノーラさんはこっちの目論見もなんとなく察してるから愛想よくする意味もないだろ」

「エレオノーラさんの心証のためではないですよ。一門や家臣の心証のためです。うさん臭さを考えれば我々はマイナスからスタートしてますからね」


 そのラコの主張はわかるので、俺はできるだけ家臣が参加するような茶会には長い距離を移動して、海神神殿に向かった。


 そんな中、ラコがエレオノーラさんにこう提案した。

「私を奥カーマ村の領主として任命していただけませんか?」

「はぁ。別にいいですけど、レオン君からの任命じゃダメなんですか?」

「私のほうが年上なのと、エレヴァントゥス家の縁戚という点でもレオンと同格ですから」


「ごもっともではありますね。何か意図があるんでしょうけど、海神神殿に無害ならいいですよ」


 こうして、格だけなら俺とラコの地位が並んだ。

 奥カーマ村って村として独立させる意味があるかぐらいの寒村だけどな。




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