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あやかしのお助け屋の助手を始めました  作者: 風見ゆうみ


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43   親友と鬼 ②

 幸せそうに微笑んでいる美鈴は小鳥たちに気づくことなく、男の車に乗りこんでいった。


「ど、どうしよう。本当になんでしょうか。それに、人間が鬼になった場合どうなるんでしょうか」


 小鳥は食べていたホットスナックを袋に戻し、涙目で龍騎に尋ねた。


「俺に言えるのは罪を犯したり、人を憎んだり恨んだりしている人間は鬼になる可能性が高いこと。鬼になった人間でも罪を重ねずに改心すれば人間に戻れるってことかな」

「たぶんですけど、美鈴は週末に彼氏と会っていると言っていましたから、横にいたあの人は美鈴の彼氏だと思うんです。悪いことをするような人には思えません」

「ニュースとかでよく聞かないか? 近所の人はそんなことをするような子には思えないとか、そんなコメントをするだろ?」

「……美鈴に何かあったりしませんよね」


 尋ねられた龍騎は眉根を寄せた。彼の中ではあの鬼はまだ初期の段階であり、本人次第によっては元に戻れるからだ。人を憎み恨んで、不幸を願い続ければ、いつしか角が伸びて完全な鬼と化す。

 美鈴の彼氏はそこまでいっていなかったのだ。


「絶対とは言えないが大丈夫だと思う。岡野さんは彼氏のことで悩んでいる様子とか、そんなことはなかったんだよな?」

「特になかったと思います。今だって幸せそうにしていましたし」

「一応、探りを入れてもらっても良いか?」

「わかりました」

「小鬼も悪いけど、手分けしてあいつを見張ってくれないか。ちゃんとお礼はするから」

「ピーッ!」


 数匹の小鬼たちが返事をして追いかけていく。


「ありがたいですけど、小鬼たちは車に追いつけるんでしょうか」

「すぐには無理かもしれないが、鬼の気配は感じ取れるから他の妖怪たちに聞きながら追いかけてくれると思う」


 小鬼たちは色々なところに浮遊している。車で横を通った場合でも鬼が近くに来たことは感じ取れため、気配をk感じた小鬼を辿っていけば、いつかは追いつけると考えたらしい。


「どうしよう」 


 美鈴のことが気になってデートどころじゃなくなってしまった小鳥を気遣った龍騎が、予定を早めて今日は帰ることに決める。


「今日は帰ろう。家まで送ってく」

「でも」

「気になってそれどころじゃないだろ。日を改めればいいだけなんだから」

「本当にごめんなさい」


 小鳥が謝ると、運転中の龍騎は前を向いたまま答える。


「気にしなくていい。友達の恋人が鬼かもしれないなんて考えるだけで不安なのに、実際にそうだったら気になるのは当たり前だ」

「ありがとうございます。ちょっと美鈴に連絡してみます。さりげなく居場所を聞き出せたら、小鬼たちも見つけやすいですよね」

「ありがとう。ところで、車のナンバーが他府県ナンバーだったけど、たしか野岡さんは京都出身だったっけ?」

「そうです」

「遠距離恋愛ってやつか」

「そうなんです。京都からこっちに来るのは大変ですから、ここまで会いに来るということは、美鈴のこと本当に好きなんだと思うんですけど」


(好きな人には優しくても、他人には平気で悪事を働く人はいる。美鈴の彼氏がまだ犯罪に手を染めていませんように)


 優しそうな外見の男と幸せそうな美鈴の姿を思い出し、小鳥は祈りながら美鈴にメッセージを送ったのだった。



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