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あやかしのお助け屋の助手を始めました  作者: 風見ゆうみ


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54   恋人と親友 ②

 フードコートは持ち込み禁止のため、いきしはコーヒーとクレープを注文して、小鳥たちの隣のテーブルに座っていた。小鳥たちの話に夢中になっていたいきしは、美鈴たちが去っていくのを見送ったあと、クレープをパクつき始めた。

 助け舟を出してくれた二人にお礼を言ったあと、龍騎が桐谷の分の食事を取りに行き、彼らの所へ行っている間に小鳥の頼んでいた料理も出来上がった。


「あの、いきしさん、ありがとうございました」


 料理を受け取り、小鳥が席に戻った頃には隣の席の二人はいなくなっていて、いきしもクレープを食べ終えていた。小鳥がいきしに頭を下げると、彼女は不機嫌そうに眉根を寄せる。


「礼を言われることじゃないわ。本当のことを言っただけだもの」

「だけど、私一人では美鈴が信用してくれたかわかりません」

「そんな風には思わないけどね。あの子、あんたのこと本当に大事に思っている感じだったわ。それに、他に助けてくれた人がいたじゃないの」

「それはそうなんですけど、いきしさんが助けてくれて私はすごく心強かったんです」


(見ず知らずの私を助けようとしてくれた人たちは、とても良い人たちだと思うし感謝もしている。でもやっぱり、桐谷さんに強く言い返すことができたのは、いきしさんがいてくれたからなんだよね)


 助けてくれた二人だけなら、桐谷に余計なお世話だと言われたら引いていただろうが、いきしの場合はそれくらいで引き下がるようなタイプではない。それが小鳥には心強かったのだ。


「野岡さんに怒られて、あの男泣いてたんだが」


 戻ってきた龍騎が呆れ顔で小鳥の向かい側に座った。すると、いきしが渋い表情で口を開く。


「あの男は嫉妬心で小鳥をどうにかしようとしていたんだわ。それで鬼になりかけていたのね」

「たぶんな」

「どうにかしよう、というのはどういうことでしょう?」


 見当がつかず尋ねた小鳥に、いきしは苦笑して答える。


「邪魔者は消してしまえ。みたいな感じかしら。だけど、そんなことをしたら美鈴とかいう子が悲しむこともわかっていたから、なんとか踏みとどまれていたんだと思うの」

「俺もそうだと思う。だけど、今回のことでどう転ぶかはわからないな。小鳥のことを今まで以上に恨むのか。それとも反省するのか。まあ、あれだけ泣いてたらさすがに反省していると思うけど」


 龍騎はそう言って、すっかりのびてしまったラーメンを食べ始める。


「小鳥、あんたも先に食べなさい。高い肉じゃないんだから冷めると硬くなるかもよ」

「は、はい!」


 いきしに促され、小鳥は桐谷に馬鹿にされたくなくて選んだ、少し値段がお高めの鉄板ステーキに集中することにした。

 小鳥たちが食事をしている間に美鈴たちは席を移動しており、姿が見えなくなった。そして、約一時間後に小鳥の元に美鈴からメッセージが届いた。


『今日は本当にごめんなさい。あんな人やと思ってなかった。また直接会って詳しく話そうと思うけど、小鳥を逆恨みするようなことがあったらあかんし、とりあえず仲直りしたふりをしてるけど、近いうちに別れると思う。っていうか、別れる』


 メッセージを読んだ小鳥が『私のことなら気にしなくていいよ。美鈴、彼のこと好きなんだよね?』と送ると、すぐに返事がきた。


『彼女の友達に嫉妬するくらいなら許せても、悪口を言ったり傷つけるような真似をする奴なんて好きちゃう』


(桐谷さんには悪いけど、私は良い友達ができたんだなぁ)


 この時だけは桐谷が鬼になってしまうかもしれないというマイナス要素は忘れて、小鳥は美鈴に出会えたことを本当に嬉しく思ったのだった。

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