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91、キラーアントと宝箱

 それにしてもキラーアントってこんなにデカかったのか。中型犬サイズのミルよりも大きい気がする。これが何千匹もいたら、それは街も滅亡するな……


「こっちを襲ってこないな?」

「隠し部屋ってダンジョンボスと同じ仕組みなのかもね。ダンジョンボスも部屋に入るまでは襲われないって話じゃなかったっけ?」

「確かそうだったはず。警戒しつつ、戦う前に作戦を立てようか」


 俺はウィリーに見張りを頼んで、アイテムボックスから魔物図鑑を取り出してキラーアントを調べた。


「キラーアントは、外殻が硬いから狙い目はお腹側だって。ひっくり返してお腹を狙うのが一番効率が良いって書いてある」

「そうなんだ。じゃあウィリーとミルちゃんにはひっくり返す役目をしてもらって、私とトーゴが後ろからお腹を狙う感じにする?」


 確かにそれが一番かな。後はやってみて臨機応変に動くしかないだろう。初見の魔物は、実際に戦ってみるまでどうなるか分からない。


「ウィリー、ミル、いけそう?」

「おう、もちろんだぜ」

「僕も爪と風魔法でいけると思います!」

「じゃあお願いするよ。その作戦でいこう」


 俺達は作戦を決めてから皆で顔を見回して、息を整えてから部屋に足を踏み入れた。俺達が部屋の中に入るとキラーアントは一斉にこちらを向き、顎をカツカツ動かしながらかなりのスピードで近寄ってくる。


「顎に気をつけて」


 キラーアントは魔法が使えないし顎での噛みつき攻撃だけなんだけど、それがかなり強力らしいのだ。


「分かってるぜ。いくぞっ!」

「アイススピア」


 ウィリーが斧を使ってひっくり返したキラーアントのお腹に、狙いを定めてアイススピアを放つ。するとお腹は柔らかいという情報は合っていたようで、抵抗なくアイススピアが突き刺さり、キラーアントは絶命した。

 そうしている間にミルが爪とウインドでひっくり返したキラーアントも、ミレイアの弓で絶命している。


 しかしまだ八匹も残っている。キラーアントは仲間がやられたことに動揺もせず、俺達を餌にしようと迫ってくる。


「うわっ、一気に何匹も来られるとやばいなっ」

「結界っ!」


 五匹が群がって身動きが取れなくなっていたウィリーを救うため、ミレイアが結界を発動した。それによって動きを止めたキラーアントを、ミルが二匹同時にひっくり返して俺がとどめを刺す。


「ミレイア、ありがとな!」

「うん! また来てるよ!」

「おうっ!」


 やっぱり数が多いと立ち回りが難しいな。特にこの部屋はそこまで広くないから、それも討伐の難易度を上げている。


「ウィリー、ミル、ちょっと下がって! 範囲攻撃魔法を使うから」

「りょーかい」

「分かりました!」


 俺は二人が下がったことを確認して、残っている六匹のキラーアント全てが範囲に入るようにイメージして……


「アイスフラワー」


 魔法を発動した。すると地面から多数のアイススピアが氷の花のように突き出して、キラーアントをお腹側から串刺しにする。


「トーゴ、すげぇな!」

「こんな魔法もあったんだ」

「トーゴ様、カッコいいです!」


 上手くいって良かった……初めて実戦で使ったから結構緊張した。アイスフラワーはこの前読んでた魔法の本に出てきた呪文で、カッコ良いからいつか使おうと覚えていたのだ。


「お腹側が弱点で数が多い魔物には有効な魔法かも」

「魔力の消費量はどうなの?」

「うーん、やっぱりそこはかなりの量を消費してるかな。アイススピアを何十本も放つのと同じだから」

「じゃあ何度も使うのは無理なんだな。でも使いどころを間違わなかったら強いな!」


 それを見極めるのが一番大切だな。後はもう少し出現するアイススピアの数を減らして、魔力を節約するのはありかもしれない。


「皆さん、まずは宝箱を開けませんか?」


 俺達が魔法について話していると、尻尾を激しく振って瞳を輝かせたミルがそう声を発した。俺達はそんなミルの様子に苦笑を浮かべ、皆で宝箱に視線を移す。


「あれ、なんかあの宝箱豪華じゃない?」

「確か豪華な方が、良いものが入ってる可能性が高いんじゃなかったか!?」

「私もそう本で読んだことあるよ」

「そうなんですね。早く開けましょう!」


 皆で宝箱に向かい、宝箱の周りを取り囲んで外観を観察した。木製じゃなくて鉄製の宝箱みたいだ。それに宝石みたいなものがいくつか付いていて、輝きを放っている。


「誰が開ける?」

「トーゴが開けて良いよ。あっ、罠はある?」

「マップで見た限りではないみたい」

「じゃあさっそく開けようぜ」

「トーゴ様、ドキドキしますね!」


 俺は皆の輝く瞳に背中を押され、少しだけ緊張しながら宝箱の蓋に手をかけた。そして開くと中には……


「何だろうこれ、綺麗なお皿?」


 宝箱の中に入っていたのは、どこぞの貴族が使っていそうな綺麗なお皿だった。平で結構な大きさで、パスタとかを食べるときに使うようなやつ。


「何か凄い効果があるのか?」

「どうなんだろう。このアイテムは本には載ってなかったよ」


 宝箱の中身はダンジョンコア任せだから、俺も分からないんだよな……手に持ってみても特に何も起こらないし、ボタンやレバーなどを探してみても何もないみたいだ。


「トーゴ、ちょっと貸してくれる?」

「もちろん」


 俺からお皿を受け取ったミレイアは、上に物を載せてみたり逆さにしてみたり、地面に置いてみたりと色々試してるけど、やっぱり何も起きないようだ。


 そうこうしているうちに宝箱はフッと霧のように消えてしまった。ダンジョンの宝箱は、中身がなくなって一定時間経つと消える仕組みなのだ。今回も宝箱が消えたということは、アイテムはこのお皿だけってことだな。


「分からないね。鑑定してもらおうか」

「それが一番かな」

「じゃあ詳細はギルドに帰るまでお預けだな」

「鑑定で何か分かると良いですね!」


 ダンジョンの宝箱から出るアイテムは、有名なものや出現頻度が高いものは本などにも載っていてすぐに分かるけど、そうでないものはギルドの鑑定士に頼んで鑑定をしてもらうのだ。

 鑑定士とは国家資格らしくて、今までダンジョンから出たアイテムの情報を全て網羅していて、その知識を元に持ち込んだアイテムを鑑定してくれる。持ち込んだアイテムが既知のものなら正確な情報を得られ、アイテムが初めて出現したものなら材質や形状、既出の似たアイテムから効果を予測してくれるのだそうだ。


 ダンジョンがある街のギルドには必ず一人は常駐しているらしいので、この街にもいるのだろう。鑑定してもらうのは初めてだし、ちょっと楽しみだな。

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