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一族皆殺しにされた没落領主、メッセージウィンドウの指導法で最強剣士に成り上がる  作者: 森田季節
従姉の剣士~レオン14歳~

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20/82

最強の従姉と剣士8

 ホーリーライトの魔法を覚えたばっかりの夜、早速、中庭で使った。


「おおっ! すごいじゃないですか! ちゃんと明るくなってますよ!」

 ラコが派手に驚いていた。悪い気はしないが、少し大げさな気もする。


「気持ちは嬉しいけど、どうせお前もあっさり発光の魔法が使えるなんてオチなんじゃないのか?」

「いえ、この手の魔法は使えませんよ。こういう聖職者系の魔法は私には無理です」

 まあ、正統な教義の神から最もかけ離れた、一種の邪神みたいなものだからおかしくはないか。


 俺の視界に久しぶりにメッセージウィンドウが浮かんだ。


『邪神は言い過ぎです。失礼です。淑女にたいして使っていい言葉ではありません』


「うわ! 久しぶりにメッセージウィンドウ見た!」

 ついでにウィンドウの言葉を話す中性的で抑揚のない声も久しぶりに聞こえた。この声、ラコの声ではないので、いったい何なんだ?


「一応、こんなふうに念じれば私が実体化していても使えます。私もレオンを教える合間に調整を行っていたんです。強くなりましたよ!」

 ラコが胸を張って自慢している。これ以上強くなってどうするのかと思うが、できないことができるようになるのは誰だってうれしいか。


「ホーリーライトも覚えられたわけですし、ステータスでも確認してみたらどうですか?」

 ほんとだ、すっかり忘れてた」


===

レオン

職業・立場 剣士

体力 76

魔力 20

運動 67

耐久 49

知力 40

幸運  1


魔法

回復魔法(小)・ホーリーライト


スキル

メッセージウィンドウ

一刀必殺・疾風剣・一点貫通・滅多打ち

===


「ど、どうだ……?」

 ぶっちゃけ、褒めてほしいのでこっちから聞いた。褒められるぐらいには強いとは思う。

「はっきり言ってすごく強いですよ。竜騎士家の名前で言えばマディスンもなかなかやるなと思ったはずです」


 マディスンというのは竜騎士家の隠居のじい様のことだ。80歳前でも異常に元気だった。


「光栄だけど、逆に言うとまだかつてのじい様に届いてないってことか」

 今の俺って仕官先に困らない剣士の実力はあるはずなんだが、それでも足りないとなるとどんな実力者だったんだと思う。


「まあ、あの人の次元だとステータスはあまり関係ないですけどね。経験というのは厳密には数値化できないので。少し能力で自分を上回ってる敵ぐらいなら対処できてしまうんですよ」

「たしかにどれだけステータスが高くても、人間は首が飛んだら死ぬもんな」


 じい様は何度も死線をかいくぐってきたという。一族全員がじい様の武勇伝をしゃべるから俺も何度も聞かされている。

 じい様は祖父ではないが一族の若い世代はみんな、じい様と呼ぶ。竜騎士家を発展させた、いわゆる中興の祖みたいな存在だった。


「それでも、このペースなら将来的にはマディスンを抜けると思いますよ」

 ぽんぽんとラコが俺の肩を叩いた。

「老人になった頃にはマディスン以上の伝説が語られる存在になってるはずです」

「それは別に誉め言葉じゃないだろ! もっと早い段階で強くなりたい!」


 中庭で話していたからか、修道院長が出てきた。今は地下室の時と違ってちゃんと気配がある。地下室で瞑想していた時、本当に何の気配もなかったんだよな。


 まさか凄腕の暗殺者だったなんてことはないよな……? 仮にそうだとしても、暗殺者が過去なんて話してくれるわけがないので不明なままだけど。


「やはり新しい魔法を習得した直後は楽しいものですねえ」

「いえ、そんなにはしゃいでるわけじゃないんですが……」


 こう言われると気恥ずかしい。


「夕方、興味深い話がこの修道院に来ましてね。レオン君が修道院を離れる最後のイベントにどうかと思ったんです。楽しい話かと尋ねられると難しいんですが」

 楽しい話じゃないけど興味深いって何だ?


「今度、この地域の修道院や教会の関係者が太守の城にあいさつに出向くことになりましてね」

 太守という言葉にはやっぱり体が反応してしまう。


 具体的にどんな顔なのかもわからないが、自分から家族も一族も奪った奴ということだけはわかる。


「私の下働きという設定で城までついてきてもらうことはできますよ。おそらく、城の敷地に入ることもできるでしょう」

 その時点で俺の中で答えは決まっていた。


「むしろ、太守の拠点になど近づきたくもないというならこの話は忘れてください。余計なおせっかいでし――」

「いえ、ぜひ行きます」

 俺は即答した。

「少しでも知っておきたいんです。後学のために」


 俺が将来的に、太守を殺そうとするか、その逆で赦してやろうと思うかはまったくわからないが、知らないことには何も決められない。相手の存在を知るいい機会じゃないか。


 ラコは俺の腰に後ろから手を置いて、こう言った。

「私はレオンの判断を尊重します。ただ、つらかったら、そう言ってくださいね。思い出したくない過去が強く顔を出すことをトラウマと言うそうです。わざわざ傷つく必要はありませんから」

「わかってる。別に一族の仇とディベートするわけじゃないんだ。敵情視察だと思えば問題ない」


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