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三年と次なるボスと秘密

 さて、先日のケロベロスを倒した後にカイトくんとメアリちゃんが地上に運んでくれた。

 俺はある程度は無理をしたが普通に治ったので起き上がって元気になったが、ヒカリちゃんは今も寝ている。意識はあるが、とてつもないほどの魔力を消費した事が原因だ。

 それだけあの魔獣は強かった。エンドコンテンツは伊達じゃない。


「さて、今日はこのメンツでいくわ」

「……あの、レイカ様。さすがに休んだ方がいいのではないですか……?」


 そしてダンジョンの前でそう宣言をすると、メアリちゃんにそう言われる。


「休むも何も、十分に元気があるのだから問題はないわ」

「本当ですか? それに三人なのはどうなんですかね……あの魔獣を倒すのに四人でギリギリだったのに……」

「少なくとも、ダンジョンの構造的にあの魔獣よりも小型よ。だから、人数を減らしても十分だと判断したわ。それに、魔獣相手なら始祖魔法を高レベルで使える誰かがいれば十分に勝機はあるわ」

「……それで僕が呼ばれたわけですか……」


 さて、今回はメアリちゃんとホークくんだ。

 人数が減っているが、ぶっちゃけゲーム知識でケロベロスより下の階層は弱くなるのだ。

 正確に言えば、ケロベロスと違って癖がある特殊なボスになる。ゲームだと連続戦闘になるのでそういう仕様なのだろう。現実なら帰ってもいいのである意味ズルかもしれないが、もうゲームで知らないルートなので勘弁してもらおう。


「ヒカリさんは大丈夫なのですか?」

「魔力枯渇による疲労。少なくとも数日は安静にしろとのことね。とはいえ、しっかりと休めば問題ないそうよ」

「そうですか……それで、アクレージョさんは何故そんなに元気なんですか……?」

「無茶をするのに慣れているからよ」


 そう答えておく。根気というか、「一番好きなゲーム世界に推しの姿とはいえいるからモチベーションが尽きない」というのが理由だったりする。

 ただでさえ優秀で体力のあるレイカ様の体で昔からこの世界で完璧なレイカ様をしようと突っ走ったら体力がとんでもないことになったのだろう。


「そう、ですか……本当に人ですかね? 新手の魔獣とかじゃないですよね、アクレージョさん」

「失礼ね」

「どこを見て魔獣扱いしてんだ! レイカ様は……レイカ様は常識を超えた人ですから! あたしもそれを理解しました!」


 メアリちゃんが擁護をしきれずにそんな風に言う。

 いや、一年でドンドン年上を追い抜いていく始祖魔法使いというチートに比べたら常識的だと思うんだけどなぁ……


「……まあいいわ。行くとしましょう」

「分かりました。まあ、止めても行くんでしょうし」


 ここに味方は居ないので、さっさと出発しよう。

 そのまま、ケロベロスを倒した階層へと歩いていくのだった。



「しかし、頭が三つもある犬型の魔獣ですか……興味がありますね。こういった閉鎖された空間では魔獣も変わった進化をするのですね。地上の魔獣ですらその生体には謎が多いのに、こうした閉鎖空間で通常と違う進化をするのはまるで生き物みたいですね」


 興味深そうにケロベロスを倒した話を聞いてそう答えるホークくん。元々、学者気質なところがあるのでこういう話はワクワクするようだ。


「そうね。大型魔獣を捕食するためにそういう姿になったのではないかと思うのだけども」

「なるほど……たしかにありえそうですね」


 そんな風に話をしながら、ケロベロスのいた階層にたどり着く。

 そこにはまだケロベロスの残骸が残っている。あまりにも巨大なので浄化は後日やろうということになっている。


「……レイカ様、あの死骸以外に他の魔獣は居ないんですね。ここにはもうあの魔獣が居ないのに」

「間引いているから少ないのもあるでしょうけど、あの魔獣の死骸のせいでしょうね。いずれ汚染されたら湧いてくるんじゃないかしら」


 そんな話をしている横で、ホークくんは周囲を見渡し色々と考察をしている。


「……やはりダンジョンは魔力を含んでいる鉱石などが大量にある地下に出来るみたいですね。周囲に魔力が充満しているところを狙った魔獣が徐々に汚染を広げて出来る……? ううん、平和になったら学者を連れて色々と調べたいですね」

「そうね、その時には護衛くらいはしてあげるわ」


 そんな風に雑談をしながら、次の階層へと足を踏み入れる。

 三十二階層へと踏み入る。そこは、先程の階層よりも天井が高くなっている。そして……


「……なるほど、あれが特殊な進化をした魔獣……」

「今度は空を飛んでいるのね」


 その上空にこの部屋を旋回する影がある。

 一見すると真っ黒な鳥のように見えるが、ゲームで知っている。あれは朱雀らしい。黒いと鳥系の魔獣は見分けがつかないんだよなぁ……

 とりあえずは、相手の確認だ。


「メアリ、行くわよ」

「はい!」

「あ、ちょっと二人とも!?」


 止めるホークくんを無視して突撃。こちらに気づいた朱雀は上空を旋回しながら自分の羽のようなものをポロポロと落とす。

 落下してきた羽を回避。その羽が地面に触れると突如として形を変える。


「……なるほど、こうなるのね」

「レイカ様! これは……!」


 羽が小さな雛に変化する。そして、その雛がこちらに向かって襲いかかってくる。


「撃退するわよ」

「はい!」


 雛を剣を振るって切り払う。強さとしては……見た目通り小型程度の強さか。あっさりと斬られて……そのまま震え始める。


「メアリ、下がるわ」

「えっ? あ、はい!」


 二人で飛び退くと……先程まで震えていた斬った雛が爆発した。思ったよりも爆発が早いな。

 戦法はある程度把握した。空を飛びながら魔獣を放ってくる。そして、落とした魔獣は攻撃をされると爆発すると。その間にも本体は優雅に空を飛びながら羽を落として増援を送ってくる。

 雛を魔法で牽制して爆発させながら戻ってきた俺たちに、ジトッとした目を向けるホークくん。


「……せめてもう少し観察をして突っ込むべきではないですか?」

「時間が惜しいわ。それに、戦わないとわからないことも多いもの。下手に先入観を持つよりも臨機応変に対応する方がいいでしょう?」

「はい! あたしもそう思います!」

「結果論じゃないですか!」


 まあ、実際はどういう魔獣が出てくるか知ってるしある程度は知識としてあるから突っ込んでる部分はあるんだけどね。

 今回、ホークくんを選んだ理由も実はちゃんと理由がある。


「それでホーク、あれを狙える?」

「はい? ……ああ、なるほど。僕の始祖魔法で撃ち落せということですか……運がいいと言うか、僕が居なかったらどうしてたんですかあの鳥」

「別の方法を考えるわ。一番簡単に倒せる方法を提案しているだけよ」


 固定砲台であるホークくんの有用活用というわけだ。

 ヒカリちゃんもシルヴィアくんも始祖魔法を使った遠距離攻撃は使えない。魔法に精通していて誰よりも得意としているホークくんだけがあの鳥を撃ち落とすのに向いているわけだ。


「出来ないことはないですが、少々準備に時間がかかりますよ。その間に、あの小さい魔獣に襲われたら少なくとも撃つことは出来ませんし」

「つまり、あの雛から守れということね」

「そうですね」


 手段がなければ狙えず、延々と爆撃をしてくるボスではあるがホークくんがいれば勝てるだろう。

 ちなみにゲームでは、特定の攻撃しか通じないおまけに倒されるたびに復活する雑魚を連れてるボスだった。現実でやられると結構ムカつく戦法だな。


「とりあえずは、時間を稼ぐわよメアリ」

「はい! 任せてくださいレイカ様!」


 ホークくんは魔法を打つ準備に入る。そして、二人で落ちてくる雛から守るために立ち回り始めるのだった。



「――『刺突の閃光』」


 ホークくんの言葉とともに、剣から細い光が放たれて空を飛ぶ朱雀の羽を貫く。一部が削れて空から落下していく。

 こうしてみると……完全にビームだな。一人だけ世界観の違う戦い方をしている。


「当たりましたが、少し羽が削れただけですね」

「そう。魔法はまだ使えるかしら?」

「準備がかかる分、消耗はそこまでではありませんよ。あの鳥を落としきるまでは十分に」


 心強い言葉だ。しかし、ニヤリと笑うホークくんと対象的にメアリちゃんの様子がおかしい。

 息を荒げ、相当に辛そうにしている。


「はぁ……はぁ……」

「メアリ」

「だ、大丈夫です……!」


 何も言っていないレイカ様にそういうメアリちゃん。

 そんなメアリちゃんに、ホークくんが声をかける。


「……僕は後ろで見ていましたが、何故魔法を使わないのですか? 最初こそ魔道具を使って倒してましたが、魔道具が切れてからはわざわざ爆発を掻い潜りながら直接倒している。アクレージョさんのように魔法を使って安全な位置で戦うべきでしょう」

「それは……」

「数発、爆発を避けきれていないはずです」

「見せてみなさい」


 ホークくんを睨みつけていたメアリちゃんだが、レイカ様にそう言われると申し訳無さそうな表情で腕を見せる。

 爆発を食らったせいか、汚染されている。以前カイトくんが魔獣にやられた時のように、激痛と虚脱感が襲っているはずだ。


「……この傷だと、これ以上は難しいわね」

「い、いけます……! この程度、どうとでも……!」

「無理ですよ。その傷で無理をしても邪魔になるだけです」


 その言葉に涙目になるメアリちゃん。自分でも無理があるとわかっているのだろう。


「後ろから魔法を使ってアクレージョさんの援護をするべきでしょう。得意じゃないかもしれませんが、その程度は……」

「……ない」

「……ん?」


 メアリちゃんは悲痛な声で叫ぶ。


「使えないんだよ! あたしは、魔法が!」

「……は?」


 呆気にとられた表情のホークくん。メアリちゃんがひたすら隠してきた秘密だった。

 ……ただ、ごめんね。ゲームで知ってた。

メアリちゃんは魔法が使えないから搦手とか魔道具をバンバン使っていたので初投稿です


次回説明は入りますが、魔力はありますし剣に通すことも出来ます。しかし、それを魔法として使えない感じですね

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― 新着の感想 ―
[一言] アクレージョ様、仲間キャラを均等に育てたいと言ったが、本人はでずっぱりな為に一番均等になっていない事を気付いていな……い訳はないか。 やはり一番優遇したいのが、アクレージョ様(の体)である…
[良い点] 作者さん、更新はお疲れ様です! ケロベロスはマジで手強かったですね、レイカさん達は死に掛けたぽい。死ぬほどに疲れるのは良いですけど、本当に死にそうなのはちょっと危ないですね。ハラハラします…
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