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51、パーティーの決まり

「お待たせいたしました」


 ミルの可愛さからそんな馬鹿なことを考えていたら、リタさんが戻ってきたようだ。


「こちらがミレイアさんの冒険者ギルドカードで、こちらが光の桜華のパーティーカードです。お確かめください」


 リタさんはミレイアと俺にカードを手渡してくれた。特に間違えているところもないし大丈夫そうだな。


「ミレイアのカードは間違いとかない?」

「うん。大丈夫だと思う」

「じゃあ無くさないようにちゃんと持ってて」

「分かった。けど……鞄に入れたら無くしちゃうかな? トーゴはどうやって持ってるの?」

「俺はアイテムボックスだから……」

「そうだった。全く参考にならない」

「ごめん」


 俺は苦笑しつつ謝った。でも確かに、アイテムボックスがないと本当に不便だな。他の人はどうしてるんだろう?


「ミレイアさん、冒険者ギルドカードはカードに小さな穴を開けて、そこに紐を通して首からかけている方が多いです。紐は容易に切れないように頑丈なものを用意するらしいですよ」


 リタさんが一般的な冒険者のことを教えてくれた。俺は普通とはちょっと外れてるからありがたい。


「そうなのですね。では私もそうしてみます。ありがとうございます」

「いえいえ。お役に立てたのであれば良かったです。ではこれで登録は終わりなのですが、冒険者ギルドの説明はお聞きになりますか?」

「トーゴ、聞いた方が良いかな?」

「俺でも教えられるけど、一度聞いておいた方が良いと思う。俺だと忘れてることもあるだろうし」

「分かった。じゃあお願いします」

「かしこまりました」


 それからリタさんの冒険者ギルドに関する説明を、ミレイアと一緒にもう一度聞いた。相変わらずスラスラとつっかえることなく話すリタさんは、凄く有能だった。結構忘れてる説明もあって俺にとっても有意義だったな。


「これで説明は終了となります。何か質問などはございますか?」

「大丈夫です。丁寧に教えてくださってありがとうございます。あっ、初心者講習でしたっけ? それを受けたいんですけど」

「かしこまりました。初心者講習の一覧はこちらです。どれを受講されますか?」

「えっと……戦闘と解体は受けたいです。あとはどうしよう」


 結局は俺もその二つしか受けていない。でも他のやつはそこまで必須じゃない気がする。読み書きとか簡単な敬語なんかはミレイアも身についてるし。


「また必要だと思ったらで良いんじゃない?」

「確かにそっか。じゃあその二つでお願いします」

「かしこまりました。一番早い期日だと明日の午前九時から戦闘、三日後の午後二時から解体の講習が受けられますがそれで良いでしょうか?」

「はい。それでお願いします」

「かしこまりました。では予約しておきますね。また明日お待ちしております」

「ありがとうございます」


 そうして登録を済ませて受付から離れた。そして二人で今後について話し合うために食堂側にある椅子に座る。


「遂にこれで私も冒険者だね!」

「うん。そして俺達は正式なパーティーだ。そうだ、これからのお金の分配はどうする?」

「報酬をどう分配するかってこと?」

「それもあるけど、どちらかといえばお金を支払うときのルールを決めておこうかなって」

「確かに、パーティーで必要なものを買うときもあるよね」

「それにさっきは俺が一旦払うって言ったんだけど、武器とかも種類によってかかる金額が違うと思うんだ。例えば弓は定期的に矢を買わないといけないからお金がかかるでしょ? でも剣は手入れをすればしばらくは使えるからそこまでお金はかからない。だから武器にかかるお金を個人で出すのって違うかなって思うんだけど……」


 厳格に決めすぎるのも良くないけど、その辺を平等にするのはパーティーが平和に続くためにも必要だろう。今は二人だけだから問題は起きなくても、後々人数が増えるかもしれないし。


「確かにそれはそうかも。じゃあ報酬はパーティーの人数プラス一で割って、個人のお金とパーティーのお金に分ける? 武器とか依頼の途中で必要になったものとか、仕事に必要なものは基本的にはパーティーのお金から払う。そして個人で欲しいものはそれぞれって感じにすれば良いんじゃない?」


 それなら上手くいきそうかな。臨機応変に対応できるだろうし。


「じゃあそうしようか。あとはその場で臨機応変に」

「うん! そのうちアイテムボックスの魔道具が欲しいなぁ」

「……え、そんなのあるの?」

「私もちょっと聞いたことあるだけなんだけど、大型ダンジョンの奥にいるような強い魔物の魔石を使えば作れるんだって。あとはたまにダンジョンの中にある宝箱から出るらしいよ。それはアイテムバックっていうんだっけ?」


 ……おおっ、なんだか凄くテンションが上がる話だ。遂に、遂に冒険が始まる予感がする!

 ここまで本当に長かった。苦節一ヶ月強、雨の日も風の日も雪の日も雷の日も……


 ……いや、一ヶ月って短いな。それにほとんど毎日晴れてたし。


「トーゴ、どうしたの?」

「あっ、だ、大丈夫。何でもないよ。ちょっと変なこと考えてただけ。アイテムバックを手に入れたいとか、そういう目標があるとテンション上がるなって」

「どうせなら高い目標がいいよね!」

「そういえば、ミレイアに俺の目標を話したことなかったっけ?」


 自分の能力を明かさないとってことばかり考えてて、これから俺がやりたいことは話してなかったかも。ダメじゃん俺。


「遠くの街にもダンジョンにも行くことは聞いたけど、そういえば目標は聞いてないかも」

「俺の目標は、この大陸にある三つの巨大ダンジョンの制覇と西の大陸と東の大陸にある巨大ダンジョンの制覇、それを達成したら最後に、北の大陸にあるダンジョンの制覇だよ」


 俺がその言葉を口にした途端、ミレイアはぽかんと口を開けたまま固まってしまった。さらに時間も遅くなり人で賑わっていた冒険者ギルドの中がシンっと静まり返る。結構大きな声で話してて聞こえちゃったのかな。


「ブハッ……ヒヒヒヒッ、は、は、腹がいてぇ」

「ギャハハハッ、ぼ、坊主、笑わせるなよ、ヤベェ、笑いすぎてく、くるしい……ブハッ……」


 え……どういうこと? 冒険者ギルドの中はさっきの静けさが嘘のように、むさい男たちの笑い声が響き渡っている。

 もしかして、今俺が話したダンジョンの制覇ってこんなに笑われるほどあり得ないことなの……?


「お前達! 子供が夢を語っているのを笑うなど可哀相だろう!」

「だ、だってよ……ガキっつっても成人してるぐらいの歳じゃねぇか。それで五大ダンジョンを制覇してさらに死の大陸まで行くっつってんだから……は、腹がいてぇ」


 筋肉ムキムキのお姉さんが庇ってくれたけど、それでもおっさん達の笑いは収まらない。クリアボーナスの宝玉はそれぞれ個人での初回クリアの時にもらえるものだから、この世界で既に何人も手に入れてる人はいるのかなと思ってたけど、この様子だとどのダンジョンもまだ一度もクリアされたことがないのかもしれない。

 これは相当厄介だ……クリアした人がいれば情報も得られるのに。


「君、馬鹿な男どもがすまないな。夢を持つのは良いことだ。大きな夢を持ってこそ人は強くなれるからな。その夢が叶わなくても夢を追いかける時間は素敵なものだ。頑張れよ少年」


 お姉さんがそう励ましてくれたけど、それってもう夢は叶わない前提だよ。そんなにやばいところなのか……

 さっきまで笑ってた男達にはイラつくけど、ここは下手に出て情報を集めようかな。


「五大ダンジョンってそんなにやばいところなの? 俺は村で冒険者の兄ちゃんから聞いたことがあるだけなんだ」


 ちょっとだけ唇を尖らせ拗ねたようにそう問いかけると、さっきまで笑ってた男達は申し訳なさそうに近づいてきてくれた。基本的にこの街の冒険者は強面で豪快でデリカシー皆無だけど、悪い人達ではないのだ。

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