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闇の魔法と戦争と

 シルヴィアくんが割り出したというその場所について聞いた時に、ツルギくんが声を上げた。


「そこか」

「ムラマサくん、知ってるのかい?」

「うむ。魔獣被害の多い地帯の森だ。定期的な被害あるので便利屋などで定期的に呼び出される地域の一つだ。魔獣を操れるのであれば、その住処の奥に拠点を置くのは当然か。便利屋の活動地だからこそ物の流れも多く違和感を感じ取れなかったのだろう」


 そう言われて全員納得をする。

 学園裏の森ですら浄化は不可能だと割り切って管理しているのだ。踏み込んでくる人間もいないのであればそこに拠点を構えるのは当然だろう。そして、定期的に魔獣が襲ってくれば便利屋がやってくる。それと一緒に流通も起こる。自然と物も増えていく。


「そこの村長と顔繋ぎは出来る。それに、何度か行った時に地元の猟師と会話をして色々な抜け道を聞いているので多少はスムーズに動けるだろう」

「おお、助かるよ!」


 以前に地味に便利屋として登録をしているといっていたが、それがここで役に立つとは。

 意外な積み重ねが繋がってくるのは嬉しい。今までが無駄ではなかったと言ってくれるようだ。


「ならムラマサくん、君の先導に任せる。どの程度行くのに時間がかかるかな?」

「ふむ、全力で馬を使って三時間と行ったところだ」


 三時間か……なかなか遠いな。

 そう思っていると、何故かウキウキとした表情を浮かべるシルヴィアくんが声を上げる。


「なら大丈夫だ。最近用意した新しい魔道具があるんだよ」

「魔道具?」

「そう、運搬に関して特化した魔道具なんだ。まだ一般に流通はしてないけどね。ムラマサくんには案内をお願いできるかな?」

「構わんが……」


 そう言って笑みを浮かべるシルヴィアくんに連れられて、部屋を出ていくのだった。



 そうして、魔道具によってあっという間に問題の村にやってきたが……


「……もう、無理だ……」

「げほっ……あの馬鹿……ぶっ殺すぞ」

「あう……」


 死屍累々だった。一緒についてきた連絡係の人間はぶっ倒れている。

 レイカ様ですらちょっと頭痛がしているし、隣で案内をしていたツルギくんですら意識が飛びそうになっている。吐いてないだけマシだ。元気なのはシルヴィアくんだけという惨状。


「いやあ、早いね! 一時間で到着するなんて!」

「……何、あれ」

「魔導馬車っていう道具でね。魔石を使って魔力を動力に動く馬車なんだ。魔力だけをエネルギーにして動くし、使い手次第では延々と走り続けられて速度もドンドン上がっていく。まだ魔石の消費量とか課題は多いけど、凄い技術だよね!」


 キラキラとした表情で語るシルヴィアくんだが、周囲の惨状に気づいてほしい。数人はキラキラとした物を口から吐いてしまったぞ。

 シルヴィアくんがハンドルを握った時にキャラが豹変するとは思わなかった。ロウガくんがボソリと呟く。


「もう、二度と乗りたくねえ……」

「……でも、帰りもこれに乗るしかないわ」


 始まる前だと言うのに全員の顔が暗くなる。

 ゲームでは出てこなかったが……まあ、色々と没になった設定が出てきたのか……とはいえ、最高速度で二時間以上も早く到着したのは何よりだ。

 まあ、この件が終わったら二度とハンドルを握らないように言われるだろうが。


「シルヴィア、五分程度、休憩させなさい……」

「ん? ああ、了解。ならここの人に挨拶をしたいんだけどツルギくんは来れる?」

「……む、行こう……」


 隣で必死に案内をしながら一番ダメージを受けていたツルギくんだが、素直にフラフラとしながら付いていく。

 ……流石に同情してしまう。またねぎらってあげようと心に誓うのだった。



 挨拶もそこそこに終わったらしく、休んで何とか体調の回復した全員で森へと踏み込んでいく。後ろには連絡員も付いてきている。

 鬱蒼と茂る森の中、まるで道を予め知っているかのようにスルスルと歩いていくツルギくん。その足取りは森を歩くのに慣れたものだ。


「よくわかるわね」

「一年以上森に籠もっていたのでな。ある程度は歩き方も心得ている。細かな差異があるが、基本は同じだ。魔獣も獣も同じルールがある。ある程度予兆も見えるものだ」


 サラッと言うツルギくんに対して、もうコイツは貴族とか剣士じゃなくてマタギでは……? そんな風に全員が同じ感想を抱く。

 しかし、そんな感想に気づくことはなくツルギくんはドンドンと進んでいき……あっさりと辿り着いた。


「あそこだな……ふむ、自然にできた鍾乳洞か」

「不自然に魔獣が徘徊しているわね……誰が行く?」


 十数匹程が集団となって周囲を練り歩いている。

 レイカ様の質問にヒカリちゃんとシルヴィアくんが立ち上がる。


「なら、私がすぐに倒してきます!」

「そうだね。僕とノセージョさんなら魔獣相手くらい問題ないよ」

「なら任せるわ」


 その言葉に走っていく二人。

 魔獣は、すぐさまに感知して二人を襲いに飛びかかっていく。


「はっ!」

「そらっ!」


 的確に飛びかかってきた魔獣の胴を両断するヒカリちゃん。そのまま、返す刀でもう一匹も始末する。

 そしてシルヴィアくんも一突きをして内部から光魔法で崩壊させ、そのままの動きで次の魔獣を狙う。ダンジョンに潜り続けて魔獣を数え切れないくらい倒してきた成果が出ている。


「す、凄い……」

「これなら……」


 背後の連絡員がその光景を見て感嘆の声を上げる。一般人……いや、一般的な貴族から見ても規格外だろうしな。

 そして、物の数分で二人は魔獣を全て崩壊させた。浄化の必要はない。始祖魔法を使って倒したことで汚染も除去されている。


「さて、行こうか。とはいえ、魔獣が死んだことで感知される危険性はあるけどね」

「そうね。すぐに行きましょう」


 そのまま俺たちは鍾乳洞へと踏み込んでいった。



 ――鍾乳洞の中はきちんと整備をされて明るく歩きやすい。

 そして何よりも、周囲の壁が魔石化し始めている。魔石の発生する理由は時間の経過と魔力に晒されること。それを見てここに居るという確信を持つ。


「ここで魔法が使われている事は確かね」

「そうだね。まあ加工してないから使い物にはならないだろうけど……おや」


 誰かの足音が聞こえてくる。

 その途端、カイトくんが足音も無く飛びかかっていく。


「なっ!? ぐ、む……!?」

「拘束したぞ」


 カイトくんのあまりの手際の良さにちょっとビビる。

 しかし、油断をしている相手のメンバーを捕まえたことは幸運だ。捕まった男はこちらを見て動揺した視線を浮かべている。


「さて、尋問は出来るかしらね」

「……ふむ、難しいだろうな。ここに居る以上は吐かないだろう」

「そうでしょうね」


 剣を抜くと動揺して首を横に振る男。


「カイト」

「うむ」


 その瞬間に首を絞めて気絶させる。

 油断をして首を晒していた男はあっさりと気絶した。


「まだ人であるなら生きて償わせるわ。それに、相手のいる場所は分かったもの」

「わ、分かったんですか?」


 後ろの連絡員が小声で効く。


「ええ、脅しをかけた時に助けを求めるように視線を動かしたの。そちらの方向に仲間がいるはずよ」

「……おい、お前気づいたか?」

「い、いや、全然……」


 連絡員二人はそんな風にいって畏怖の視線でこちらを見る。まあ、スラム関係で色々と覚えたからな……

 そしてそちらへ足音を殺して向かうと、数人の男たちが魔石を確認している。


「……ふむ、相手に騒がれる前に倒せるか?」

「そうね、カイトと私と……ロウガは出来る?」

「おう。んじゃ行くか」


 そして気づかれる前に俺達三人は飛び込んでいき、油断をしていた闇魔法使いの連中を無力化していく。その光景を見た連絡員がボソッと呟いた。


「……王選候補だったよな……? あの人達……」


 ……面と向かって聞かれたらちょっと答えづらいなぁ、それ。

ペースを取り戻すためにいつもよりも早い初投稿です


そして三ヶ月毎日初投稿になりました。3500ポイント超えとたくさん見てもらい、評価も貰って本当にありがとうございます

最終章も頑張っていきますので、ぜひ応援していただければと思います

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― 新着の感想 ―
[良い点] いえ、最近は割と後手に回ったけど、この位で瞬殺出来なかったらこそ王選候補に相応しくないだと思います(笑)
[一言] シルヴィア君にドライバーズハイ属性があったとは いずれ峠とか攻めだしそう 王選レースは演説成功させたレイカ様が圧倒的にリードしてそうだけど 始祖魔法使えないハンデ考えたらこれで並んだくらい…
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