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あやかしのお助け屋の助手を始めました  作者: 風見ゆうみ


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60    思い込みが激しい男 ④

「ぽちのおよめさんはふつうのいぬなの。ほかのいぬはふつうのいぬなんだけど、しろだけは、はんようでうまれちゃったんだって」


 シロはわこの言葉の意味をわかっていないようで、パタパタとふさふさの尻尾を振っているだけだ。


「うわあ、可愛い!」


 小鳥と母はわこからシロを抱っこさせてもらい、きゃあきゃあと叫ぶ。

 

 事情を聞いてみると母犬はオーナーの友人で、オーナーの散歩ついでに姿を見せて歩いているぽちに、シロの母が恋をした。その後、オーナーの知らないうちに妊娠していたわけだが、ここからが問題だった。

 母犬の飼い主はぽちが妖怪だとは知らない。六匹生まれた子犬のうち、一匹だけが神隠しにあったように消えることがあり、恐怖を覚えたのだと言う。人にあげることもできないし、捨てるなんてありえない。だけど君が悪いので、どうしたら良いのかと悩んでいる友人に、オーナーが引き取ることを決めたのだ。


「シロはこいぬだけどやんちゃで、むいしきにすがたをけしちゃうでしょ? まさおにもみえなくなるときがあるみたいだから、このいえにすんでいるみんなはようかいがみえるから、こまらないとおもうの。このこ、このいえでかってもいい? わこがめんどうみるから」


 わこのお願いということもあるが、ペットショップで抱っこしてしまえばほしくなると近い感覚で、シロは千夏家の一員に認められた。


「シロ、じぶんがすがたをけしてることがわからなくて、かいぬしさんやおかあさんにあまえたり、きょうだいによっていってもむしされてたみたい」


 わこはしゅんと肩を落として言った。


「仕方がないわよ。見えないとわかっていれば別だけど、それさえ知らないんだもの」

「そうだよね。シロもいつか、それをりかいするとおもうんだけど」


(まだ生まれたばかりだから、理解するのは難しいよね)


 シロを家族に迎え入れるには、ペットシートなど必要なものが多い。買い物に行かなければと話をしていると、オーナーが用意していたものをもらえることになった。



******



 次の休みの日、シロの散歩がてら、小鳥は『あやかし』に向かった。ゲージに入れて手回り品料金を払えば電車に乗ることができる。送り犬のように姿を消すことができれば別だが、消えたり見えたりするシロはゲージに入れて移動することが一番だった。


 暑さが増してきたので、ゲージの中にいるシロが熱中症にならないように注意しながら、『あやかし』の近くまできた時、小鬼たちが騒ぎ始めた。


「ピー! ピーッ!」

「ピピーッ!」


 小鬼たちが小鳥を守るように、彼女の前で両腕を広げると男の怒鳴り声が聞こえてきた。


「おい! お前! あの時の和服美人に会わせろ!」


 怒りの形相で近づいてきたのは、タキシード姿の誠だった。


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