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あやかしのお助け屋の助手を始めました  作者: 風見ゆうみ


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33   猫又の恋 ②

 ニャーニャーと何か訴えている猫たちを見て、小鳥たちは困惑したが、たまとみけは違った。普通の猫の大きさだった体を本来の姿に戻したのだ。本来の姿のたまとみけは普通の猫の数十倍くらい大きくなっており、小鳥の腰の高さにたまたちの顔があった。


「お、大きい!」


 小鳥が声を上げると、龍騎が隣に立って説明する。


「猫またも色々な諸説はあるんで一概には言えないんだが、たまとみけはもともとは家猫で猫又に変化したんだ。猫又になると尻尾が裂けて体の大きさも大型犬くらいの大きさが普通なんだよ」

「じゃあ、これがたまたちの本来の姿なんですね」


 龍騎の話を聞いた小鳥が二匹の尻尾に注目すると、今までは一つだった尻尾が二つに分かれていた。何か良くないことが起こったのか、たまたちは怒りで毛を逆立て、目を吊り上がらせている。


(さっきまではあんなに可愛かったのに、怒っているからかすごく怖い。それにしても、こんなに怒ってるなんて、一体何があったんだろう)


 疑問を口には出さずに、たまたちを見守っていると、いきしがたまたちに尋ねる。


「生きている猫の話していることはわからないのよ。ちょっと説明してくれない?」

「悪い人間が現れて、野良猫を傷つけたにゃん!」

「そういえば、猫会議で話題になっているって、さっき言っていたよね」


 小鳥が尋ねると、たまは大きく頭を縦に振る。


「そうにゃん。どうやら、そいつが猫に火をつけようとしたらしいにゃん!」

「信じられない!」


 興味本位やストレス発散で誰かを傷つけたりする人がいると聞いたことがあった小鳥は、その時も信じられないと思ったけれど、実際に身近で起こったと聞いて余計にそんなことをする人がいるなんて信じられない思いだった。


「猫たちは無事だったのか?」

「どんくさい奴だったから上手く逃げられたみたいにゃん。でも、許せないにゃん!」

「天罰を食らわせないと駄目にゃん!」


 そう言うなり、たまとみけの姿が消えた。龍騎に止められると思ったのか、その前に『あやかし』から出ていったようだった。


「たまたちが人間に傷つけられることはないと思うんですけど、待っているだけというのも何だか心配になりますね」

「土蜘蛛が言ってたように、鬼になりかけている人間が増えているんだろうな」

「それって原因はわかるんですか?」

「上手くいかないことや嫌なことが続いたりして、どうして自分ばっかりと思う人や誰かの不幸を願う人が増えているのかもしれない」


 そう遅くはならないだろうし、たまたちが帰って来るまで待っていようと思った小鳥は、改めていきしに礼を言い、彼女に特大パフェを御馳走した。喜んでパフェを頬張るいきしを見ながら、龍騎と話をしていると、たまたちが帰って来た。

 二匹は元の猫の姿に戻っていたが、怒りは収まっていなかった。


「人間が見つからなかったにゃん」

「逃がしてしまったにゃん」


 普通の猫たちは逃げるだけで犯人の後を追うということまではしていない。そのため、犯人がどこにいるかわからなくなってしまったのだ。


「とにかく警察には話をしに行ってくる。まだ事件にはなっていなくても、見回りくらいはしてくれると思う。そういうのってどんどんエスカレートしていくって聞くしな」


 龍騎はたまたちにそう言ったあと、小鳥に目を向けて続ける。


「鬼が関与している可能性もあるから、現場には明日、俺自身も見に行ってみる。小鳥も来るか?」

「はい! 行きます!」

「おや、龍騎さんは小鳥さんのことを名前で呼ぶようになったんですねぇ」

「にゃー! 本当にゃん! 小鳥って言ったにゃん!」


 オーナーの言葉を聞いたみけが叫び、周りを飛んでいた小鬼たちはぱちぱちと手を叩いた。妖怪たちが龍騎を冷やかす中で、たまだけが元気がないことに小鳥は気がついたのだった。

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