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48、お昼ご飯とトーゴの能力

「じゃあこれからやることなんだけど、まずはミレイアの冒険者登録をしようか。そしてミレイアの武器を決めたい」

「私も武器を持つの?」

「うん。身を守る術はあったほうが良いと思うんだ。ミレイアはバリアを使えるから基本的には後衛になる。だから遠距離の武器を主として持って、後は敵に近づかれた時のために短剣かナイフを使えるようにした方が良いと思う」

「でも、私どれも経験ないよ?」

「冒険者ギルドで初心者講習をやってるから大丈夫だよ」

「そうなんだ……じゃあ、武器も頑張って練習する!」


 ミレイアは拳を握り締めてそう宣言した。うん、心強い仲間だ。


 ――ぎゅるぅぅ〜。そうして会話をしていたら、どこからか盛大なお腹の音が聞こえてきた。出所は……ミルだ。


『ミル、お腹空いた?』

『うぅ……』


 ミルは尻尾をしゅんっと垂れ下がらせて耳をぺたんとしている。かなり恥ずかしかったみたい。でもそんなミルが可愛い。


「今のミルちゃん? 可愛い〜!」


 ミレイアにも可愛いと抱きつかれている。うん、その気持ちめちゃくちゃわかる。


「お腹も空いたしお昼ご飯にしようか。また午後に訓練の続きをすれば良いし」

「賛成!」

『トーゴ様、ありがとうございます……』

『俺もお腹空いたし良いんだよ。逆にお昼が遅くなってごめん』


 それから俺達は大きな木の下に移動して、そこで休憩を取ることにした。


「ミレイアの家のパンを食べるの楽しみだな。はい、これがミレイアのだっけ?」

「うん! 私はパニーニとクロワッサンね」

「了解。はいどうぞ」

「ありがとう! アイテムボックスって本当に便利だね。あれ、このパンまだあったかい?」

「俺のアイテムボックスは時間停止なんだ。だから食料はいつまでも保存できるよ」


 ミレイアはもう仲間になったから、俺の能力のこともどんどん伝えていく。これでもしミレイアに裏切られたりしたら、自分の見る目がなかったってことで諦めようと思う。俺も強くなったしミルもいるし、最悪遠くの国に行けばまた一からやり直せるし。


「時間停止……時間が止まるってこと……?」

「そうなんだ。だから焼きたてのパンをアイテムボックスに入れたら、十日後でも一年後でも焼きたてのまま取り出せるよ」


 俺のその言葉に、受け取ったパンを手にしたまま目を見開いて呆然としているミレイア。まあそんな反応になるか……


「じゃあ、お肉は? ずっと保存できるの!? 野菜も!? 魔道冷蔵庫いらないじゃん!」

「うん。だから食料の保存はいくらでもできるんだ。あっ、あと俺のアイテムボックスは容量の制限もないからいくらでも入れられるよ。それから狩った魔物を収納すると勝手に解体してくれるから、解体も必要ないよ。一応技術は身につけた方が良いと思うけど」

「な、な、な……何それ! そんなの聞いたことないよ!」


 あっ、ミレイアがついに持っていたパンを落とした。俺はそれをしっかりと受け止めて、一旦アイテムボックスに戻す。まだ驚きすぎてて食べそうにないからな。


「多分他にこの能力がある人はいないんじゃないかなぁ。他の能力もこんな感じで俺は規格外なんだよ」

「トーゴって、何者なの……?」

「うーん、自分でもよく分からないんだ。でも悪者じゃないよ」


 この世界を作った神ではあるんだけど、もう神としての権限は一切ないから俺は何なんだろう。人間なのかな?


『ミルはベーグルとデニッシュ?』

『はい! お腹が空きました』

『どうぞ。多めに買ったから足りなかったら言ってね』

『ありがとうございます!』


 ミルは目の前に置かれたパンに嬉しそうにかぶりついた。少し硬めのベーグルも、ミルの顎の力があれば全く問題はないみたいだ。

 俺も食べよう。俺はバゲットのサンドウィッチだ。生ハムとクリームチーズが挟まれていてめちゃくちゃ美味しそう。


「神に祝福を、糧に感謝を」


 うぅ〜ん、美味しい! ミレイアのご家族めちゃくちゃパン作るの上手い。これは大量に買ってアイテムボックスに仕舞っておきたい。


「ちょっとそこ! 何でもう食べてるの!?」

「ん? お腹空いたから、先に食べてようかなーって」

「今重要な話をしてたよね!?」

「でも後はミレイアがどう感じるかだから。俺としてはミレイアは信頼できると思ってるし仲間だから話したんだ。でももしミレイアがこの話を聞いて、こんなに得体の知れない人と一緒にいたくないって思ったら、パーティーに入るのは止めても良いよ。……無理強いはしたくないから」


 仲間になってもらいたい人を見つけて、その人が信頼できるか見極めて、さらに仲間になってもらえるってなったら俺の能力を明かして、その上でそれを受け入れて一緒にいてくれる人じゃないといけないんだよな……俺の仲間集めの難易度が高い。

 

 ミレイアを見てみると、ちょっと不機嫌そうな顔をしていた。


「もうっ、そんなにすぐ止めたって言うほど軽い気持ちで仲間になるって言ったんじゃないからね! 確かにトーゴは普通と違っておかしいけど、悪い人じゃないのは分かるし、一緒にいたくないって思うことはないよ」

「本当……?」

「私は嘘なんかつかないでしょ!」


 そう言って少しだけ不機嫌そうにしながらも俺の隣に腰を下ろしたミレイアを見つめ、俺は胸の奥の方が少しだけ温かくなるのを感じた。隠し事のない素の自分の近くにいてくれる人がいるのって、予想以上に嬉しいし安心するんだなぁ。


「ミレイアありがとう」


 俺はその気持ちのままに、ミレイアの顔を覗き込んでそうお礼を言った。するとミレイアの顔がどんどん赤くなっていく。


「……照れてる?」

「そ、そ、そんなことないから! は、早く私にもパンをちょうだい!」

「ははっ、分かったよ」


 そうしてミレイアも一緒にパンを食べ始めてしばらくすると、またミレイアが口を開いた。


「トーゴはさっき他にも規格外なことがあるって言ってたけど……それも教えてくれるの?」

「うん。別に教えるのは構わないけど……そんなに一気に聞いて大丈夫?」

「私は大丈夫だよ。というかそれよりも、トーゴこそこんな簡単に私に話してもいいの? 私が悪い人だったらどうするつもりだったの?」

「ふふっ……心配してくれてるんだ」

「なっ、別に……まあちょっと心配してるけど」


 その言葉にまた心が温かくなる。心配してくれる人がいるのも幸せなことだ。


「ありがとう。でもそれは大丈夫だよ。俺は信頼できる人でなおかつ仲間にしか話さないから」

「私が信頼できるかなんて、わからないでしょ」

「うーん、でもミレイアは大丈夫って思ったんだ。信頼できるかできないかって、意外と会って話せばすぐにわかるものじゃない?」

「確かにそうなのかな……?」

「うん。それに俺は相手の好意が分かる能力があるんだ」


 そう言ってマップを頭の中ではなく、俺達の前に画面として表示した。するとミレイアは相当驚いたようで凄い勢いで後ろに後ずさる。

 やっぱりこうすると他の人にも見えるんだ。

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