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あやかしのお助け屋の助手を始めました  作者: 風見ゆうみ


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39   座敷童の悩み事 ①

 たまたちと別れたあと、小鳥と龍騎は龍騎の家でデートプランを練ることに決めた。さすがに今から出発といういきしの案は二人ともが却下したのだ。


「デートなんて素敵ねぇ」


 話を聞いた龍騎の祖母が小鳥たちのいる客間にやって来てほわほわとした柔らかい笑顔で言うと、小鳥は苦笑する。


「まだお助け屋の助手見習い段階なのに、デートとか言っている場合じゃない気もしてきました」

「あら、まだ助手見習いだったの?」


 祖母から非難の視線を浴びた龍騎は、慌てて小鳥に伝える。


「助手見習いの期間は終わってるよ。というか期間が過ぎてなくても、それ以上の働きをしてくれているから、もう見習いじゃない」

「そ、そうだったんですか?」

「そうだよ。伝えてなかったみたいでごめん」

「龍ちゃん、小鳥さんへの報酬はどうなっているの? ちゃんとお渡ししているんでしょうねぇ?」

「渡してるよ!」


 祖母に睨まれてタジタジになっている龍騎を見て小鳥が笑っていると、この家に住む、人見知りの座敷わらしの『らこ』がやって来て、小鳥の隣に座った。


「こんばんは、らこちゃん」

「……こんばんは」


 小鳥の家にいるわこは活発で人懐っこい座敷わらしだが、らこは違った。しかし、先日チケットを取るために集まった時に小鳥と話したらこは、彼女に心を許したようだった。


(わこちゃんも可愛いけど、らこちゃんはまたらこちゃんらしい可愛さがあるなぁ)


 わこもらこも見た目はよく似ている。わこと同居している小鳥には見分けがつくが、滅多に会わなければ判断が難しいだろう。


「らこが出てくるなんて珍しいな。何かあったのか?」


 龍騎が尋ねると、らこは何か言おうとして口を開いたが、すぐに口を閉ざして俯いた。その様子を見た小鳥と龍騎は顔を見合わせたあと、今度は小鳥が尋ねる。


「役に立てるかはわからないけど、良かったら話してみて。できる限りのことはするから」

「……いってもいいのか、わからなくって」

「らこちゃんのことじゃないの?」

「……うん。らおのはなしなんだ」


(らおくんの話? らおくんとは『あやかし』で何度も会っているけど、特に何かあったような様子はなかったんだけどな)


 俯いたままのらこに、小鳥は優しく話しかける。


「らこちゃんは、らおくんのことが心配だからどうにかしてあげたいけど、勝手に話してもいいのかわからないってところかな?」

「うん」

「そっか。じゃあ、私の家にはわこちゃんがいるし、わこちゃんにそれとなく聞いてみるね。それから、明日『あやかし』に行ってらおくんにも聞いてみる。らこちゃんから聞いたと言わなければいいでしょう?」

「うん」


 らこが頷くと、龍騎が不思議そうな顔をする。


「どうして、らおが心配なんだ? らおに何か相談されたのか?」

「ううん。あまりよくないはなしをぶつぶついっていたからしんぱいになっただけ」


(そのぶつぶつというところが気になるけど、物騒だから言えないんだろうなぁ)


「おせっかいにならないようにねぇ」


 祖母に言われた龍騎は無言で頷き、小鳥も「気をつけます」と答えて大きく頷いた。その後、明日『あやかし』で待ち合わせる時間を決めて、龍騎に家まで送ってもらった小鳥は、早速、出迎えてくれたわこに探りを入れる。


「今日はらこちゃんと会ったんだけど、最近、らおくんは元気にしてる?」

「『あやかし』であってるんじゃないの?」

「会ってるけど、最近は会っていないから」


 平静を装って答えると、わこは疑わし気な眼差しを小鳥に向けたあとに答える。


「らおね、いえをでようかまよってるみたいだよ」

「ええっ!? どうして!?」

 

 予想外の話に驚いた小鳥は間抜けな声で聞き返したのだった。

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