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あやかしのお助け屋の助手を始めました  作者: 風見ゆうみ


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23   龍騎の祖父 ①

 現在、龍騎は父親とではなく祖父母と暮らしていた。生家もすぐ近くにあると言われたが、目の前の大きな門構えに圧倒されてしまい、小鳥の耳には入っていなかった。


「神津さんって本当にお金持ちなんですね」

「俺が金持ちなんじゃない。じいちゃんが金持ちってだけだ。ちなみに、ばあちゃんはばあちゃんで株で資産を増やしてるから、これだけでかい家に住めてるんだ」

「す、すごいなぁ」


 小鳥は家の周りを囲む生け垣を見ながら呟いた。龍騎の祖父母の家は大きな二階建ての日本家屋で、木製の門をくぐると石畳の小道があり、その左右には手入れされた日本庭園が広がっていた。庭園の中には池があり、そこでは鯉が数匹のんびりとした様子で泳いでいる。


(個人の家で鯉が泳いでいるのを初めて見た)

 

 見るものに感動しながら龍騎のあとについて歩いていると、わこに似ているけれど、顔立ちが少し違う着物を着た少女が家の中から小鳥を見つめていることに気がついた。小鳥が足を止めると、いきしも同じように足を止めて小鳥に教える。


「あの子も座敷わらしよ。龍騎の生家にはいないけど、ここにはいるの」

「そうなんですね」


(神津さんとお父さんは仲が悪いのかな。あやかしのお助け屋の仕事も神津さんが継いでるみたいだし)


 ふとそんな考えが浮かんだが、自分のことを見つめている座敷わらしのことを思い出し、微笑んで手を振った。すると、わこたちと違いって恥ずかしがり屋なのか座敷わらしは奥に引っ込んでしまった。


「大人には人見知りするのよ」

「私は大人にも子どもにも人見知りなんで気持ちは分かります」

「……人見知り?」


 いきしとの会話が聞こえていたようで、不思議そうに聞き返す龍騎に小鳥は訴える。


「元々はそうなんです! 妖怪たちがフレンドリー過ぎるんですよ」

「ああ……、まあそうだな。奴らは力関係が強い人間以外に遠慮することはないからな」

「私はまだまだなめられているということですね」

「最近は懐かれているが正しいんじゃないか?」

「そうなんでしょうか」

 

 小鳥が眉根を寄せると「ピーッ!」と小鬼たちが鳴いた。


「そうだと言ってるな」

「私にもこの子たちの言葉がわかるようになったら良いんですけど、神津さんはどうやってわかるようになったんですか?」

「小さい頃から聞いてたからか、いつしか自然とわかるようになってた」

「そ、そんなもんなんですね」


 話をしていると家の扉が開き、割烹着を着た温和そうな老婆が現れた。


「お待ちしておりました」


 彼女は龍騎の祖父が雇っているお手伝いさんで週に三日やって来ては、家の掃除や数日分の食事を用意して帰っていく。足りなくなった場合は、龍騎の祖母が作る形だ。食材は龍騎やお抱えの運転手が買いに行っていた。


(お手伝いさんがいる家に来るのも初めてなんだけど)


 今日はいつものカジュアルな服ではなく、清楚系にしてきたつもりの小鳥だったが、家に入るにはドレスコードがあるのではないかと思うような広い玄関で足を踏み入れることにかなり躊躇した。上がり框には白いマットがが置かれており、パンプスを脱いだ小鳥は反転して靴を揃えると、勧められたスリッパを履いた。

 龍騎の祖父母が甘いものが好きだと聞いていた小鳥は、近所の人気の店で糖質控えめのケーキを買ってきていたため、それをお手伝いのあやに手渡し、龍騎の誘導で客間へと向かう。


「そういえば小鳥、聞き忘れてたんだけど、前に小鬼たちが更衣室で暴れたでしょう? その後は大丈夫だったの?」

「大丈夫でした。あの後、総務部長がお祓いを頼んで陰陽師の方が更衣室で悪霊退散! ってやってくれてましたから」

「祓えたの?」

「いいえ。小鬼たちは不思議そうに体を傾けてました。髪を引っ張ろうとしてた子もいたので、ゴミがついてますって嘘をついて捕まえました」


 幽霊と妖怪は違う。今回、小鳥の会社に来てくれた祓い屋は幽霊専門のほうだったようだ。


 座布団の上に正座をしていきしと話をしていた時、龍騎の祖父である龍一が部屋に入って来たのだった。

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