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80、サンドウィッチ

 ウィリーとミルに少し遅れて俺とミレイアも大通りの端に向かうと、既に二人は串焼きを食べ始めていた。ウィリーは右手で自分の串焼きを持ち、左手でミルの串焼きを持って、器用に自分が食べながらミルにも食べさせてくれている。


「ウィリー、ミルのお皿出す?」

「いや、このままで大丈夫だ。やっぱり串焼きは串から食べてこそ美味いからな」


 ウィリーのそんな言葉を聞いてミルはよっぽど嬉しかったのか、尻尾を振りながらウィリーの足に頭を擦り付けた。


『ウィリーさん、ありがとうございます……!』

「ミルは感激してるみたいだよ」

「そうなのか? ははっ、お前は可愛いな」


 ウィリーはそう言って、ミルにまた串焼きを差し出した。するとミルは感激よりも食い気が勝ったみたいで、嬉しそうな表情で串焼きにかぶりついた。


 それから数分間は誰も言葉を発さずにひたすら串焼きを堪能し、全員がほぼ同じタイミングで食べ終えた。本当に美味かったな……塩味の方も塩だけじゃなくていろんな香草が使われていて、とにかく絶品だった。

 あの屋台の串焼きは頻繁に買って、アイテムボックスに収納だな。


「よしっ、じゃあ次の屋台に行こうぜ」

「うん。次はパンが食べたいな。ミルちゃん、美味しいサンドウィッチを売ってる屋台は分かる?」

『もちろんです!』


 ミルはミレイアからのリクエストに張り切って、ドヤ顔でクンクン匂いを嗅ぎながら大通りを進んでいった。そして串焼きの屋台から徒歩五分ぐらいのところにある、若いお兄さんがやっている屋台の前に止まった。


『ここがとても良い香りがします。なんだか甘い香りもするみたいです!』


 サンドウィッチで甘い香り……? そう不思議に思いつつも品物を見てみると、その理由が分かった。ここは食事のサンドウィッチだけじゃなくて、デザートのサンドウィッチも売ってるみたいだ。

 そういえば甘いものって、ナルシーナの街ではあんまり食べなかった気がするな。毎日のように体を動かして疲れてたから、塩味があるものばかり食べていた。


「いらっしゃい。食事系のサンドウィッチは銅貨三枚、甘い方は銅貨四枚だ」

「中身は決まってるの?」

「いや、自由に選べる。三つまでなら追加料金なしで、四つ目からは小銅貨五枚の追加料金だ」


 そんなに高くないな。ミルが選んだ屋台が外れることはないし、食事系と甘い方を一つずつ食べてみるか。


「俺はどっちも一つずつにするけど、皆はどうする?」

「俺は二つずつ食うぜ」

「私は甘い方だけにしようかな」

『僕は食事の方を一つに甘い方を二つ食べたいです!』


 じゃあ食事の方が四つと甘い方が六つだな。その数をお兄さんに伝えると、大量注文に良い笑顔を見せてくれた。


「ありがとな。順番に中身を言っていってくれ」

「おう! 俺からいくぜ」


 そうして俺達は合計十個のサンドウィッチを手に入れて、大通りを進んだ先にある広場にやってきた。真ん中には結構立派な噴水が設置してあり、その周りにはベンチが置かれている。俺達は空いているベンチを見つけ、横並びで腰掛けた。


「めっちゃ良い匂いだな!」

「本当だね。早く食べようか」

「おう!」


 ウィリーが満面の笑みでまず手に取ったのは、追加料金を銅貨一枚払ってトッピングを二つ追加した、肉だけが五種類挟まれた肉サンドウィッチだ。見るからに重そうなそのサンドウィッチを、幸せそうに頬張っている。


『トーゴ様、僕も食事の方から食べたいです!』

『了解。ちょっと待って』


 ミルの食事サンドウィッチは、ここ最近のお気に入りであるチーズがたっぷりと入ったものだ。二種類のチーズに味付けされたビッグバードの肉が挟んである。


『はいどうぞ』

『ありがとうございます!』


 地面に台を置いてその上にサンドウィッチが載ったお皿を置くと、ミルは嬉しそうにかぶりついた。尻尾が高速で振られているので、かなり気に入ったみたいだ。


 さて、俺も食べるかな。俺が頼んだのは、レッドカウを使って作られたハンバーグと温野菜を二つ挟んだものだ。まだ温かいサンドウィッチに大口でかぶりつくと……ハンバーグからジュワッと肉汁が溢れ出た。

 これ、めちゃくちゃ美味いな。ハンバーグは塩と香辛料で濃いめに味付けされていて、レッドカウの肉が普通のミンチよりも粗めに作られているみたいだ。なんて言うんだろう……ステーキを食べているような歯応えがある。


 凄く不思議な食感の料理だ。でもとりあえず、美味しいというそこだけは確実だ。


「うわぁ、このデザートサンドウィッチ美味しいよ!」

「本当か!? じゃあ俺も次はそっちを食べてみるぜ」


 ミレイアが食べているのは、たっぷりの生クリームに果物を二つ挟んだサンドウィッチだ。いわゆる日本で流行っていた、フルーツサンドみたいなやつ。


「そんなに生クリームたっぷりで重くない?」

「全然! これなら何個でも食べられるかも」


 そんなに美味しいのか……俺はミレイアの様子を見て甘い方のサンドウィッチも気になり、食事の方は一旦置いて、甘い方を食べてみることにした。

 俺の甘いサンドウィッチは、生クリームとカスタードを両方挟んでもらい、果物は一種類だけだ。かなり分厚いので大口でかぶりつくと……生クリームがとにかく美味い。


 日本で食べてた生クリームをもう少し重くして味を濃くした感じだ。生クリームが苦手な人は嫌かもしれないけど、生クリーム好きの俺からしたら凄く美味しい。果物の酸味と合わさって絶品だ。


「どっちも最高に美味しいや」

「本当だな。あの屋台はまた行こうぜ」

「そうだね。他の組み合わせも試してみたいし」

『行きましょう!』


 そうして俺達は美味しいサンドウィッチを堪能し、お腹が満たされたところでベンチから立ち上がった。


「よしっ、次は買い物だな」

「うん。まずは魔力回復薬から買いに行っても良い? さっき通ってきたところにお店があったから」

「もちろん良いよ。じゃあ行こうか」


 広場から出て大通りを少し戻ると、目的のお店が見えてきた。他のお店と比べるとかなり大きな店構えで、お客さんはたくさんいるようだ。並べられている商品を見るとちょっと、いやかなりワクワクする。

書籍版の書影が公開となっています。作者TwitterやAmazonなどのサイトでもご覧いただけますので、ぜひ見に行っていただけたら嬉しいです。ミルがとっても可愛くて本当に素敵な表紙になっています!よろしくお願いいたします!

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