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108、顔合わせ

 次の日の朝。

 俺達は不安に感じながらも、いつも通りを装って冒険者ギルドに向かった。ギルド内に入るとすぐに受付のモニカさんに声を掛けられて、応接室に案内される。


「先ほどロドリゴさんも、ちょうどお着きになられたところです。光の桜華の皆さんと情報交換をされるとか。本当にロドリゴさんは素敵なお方ですよね〜」


 モニカさんはそう言って、うっとりとした笑みを浮かべた。ロドリゴさんは受付の人達にまでそんな認識なのか……これは明確な証拠でもないと疑ってるなんて言えないな。


 ミレイアとウィリーも俺と同じようなことを考えたのか、微妙な笑みを浮かべてモニカさんに対応している。


「光の桜華の皆さんをお連れしました」


 モニカさんが扉をノックしてそう声をかけると、中からすぐに扉が開かれた。開いたのは……ロドリゴさんだ。


「待っていたよ。いらっしゃい。モニカさんも案内をありがとう」

「いえいえ、仕事ですから当然です!」


 ロドリゴさんの微笑みにモニカさんは顔を赤くして慌てている。もうさながらアイドルだな。


「ロドリゴさん、お久しぶりです。またお会いできて嬉しいです」


 モニカさんとは別れて応接室の中に入った俺達は、ビクトルさんに席を勧められてソファーに腰掛けた。ビクトルさんの向かいに俺達が座って、テーブルの横に置かれていた一人用のソファーにロドリゴさんの構図だ。


「俺のことを覚えてくれていたのか?」

「それはもちろん。この街で有名な方ですから。前に声を掛けてもらってから、宿屋で話を聞いて驚きました」


 俺は不自然にならないように、俺達がロドリゴさんを疑ってるなんて微塵も感じられないよう、最大限に注意して話を進めていく。


「なんだ、既に面識があったのか?」

「いえ、面識というほどではないのですが、前に声を掛けてもらったことがありました」

「そうだったのか。それなら話は早いな。ロドリゴも光の桜華のことは知ってるんだろ?」

「もちろん知ってますよ。何せかなり有望な冒険者だって話ですから。あの後も君達の噂は聞いたぞ」


 そう言って俺達に向かって笑みを浮かべるロドリゴさんの表情に……なんとなく暗いものがあるようなないような。ダメだ、一度疑い出すとなんでも黒に見えてしまう。


「良い噂ならいいのですが」

「もちろんだ。この街のこれからを背負って立つだとか言われてるぞ。そのうちエレハルデ男爵様からもお声がかかるんじゃないのか?」


 ……え、マジか。それは嫌だな。できる限り貴族には目をつけられずに穏便に過ごしたい。まあ近いうちにそれは無理になることは分かってるんだけど、まださすがに早いだろう。


「いえいえ、俺達はそんなに凄いものじゃないですよ」


 それからも最高に居心地の悪い雰囲気の中でロドリゴさんとビクトルさんと雑談を交わし、数分後にやっと本題に入ることになった。


「それで今日集まってもらった理由はもう知っていると思うが、初心者狩りについてだ」

「ええ、俺も初心者狩りには心を痛めていました……やっと捕まえることができるかと思うと嬉しいです。トーゴ、ミレイア、ウィリー、よろしく頼むな」

「はい。私達も狙われる危険性が高いようなので、こうして捕まえられることは嬉しいです。全力を尽くそうと思います」


 俺のその言葉を聞いたロドリゴさんは、特に大きな反応を示さずに頷くだけだ。さっきからロドリゴさんの様子を見てるけど、疑いすぎなければ特に怪しいところはないんだよな……やっぱり初心者狩りとは関係ないのだろうか。


 何か別のことで俺に良い感情を持ってないって可能性もあるよな。マップは便利だけど、その色になってる理由までは分からないところが大変だ。


「作戦の内容だが、囮役はミレイアが引き受けてくれることになっている。それで良いな?」

「はい、構いません。トーゴ達とも話し合ったのですが、相手に不自然だと思われないためにも昼間は普通にダンジョンに行って、ダンジョンから戻って夕方に私が事前に決めてあるルートを、買い物を装いながら歩こうかなと思っています。それで良いでしょうか?」

「ああ、確かにその方が良いな。歩くのはどのルートにする?」


 ビクトルさんが棚から街の地図を引っ張り出してきて机に広げ、ミレイアが大体の位置を示した。


「この辺りはどうでしょうか? 私達の宿がこっち方面にあるので、不自然ではないと思います」

「分かった。では見張りが隠れることも考えると……この通りが良いな」

「確かこの建物は、ギルド所有でしたか?」

「そうだ。だから中から見張りをすることができる」


 ロドリゴさんはそんな情報も知ってるのか。これはこの人がもし犯人だった場合、ギルドへの打撃は相当のものだろう。


「俺は街の人達に顔が割れてるから、基本的には建物の中から見張ろう」

「俺はギルドのマスターだがほとんど顔は知られてないし、ミレイアを後ろからさりげなく追いかけるぞ」


 そうしてそれぞれが役割分担を決めて、作戦の内容は決まった。後は今日から作戦通りの動きを毎日繰り返すだけだ。


「じゃあまだ時間も早いですし、俺達はいつも通りにダンジョンへ行きますね」

「分かった。お前達がダンジョンからギルドに戻ってきて、次にギルドを出た時が作戦決行の時にしよう」

「了解です」


 そうして話し合いを終えた俺達は、ビクトルさんとロドリゴさんに軽く頭を下げて、応接室を後にした。

 これで問題なく初心者狩りが捕まえられたら良いんだけど……こちらから仕掛けているはずなのになぜか感じる不安には目を瞑って、俺は作戦の成功を願った。

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