30 鬼の話 ①
夕食時に母と祖母に龍騎と夜中に出かける話をすると、反対されるどころか喜ばれた。
「わこちゃんたちからイケメンで真面目な人だって聞いているし、私は反対しないわよ」
「で、でもお母さん、夜に出ていくんだけど良いの?」
「初デートで大人な関係にまでは発展しないでしょう?」
「お、大人な関係!」
小鳥が動揺していると、祖母が笑う。
「そうね。だけど、もう小鳥ちゃんも大人なんだから、大人の関係になるかどうかは、小鳥ちゃんが決めたらいいんじゃない?」
「そっか。そうよねぇ!」
「お母さん! 納得しないでよ!」
「だって!」
わこが小鳥の家に来てから、商店街のくじ引きや応募した抽選の賞品が当たったりと幸せ続きだったこともあり、わこが家に来ることになったきっかけを作った龍騎は、父親をのぞいては小鳥の家族に大人気だった。
「ことりはたまのこしになれるよ」
わこにそう言われた時は、恥ずかしくて顔から火が出るのではないかというくらい、小鳥は顔を赤くしていた。
話を終え、風呂に入ってゆっくりしたあとは部屋に入り、ベッドに寝転ぶ。すると、小鬼たちがスマートフォンを持って飛んできた。
『デートはいつするの?』
フリック入力が苦手な小鳥よりも上手に小鬼は手を滑らせると、小鳥に見せた。小鳥は少し考えてから答える。
「わからないわ。行くとするなら金曜の晩か土曜の晩だし、改めて話をすることになると思う」
『そっか』
この時、小鳥は初めて知ったのだが、小鬼の手や足は2倍近く手と足が伸びる。今も画面に体が触れないようにするために手を伸ばしていた。
「ピィッ!」
「ピピッ!」
他の小鬼に何か言われたのか、返事をした小鬼はまた画面に手を滑らせる。
『ことりはりゅうきのことをどうおもってるの?』
「どう思うって……、今はまだわからない。素敵だなって思うけど、初恋もまだの人間だから、この気持ちが恋なのかも分からないんだ」
「ピィッ!」
小鳥が申し訳なさそうな顔をしているからか、小鬼たちが飛んできて、小鳥の頬に自分の体を擦り寄せる。
「大丈夫。落ち込んでいるわけじゃないから!」
小鬼たちで前が見えなくなった小鳥は、優しく引き剥がして続ける。
「それに私が好きになっても神津さんが私を好きになるとは思えないし」
『りゅうきってよばないの?』
「……今はいいでしょ」
(恥ずかしくて言えない。それに呼ぶなら、龍騎さん、のほうがいいよね)
緩む頬を叩いてから冷静になろうと考えた時、土蜘蛛の話を思い出して、小鳥はベッドから起き上がった。
「鬼のこと忘れてた!」
「ピ?」
不思議そうに小鳥を見つめる小鬼たちに叫ぶ。
「土蜘蛛が鬼になりそうな人間が増えてるって、いきしさんに伝えろって言ってたでしょ?」
「ピーッ!」
小鬼からスマートフォンを受け取った小鳥は慌てて、龍騎にメッセージを送ったのだった。




