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原作に戻ってこれそうです

 剣舞会について説明しよう! 参加者は64人の3日に分けられて行われる学園の一大イベントだ。成績が一定以上ではないと参加資格すら貰えないイベントでもある。ゲームでも剣舞会参加のために能力値上げが必要なポイントで、コミュに集中しすぎて剣舞会参加のためにデスマーチをさせるプレイヤーが多数居たりする地獄のような期間である。


(懐かしいなぁ……「夜に寝るな」「授業をサボって訓練しろ」「ツルギくんを見習え。あいつは24時間修行してるぞ」とか言われる時期……)


 おっと、話がずれた。さて、「プリンセス・ブレイド」の世界はそのタイトル名の通り剣が重要な意味を持っている。魔法を使うためには、剣や杖などの道具を使わないと駄目なのだが、この国では剣をメイン触媒にしていて国のシンボルにもなっている。その剣の名を冠するイベントなので当然ながら大きい意味を持つわけだ。

 剣舞会の優勝者は、少なくともその後に授業に参加をしなくても卒業してポストが約束されたも当然であるくらいに評価が上がり、様々な特権を貰えたりコネクションを繋げられるのだ。

 それがなくても、ここで上位になるだけで他の生徒から尊敬されて学校の内外でも話題になり貴族の関係構築に役立つ。


(まあ、いうなら実力のお披露目会だからなぁ)


 そんな催しで4位になれなければ退学……なんてハードなんだと思われるかもしれないが、実は初日を突破すればヒカリちゃんは許されたりする。まあ、それがレイカ様ロウガくん敗北事件なわけだ。そのショックでレイカ様は力を求める様になる展開は、ドキドキしたものだ。詳しくは剣舞会のときにでも復習しておこう。


(さてと……剣舞会の参加者ってどうだったけなぁ)


 自室で日記を開いて確認。

 うーん、イベント進行具合で変わるんだよな……まあ、今のヒカリちゃんの進行具合だと一番無難なルートだと思えばいいか。その場合は参加者はロウガくんにシルヴィアくんか。一年の王子様候補キャラクターも参加するかな? そこが不明なくらいか。

 こういうのだと、剣の技術を鍛えている武人なツルギくんも参加しそうだと思うが、悲しいが留年が確定してる。おまけに一応立場が3年生なので参加できない。そして本人も山から降りてこない。本当に何をやってんだツルギくん。


「……剣舞会は今から一ヶ月後。私もある程度は腕を磨いておかないともしかしたら……があるかもしれないわね」


 胡座をかいてイベント戦の前に負けるわけには行かないからな。最初の重要イベント、完璧にやってみせる。

 よし、がんばるぞ! と自分を鼓舞しながらトレーニングメニューを考えるのだった。



 と、そんな風に決意を新たにして学校に行くと、その瞬間に目の前に気の強そうな男の子が颯爽と現れて立ちはだかる。


「お前がアクレージョだな!」


 ……え? なんで君がここにいるの? とても見覚えのある顔だが、ここで出会うと思ってもいなかった。

 突然の出来事に意表をつかれるが、ここは冷静に対応だ。


「ええ、そうよ。……貴方はご高名なオウドー家のご子息ね」

「ふん、物くらいは知っているようだな。カイト・オウドーだ」


 名乗った通り、この子はカイト・オウドーくん。ヒカリちゃんの同級生であり王子様候補の攻略キャラで、これまた人気キャラクターだ。

 具体的に言うと同級生ポジションのライバルキャラであり、突っかかる生意気な弟みたいな存在である。最初はツンツンしてるが、仲良くなると心を開いて懐いてくれる真っ直ぐなキャラ……まあ、そういう感じの王子様だ。

 ヒカリちゃんに何かと競ってくる男の子で、その可愛い行動と負けを認める意外な素直さから「この子は同い年の弟」「同い年のショタ」「半ズボンを履いてほしい」とブレファンの闇を深くした罪深いキャラである。


「それで、何かしら? オウドー家のご子息といっても、いきなり不躾だと思うのだけれども」


 うん、まずこの子はヒカリちゃんに得意分野で負けて突っかかってくる感じのキャラのはずだ。

 なので、レイカ様はこの子と関わりはないはずなんだけど……


「アクレージョよ! 剣舞会で、お前に決闘を申し込む!」

「は?」


 呆気に取られる。えっ、なにそれ? 決闘?


「学友の女子から、お前の悪評と所業を相談された。一方的な断罪に脅迫。許しがたい所業だ! 元より貴様の聞こえてくる横暴は目に余る!」

「……ああ、なるほどね」


 あー、片方の意見だけ聞いて正義感に走っちゃったかぁ……

 まあ、あの女子たち本来なら王子様候補に怒られるけど、そうだよね。同性の悪役令嬢なレイカ様に詰められたら他の王子様候補に頼る判断するよね。うわー、マジかぁ……そういう風になっちゃうんだ。


「羨ましいくらいに素直なのね、オウドー家のご子息というのは。次期当主がこれなら、先が楽しみね」

「ふん、褒めてご機嫌取りか? だが、貴様のような卑劣漢に家名を呼ばれては品位が落ちる! カイトでいい!」

(だよねぇ~、皮肉通じないよねぇ~。ちょっとおバカな部分あるんだよなぁ~)


 まあ、正義感で視野狭窄なんだよなぁ……カイトくん。裏付け取らずに許せねぇ~! で喧嘩を売りに来る。まさにカイトくんって感じだ。

 しかし、レイカ様の噂を知っていれば、悪評も納得だな。まあこれは俺の推しが悪役令嬢なので仕方ない。むしろ有名税だしめっちゃ嬉しい! 悪役令嬢できてる確認も出来たわけだし!


「それで? 決闘をするのはいいけども勝ったら?」

「オレが勝った暁には女子生徒の修道院行きを撤回。そして、アクレージョよ! お前が今まで泣かせてきた貴族たちに謝罪をしろ!」


 うわー、良い子だなぁ。バカだけど……真っ直ぐすぎるんだよね本当に。まあ一年だし箱入りお坊ちゃまだから仕方ないんだけど。

 普通の貴族なら放免とか、もっとえげつない条件つけるのになぁ。


「それで、私が受けるメリットは?」

「敵前逃亡をするのか? ふっ、成り上がり貴族とあろうものが、臆病なことだな!」


 カッチーン。はい、レイカ様をバカにしたな。俺は攻略キャラでも容赦はしねえぞ。推しをバカにしたものは万死に値する。とはいえ、本当にぶっ殺したら展開に問題があるので泣かせる程度にするが。


「――そこまでいうのなら、当然受けて立つわ。でも、後悔しないことね。オウドー家の子息が泣いてしまう姿を衆目に晒してしまうのだから」

「ふっ、強がりか? 今から泣いて謝ってもいいのだぞ?」

「あら、こちらこそオウドー家が負け犬になる姿を見られると思うと楽しみだわ」

「……言っていろ! 覚悟しておけよ!」


 そう言って言うことは言ったぞと去っていくカイトくん。


(……いや、見事にカイトくんって感じだなぁ。そういえば、個別ルートで騙されて先物買いで大損するイベントもあったっけ)


 泣き顔に興奮して闇に落ちた同性のブレファンを思い出し……いや、今はいいか。しかし、王子様候補と決闘とか、なんでこうなったんだ……

 いや、俺がレイカ様に対する煽り耐性がクソ低いのが一つの原因だとは分かっている。でも無理だよ……推しなんだよ……ここで喧嘩を買わなきゃレイカ様の狂信者が廃る。

 しかし、カイトくんが参戦か。原作でもたまに参加してるパターンはあるけどまず上位に上がってこれてちゃんと戦えるのかな……? お互いにどっかで負けて企画倒れになったらどうするんだろう。まあストーリー的な都合で大丈夫だろう! 多分!


(まあ不慮の事故はあったけど……問題のヒカリちゃんは姿が見えないな。まあ釘を差したし、流石に来ないか)


 来ないよな? ……まあ来ないとして。

 ちゃんと能力値を上げている事は感心だ。出来れば王子様候補と仲良くなってくれると嬉しいが、まあそこまで求めなくても今回の剣舞会で初日を抜けてくれたら万歳だろう。


(まあ、俺は普通に普段やってる能力値上げとかすればいいか。あとはロウガくんとシルヴィアくんに一応参加するか確認とっておこう)


 まあそのくらいはいいよね? ルート的に問題はないだろうし……というか、王子様候補の二年生が参加するかどうかが重要なんだよな。色々と展開に関わるし

 悪役令嬢は忙し……なんだろう。こまめな確認とか進歩チェックしてるせいで、イメージしてた悪役令嬢と違うんだよなぁ……中間管理職みたい……



「あ? 当然参加するに決まってんだろ。キシドー家の人間が参加しねえなんてありえねえ」

「そうよね。答えてくれてありがとう。それじゃあね」


 ロウガくん参加と。よし、次はシルヴィアくんに確認を……


「おい待てよ!」

「あら、何かしら? あまり暇ではないのだけども」

「聞いたぜ。一年のオウドー家に喧嘩を売られたんだってな」

「そうね。勘違いで噛み付いてきたわ」


 その言葉に楽しそうに笑うロウガくん。


「くはは! アクレージョに決闘を申し込むだなんて蛮勇だな。今年の一年はおもしれえ。まあ一年坊だし、物を知らねえのも仕方ねえが」

「こちらは迷惑をしているけどもね」

「はは、そうだろうな。まあ、俺もちょっと小耳に挟んだが……あの、一年にいる遺言で入学してきた嬢ちゃんが原因だろ?」

「……あら、知ってるのね」

「当然だろ? 鳴り物入りで入学してきた嬢ちゃんだ。流石に調べくらいはしてる」


 名前呼びではない。つまり、ロウガくんルートには入ってないのか。

 だって、あの嬢ちゃんとかロウガくん言わないもん。ゲームでちゃんと名前で呼び捨てにしてたし。だから交流してたらヒカリって呼んでるはずだ。

 なら誰ルートになるかなぁ。シルヴィアくんルートだと難易度高いから大変だぞ。


「それと……お前にやけに懐いてることもな。仲のいいことじゃねえか」

「仲なんて良くないわ。勝手に寄ってくるだけよ」

「まあ、そういうことにしといてやるよ」


 そう言って訳知り顔で頷く。えっ、何? それ有名なの? 何分かってるよみたいな表情してるんだロウガくん。お前はちゃんと攻略対象キャラの自覚を持て。

 ……まあいい。ここでちゃんと原作再現をすればちゃんと正しいルートに戻れるはずだし。


「それだけかしら?」

「まあ、そこが聞きたかった。なにせ、オウドーにシルヴィアの野郎がわざわざ自分の枠を譲ったからな。むしろ気にしないほうがおかしいだろう?」

「……シルヴィア様が?」

「ああ。だから今回は剣舞会の運営に専念するとよ。ある程度は内定している参加者も多いが、シルヴィアの不在で参加希望者が増えるってことだとよ」

「現金なものね」

「まったくだ」


 ……そうかぁ。シルヴィアくんが参加しないパターンはあるけど、譲って不参加なんだ……というか譲れるんだ、参加枠。


「そして、一年の嬢ちゃんも相当にやると聞いている。知っているか? 模擬戦闘の授業で男女含めて全員ぶっ倒して、先生から一本取ったとよ。今回の剣舞会は盛り上がると評判だぜ。この子も内定だ」

「あら、そうなの」

「はは、目をかけてるから驚かねえってか?」


 ……えっ? そうなの!? 一本取ったの!? めっちゃ驚いてるよ!? というか、ヒカリちゃんも内定するんだ!?

 というのも、この学園の授業パートの模擬戦闘で戦う教師、ぶっちゃけ相当に能力値を上げて運ゲーを超えないと勝てないレベルで強いのだ。なんでも、元々は王宮の護衛隊として働いていたとかなんとか。ゲームの方でも勝ったら内定してたのかな……


「余裕そうだな。ま、シルヴィアの野郎はいねえが例年にないほどにレベルの高い剣舞会になるだろうさ。お前と戦えることを楽しみにしてるぜ」

「あら、もう勝ち上がった気分かしら?」

「当然だろう? お前も俺も、上で戦う事になる。そういう予感がしてるんだ」


 そう言ってロウガくんスマイル。うーん、絵になるなぁ……CGにして俺に見せてほしい。


「まあ、それもそうね。貴方もせいぜい頑張ることね」

「……それと、私も参加します」


 と、割り込むようにフラっとレイジくんが現れる。えっ、そうなの? 一応従者も参加できるけど、なんでレイジくんが? 原作で戦闘シーン見たこと無いから正直ワクワクするんだけど。


「あら、飼い犬が参加なんて珍しいわね」

「これも、最近の貴様のロウガ様……いや、キシドー家への不敬が目に余るからだ。剣舞会では止めるものは居ない。貴様の不敬に対する処罰をしてやる」

「悪いな。流石にレイジを止めるつもりはねえ。胸を貸してやってくれ」

「迷惑だけど、挑んでくるなら叩き潰すだけよ」


 えっと、つまりレイカ様が悪役令嬢ムーブしてロウガくんに失礼なことをしてることにレイジくんは怒ってるけど、止められるから合法的な手段でぶっ倒してやるってこと?

 ……くぅ~! こういうのだよこういうの! 悪役令嬢に対して合法的な手段で挑んできてレイカ様がそれを返り討ち! こういうのがレイカ様の悪役令嬢ムーブなんだよ! 作中でもぶっちゃけ一番ヒカリちゃんが苦戦するレイカ様だから王子様候補以外に負けるわけには行かない! 燃えるな!


「では、失礼するわ」

「おう。楽しみにしてるぜ」

「首を洗って待っていることだな」


 それぞれの別れの挨拶をして、歩き始めて気づいた。

 ……シルヴィアくんが参加するか聞くだけだから、もう用事終わってるじゃん……

スイーツパラダイスに行く予定ができたので初投稿です

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