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66、顔合わせ

 ウィリーとミルと共に朝食を食べて今は宿を出たところだ。今日はウィリーの初心者講習なので、まずはウィリーを冒険者ギルドまで送り届け、その後でミレイアのところに行く予定にしてある。


「初心者講習が終わったら武器を買いに行くから、もし俺がいなかったらギルドで待ってて」

「トーゴは何か予定があるのか?」

「ミレイアのところに帰ってきたことを知らせようと思って。後はウィリーのことも」

「もう一人のメンバーだよな?」

「そう。優しいから心配しなくても大丈夫だよ」

「べ、別に心配とかしてないし!」


 必死に否定する感じが、実は緊張してたって明かしてるようなものだけどな。このツンな感じが十一歳ってことを思い出させる。


「はいはい、分かったよ」

「信じてないだろ!」

「そんなことないって。ほら、冒険者ギルドに着いたよ」


 ウィリーは納得できないような表情をしながらもギルドの中に入っていった。するとすぐにサムエル教官が迎えにきてくれたようだ。


「お前がウィリーか?」

「そうだ」

「俺が戦闘講習の教官だ。よろしくな」

「ああ、よろしく頼むぜ!」

「トーゴ、最近パーティーメンバーが増えるな」


 サムエル教官が俺にも話しかけてくれた。確かにミレイアが仲間になってくれたのがつい最近だから、本当にほぼ同時期のパーティー入りだ。俺もこんなに早く二人も集まるなんて思ってなかった。


「最近優秀な人と出会うんだ」

「まあ優秀な奴のところには優秀な奴が集まるからな」

「そうみたい」

「自分で言ったな」

「ははっ、まだまだだから頑張るよ。じゃあウィリーのことはよろしく。俺はミレイアのところに行ってくるから」

「任せておけ。最適な武器を見つけて最低限の知識は叩き込んでやるよ」

「ありがとう。じゃあまた、ウィリーも頑張って」

「おう!」


 二人が冒険者ギルドの裏庭に向かうのを見送ってから、俺は回れ右をしてついさっき入ったギルドから外に出た。そしてミレイアの家に向かう。


『ミル〜。なんか一気に仲間が増えたよ』

『そうですね。でも将来有望な仲間に出会える確率なんて低いですから、出会った時が誘いどきです!』

『確かにそうだよね。それに長い時間一緒にいるほど連携も良くなっていくだろうし』

『はい!』

『今日はこの後、ミレイアと顔合わせしてもらって武器を買いに行って、最後に宿で俺達の能力も話しちゃうって予定で良い?』

『そうですね。ウィリーさんと話すのが楽しみです』


 仲間が増えるとミルも話せる人が増えていくってことだから、ミルにとってはかなり嬉しいことなんだろう。


 ミレイアの実家に到着すると、ちょうどお店の中にいるミレイアのお母さんと目が合った。外に出てきてくれるみたいだ。


「ミレイアを呼べば良いかしら?」

「はい。よろしくお願いします」

「ちょっと待っててね」


 それから一分も経たずにミレイアが裏口から飛び出して来た。


「トーゴ、早かったね!」

「うん。結構大変ではあったんだけど、日数は長くかからなかったんだ」

「それなら良かった。ミルちゃんもおかえり〜」


 ミレイアはミルの前にしゃがみ込んで、ぎゅっと抱きついた。ミルもかなり嬉しそうだ。そういえば最近ミルにぎゅってしてないかも……


「今日は依頼を受ける? あっ、トーゴは疲れてるから今日ぐらいは休んだ方が良いかな」

「ううん。実は今日はミレイアに紹介したい人がいるんだ。今回の依頼で行った村で強くて将来有望な子がいて、その子が仲間になってくれたんだけど……紹介しても良い?」

「そうなんだ。じゃあその子を連れて帰って来たってこと?」

「そう。かなり急にパーティーメンバーが増えることになったけど……良いかな?」

「もちろん問題ないよ。パーティーメンバーはトーゴが好きに増やして良いって話したじゃん」


 ミレイアはそう言いながら頷いてくれる。問題なく了承してもらえて良かった……メンバーは俺が決めて良いって言われてるんだけど、さすがにミレイアが仲間になって数日だから断られるかなってちょっとだけ不安だったのだ。


「ありがとう。でもできる限り相談したいと思ってるよ」

「うん、一緒にいる時はそうしてね」

「もちろん。……それでその仲間がウィリーって言うんだけど、今冒険者ギルドにいるから一緒に来てくれる?」

「分かった。ちょっとだけ待ってて」


 ミレイアはにっこりと笑顔を浮かべて頷いた後、駆け足で自宅に戻り数分で準備を整えて戻って来た。


「お待たせー、行こうか。そういえばさっき名前はウィリーって言ってたけど、男の子なの?」

「うん。十一歳の」

「ええっ、若くない?」


 ミレイアはパーティーメンバーが増えたことには全く驚かなかったのに、ウィリーの歳にはかなり驚いたみたいだ。


「それが体格は俺と同じぐらいなんだよ。多分すぐに抜かされると思う。それに村では魔物に襲われることも多くて慣れてるらしいから、魔物が怖くて逃げ惑ってってことはないと思うよ」

「そっか、それなら問題ないね。仲良くなれると良いなぁ。私って弟はいないから欲しかったんだよね」

「確かに歳の差的には完全に弟かな」


 俺にとってもちょうど弟って感じの歳の差なんだけど、いかんせんウィリーの身長が高すぎて弟に見えないんだよな……日本人の時のまま体を作ったのが今でも悔やまれる。



 冒険者ギルドの中に入るとウィリーもサムエル教官もいなかったので、まだ講習の途中みたいだ。俺達はとりあえず裏庭を覗いてみることにしてドアを開けた。


 うわぁ、ウィリーが軽々しくでかい斧を振り回してるよ。やっぱりウィリーは斧になったんだな。まあ、あの怪力なら当然か。


「トーゴ! 俺の武器は斧に決まったぞ!」


 ウィリーが満面の笑みで遠くからそう叫んだ。こういう無邪気なところは子供らしくて可愛いんだけど、うん、斧振り回してるってビジュアルが可愛さを完全に打ち消している。逆に満面の笑みで斧を振り回すって怖さすら感じる。


「良かったね〜」

「おいトーゴ、お前はどこからこんな逸材を見つけてくるんだ!?」


 サムエル教官が俺の姿を確認した途端に、ウィリーに斧を地面に置かせて俺のところへ駆け寄ってきた。


「えっと……完全に偶然だけど」

「ミレイアといいウィリーといい、どっちも数十年に一度しか会えないような天才ばかりじゃねぇか!」


 確かにこの二人とこの短期間で出会えたのは相当運が良いよな。多分自分が作った世界に閉じ込められるなんて最高に運が悪いことが起きたから、その反動で幸運なことが起こってるんだろう。そう思っておこう。


「運が良かったみたい」

「運が良いって、どんな強運なんだよ!」

「まあまあ、たまにはそんなこともあるんだよ。それでウィリーはどう?」

「どうもこうも斧を使わせたら相当強くなる。そもそも斧は力で叩き潰す武器だからな、ウィリーの力の強さは異常だ」

「やっぱりそうなんだ。相当力が強いんだろうなって思ってたけど」

「これから先、成長したら怖えよ」


 成長したらもっと怪力になるのかな。それは楽しみだ。そのうち岩とか一人で持ち上げられたりするんじゃないだろうか。


「あっそうだ、紹介するよ。ミレイア、新たなパーティーメンバーのウィリーだよ。ウィリー、この人がミレイア。二人とも仲良くして欲しい」


 サムエル教官の勢いに押されて紹介するのを忘れていた。こうして二人が並ぶと、ミレイアの方が年上だってことが信じられないな……ミレイアが小さめなのもあるけど、何よりもウィリーが成長しすぎだ。


「初めまして。私はミレイア、よろしくね。ウィリーって呼んでも良い?」

「ミレイアだな。もちろんどう呼んでくれても良いぞ。よろしくな」


 二人は笑顔で握手を交わした。今のところは仲良くできそうで良かったな。


「それにしても大きいね〜。十一歳なんだよね?」

「そうだぞ。ミレイアは……十歳か?」

「ぶふっ」


 ヤバい、思わず吹き出しちゃった。ミレイアに怒られる……


「ト〜ゴ〜、今笑ったよね!?」

「ご、ごめん。思わず笑っちゃって」

「もうっ。ウィリーも覚えておいて、私は十五歳だから。トーゴと同い年だから!」


 ミレイアが少しだけ怒ったような表情でそう叫んだ。それにウィリーが素で驚いたような表情を浮かべる。


「……本当なのか?」

「本当よ! 私の方がお姉さんなんだからね!」

「そ、そうか……それにしては小さいんだな」


 ウィリーそれは禁句!


「ウィリー、私は小さいんじゃないのよ。良い? 私は小柄なだけよ!」


 いや、小さいのと小柄なのほぼ意味変わらなくない? まあミレイアがそれで納得するなら良いんだけど……


「お、おう。ミレイアは小柄なんだな」


 ウィリーはミレイアの勢いに押されてコクコクと頷いている。このパーティーは近いうちにミレイアが一番強くなりそうだ。


 そうして俺達がパーティーの親睦を深めていると、サムエル教官が口を挟んだ。


「じゃあウィリー、そろそろ講習の続きをするぞ」

「あ、そうだった!」


 二人が講習の続きを開始したので、俺とミレイアは邪魔にならないように端による。そしてそれからはウィリーが斧を振るう様子を見学した。


 そしてウィリーの講習が終わったところでサムエル教官と別れ、ウィリーの武器を購入し宿まで戻ってきた。今日はミレイアも一緒だ。

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