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三年と偶然の出会いと

 突然の出会いでお互いに困惑する。正体がバレるのはマズいと分かっているので、叫んだりはしなかったが。

 だが、このままメアリちゃんを放置するというのは出来ない。


「おや、知り合いで?」

「……そうね。少し待っていて貰える?」


 そう言って団長を待たせて、メアリに近寄る。

 メアリはというと、本来こんな場所で知っている人に出会うと思っていなかったこと。そして、その相手がレイカ様だったこと。2つの予想外が重なったせいか目を白黒させて混乱している。


「えっ、ええ……アクレージョ様……? な、なんでこんな場所に……!? い、いや、えっ? 他人の空似……!?」

「ちゃんとアクレージョよ。むしろ、こんな場所には私のセリフなのだけどもね」


 そういいつつも、原作の事を思い出して納得する。設定的にはメアリちゃん、ここに居てもおかしくないよね。

 レイカ様にそう言われてしどろもどろになる。


「え、えっと……あたしは……その……ぐ、偶然迷い込んじゃって……」

「下手な嘘なら言わないでいいわ。一つ答えなさい。貴方はこの店の関係者?」

「えっ、関係者……? あ、いえ、全然違います。普通に買い物に来ただけなので無関係です」


 そこは素直に否定する。嘘をついている様子もない。

 どうやら関係者ではないようだ。まあ、ここで関わりがあると言われると結構困るのでそこは安心した。


「なら悪いことは言わないからすぐに出ていきなさい。この店を叩き潰すから」

「えっ!?」


 驚くメアリちゃん。普段はちょっと目つき悪いのに、レイカ様と会話してる時は目がパッチリしてるので子供っぽい印象に変わるな……

 なんというか、ゲームの時もこんな感じの反応をしてたら人気出たんだろうな……と思う。


「すぐに終わらせるつもりよ。もし、買いたい物があるなら私の知っている店に……」

「この店を潰すの、あたしも一緒にやっていいですか!?」

「……何を言い出すの?」


 突然何を言い出すの? 思わぬ提案に素でそう聞いてしまった。

 しかし、戸惑っているレイカ様と対象的にメアリちゃんの表情はワクワクしていてやる気に満ち溢れている。


「この肉屋、割高のくせに質の悪い肉ばっかり出すんで結構ムカついていたんですよ。流石に客の立場でそれやるわけにもいかねえし、いつか貴族になったらこの店を潰してやろうかと考えてて丁度いい機会に……」

「……貴方、地が出てるわよ」


 その言葉に、マズいという表情をするメアリちゃん……多分、スラムに居ることで気が緩んでるっぽいな。


「あっ! い、いえ! 地とかじゃなくて……その、うっかりでるというか……で、でも付いていきたいのは本心で……!」

「別に説明はいいわ。邪魔になるなら追い出すだけよ。そのつもりでいなさい」

「……は、はい! 分かりました!」


 ここで放置しておくほうが面倒そうなので、連れて行くことにした。まあ、役には立つだろうし手が多い分には問題はない。

 と、団長がなんと言えばいいのかという表情をしてレイカ様を見ている。


「……いいんですかい?」

「ええ。放置したり下手に目を離した方が問題を起こしそうだわ。なら、目の付く範囲で好きにさせるのがいいでしょう?」

「いえ、実力的な意味で」

「問題ないわ。少なくとも、私の基準は満たしているわ」

「そりゃまた……この国のお嬢さんは恐ろしいくらいに強いんですねぇ。俺も団員に手を出すのには気をつけろって言っておきますわ」


 そう言って笑う団長。と、ようやく店員らしき人間が店先で騒がしいのを聞きつけたのか出てくる。禿頭で、顔に傷をつけた明らかに裏の世界の人間だ。

 さて、交渉をしてくれという意図を込めて団長を見る。すぐに理解したのか、頷いて店員に声をかけに行った。


「よう、肉屋の旦那」

「……豚、牛、鶏。どれだ?」


 無愛想にそう聞いてくる店員に首を振って、団長は尋ねる。


「食えない獣が欲しいんだが……」

「そんなものはない」

「おいおい、噂で聞いてきたぜ? 煮ても焼いても食えねえような肉を扱ってるってよ」

「どこの誰から聞いた」


 当然ながらこれは符丁であり、本当に売ってもいいのかどうかを確認をしているのだ。

 まあ、当然ながら失敗をすれば門前払いで相手も警戒する。警戒させずに相手を信用させるかどうかは団長任せになるのだが……


「傭兵仲間だよ。知ってるかい? ディエゴっていう傭兵をやっているんだが」

「そっちの女は」

「ああ? 自分の女を連れてきて悪いか? 不満なら待たせるぜ?」

「……少し待っていろ」


 そう言って店員は裏に引っ込んでいった。さて、順調かどうかを団長に聞いてみる。


「どうかしら?」

「まあ問題はないでしょうね。ああ、これを渡しときます」


 そういうと、小さいベルのようなものを渡される。


「……これは?」

「以前連絡用の魔道具を渡したでしょう、アレの簡易版ってやつでさ。確認が取れたらそれが音を鳴らします。踏み込んでくだせえ」

「分かったわ」


 と、そこで店員が戻ってきて手招きをする。


「来い。お前だけだ」

「はいよ。んじゃ、そこで大人しく待っとけよ」


 あえて店員に聞こえるようにそう言って、団長は男に付いて行く。

 ……さて、時間も出来たのでちゃんと確認をしておくか。


「……時間もあるから話をしましょうか」

「え、えっと……何を……?」

「まず、貴方の正体について」


 まあ、知ってるんだけどね?

 その言葉に、顔を青ざめて必死に視線をそらす。


「……アクレージョ様は……それを聞いて、どうするつもりなんですか……?」

「どうするというのは?」

「あたしを利用して、何をするのかって……断罪とかするんですか……?」

「……別に何も?」


 その言葉に、ポカンとする。

 いうならゲームと違いがないかの答え合わせに近い。別に追い出すつもりもなければ、何かをさせるつもりもないのだが……まあ、普通は理解できないだろうなぁ。なので、理解しやすいようにレイカ様っぽい説明をしてあげる。


「貴方が何者であろうと関係ないわ。見所がなければ切り捨てる。見所があるなら様子を見る。邪魔なら打ち倒す。それだけよ。ただ、疑問を残しておくのが気持ち悪いとういうだけの話」

「……それって本当に……いえ、アクレージョ様はそんな嘘は付きませんよね……」

「あと、何故私の事をそんなに知っているのかも教えてもらうわね」


 それに関しては本当に知らないからな。メアリちゃんは決意したのか、少しづつ話始める。


「……その、あたしは元々スラムの出なんです」

「そう。何となくそう思ったわ」

「あはは……やっぱりアクレージョ様には見破られちゃいますよね……一応、数年は貴族としてのマナーを身につけるために色々と特訓させられたけどこっちの生活が長いんでそっちが出ちゃうんですよ」

(見破っていたというか、ゲーム知識のおかげというか……)


 さて、これがメアリちゃんの秘密の1つ目。

 彼女はスラムの出身であり、貴族ではない本当にただの市井の人間だったのだ。それも、スラム出身であり相当に過酷な子供時代を過ごしたらしい。


「それがどうして貴族として転入出来たのかしら?」

「それが、アタシもあんまり詳しいことは知らなくて……数年前のある日、知らないおっさんたちから「君には魔法の才能がある」って言われて……そして気づいたらホオズキ家って所の子供になって貴族としての特訓をさせられてたんです。だから、本当は貴族とかじゃないんですよ」

「魔法の才能ね……その知らない人間はどういう見た目をしていたの?」

「えっと、スラムには見えない上等な服を来てて胡散臭くて辛気臭い顔でした。なんか知らない道具を使って、他のガキも居たけどあたしに声をかけてきたんです」


 ふむ、おかしい話だ。

 魔法の才能とは調べるのに手間がかかるし、ちゃんとした調査をしなければわからない。だというのに、そいつらは突然魔法の才能を見抜いたと。


(ここに関しては原作でもイマイチ要領を得なかったから……怪しいな。と、それよりも)

「分かったわ。それで、アクレージョを知っていた理由は?」


 これが一番の疑問だった。ゲームでは関わりのないはずの二人なのに、見知られていることもそうだしやけに好感度が高いのも謎だ。


「えっ、そりゃ当然ですよ! スラム出身のガキ共からすればアクレージョは憧れなんですから!」

「……憧れ?」

「だって、その才能だけで単なる平民から筆頭貴族にまで成り上がったんですから! 幸福なやつは幸福なままに、どん底な奴はどん底のままなこの国で希望を見せてくれた姿は誰だって憧れますよ! あたしたちも、アクレージョみたいにいつか成り上がるって子どもたちで励ましあったんです!」

「なるほど……それは私の父の話ね」


 アクレージョ家は成り上がりであり、死んだレイカ様の父親は元々は平民……それも、スラムに近い出だったという。

 自身の才能と、その人柄で他者を魅了し成り上がり貴族としての立場を手に入れ、そしてレイカ様に継げる程の基盤を作り上げたというのをレイカ様の知識が教えてくれる。ゲームでは触れられていなかったが、本当にすごい人だったらしい。


「私が生まれたときにはもう父は貴族だった。私は憧れられる立場にはないでしょう?」

「いいえ! 血だけじゃない、能力があればどこまでも上を行けるその姿は本当に尊敬してるんですよ! 少なくともあたしは、ずっとアクレージョ様のようになりたいって思ってたんです!」

「……そう」


 多分本心の言葉なんだろうな……その言葉で色々とゲームで繋がる部分が出てくる。

 やけにゲームでは主人公たちに喧嘩腰で、何かと嫌がらせをしたりしていたが、憧れのアクレージョを殺した奴らって視点で見られてたのか。それだといろいろと腑に落ちるし、お手本を失ってレイカ様のようになろうとしたからあんな感じだったのかな……


「それなら、何故ここで買い物をしていたの?」

「知ってるガキ仲間が居なくなって、懐かしくてこの店の肉でも買って思い出に浸ろうかと思ってたんです。学園でアクレージョ様が休みだって聞いて、それなら別に学校にいる必要もないなーって」

「……まあいいのだけど」


 わざわざ平日に学園で申請してまで活動したの、学園の人間に出会わないようにって配慮だったんだけどな……

 と、そこまで言ってから喋りすぎたことと、レイカ様が難しい顔をしていることで不安になったのか怯えた表情になる。


「……それで、その……あたしはどうなりますか……?」

「そうね……もっと研鑽を積みなさい。そうすれば、私の足元には追いつけるでしょうね。それだけよ」

「……は、はい!」


 自分の秘密を言って不安そうにしていたが、レイカ様の言葉にパッと表情を明るくするメアリちゃん。

 ゲームでも、俺はそこまで嫌いじゃなかったし何よりもだ……


(レイカ様が好きなやつに悪いやつは居ないんだよな)


 メアリちゃんのことはすっかり好意的に見ている。いずれヒカリちゃんに負ける運命なのだろうが……まあ、レイカ様が生きてるんだ。

 積極的に助けはしないが、酷い目に合いそうならアクレージョで保護してやろうじゃないか。と、そこで突然キィンという音がして魔道具が発光する。


「うわっ、うるさっ!」

「……ああ、確認が取れたようね。奥に行くわよ」

「分かりました! おし! アクレージョ様にいい所見せるぞ!」


 鋭い目を更に悪い目つきにして、すっかり張り切ったメアリちゃんを連れて扉を蹴破り肉屋の奥へと進んでいくのだった。

お前はスラム出身の女の子! こっちは平民出身の女の子! そこに違いはねえだろ! 違うのだ! というやり取りがあったとかなかったとか……なので初投稿です


ちなみに容姿についてはそこまで触れてませんしある程度イメージ任せですが

・レイカ様 美人タイプ。冷たい印象を与える。結構無感情系

・ヒカリちゃん 可愛らしい美少女タイプ。愛嬌がある

・メアリちゃん 目つき悪い美少女タイプ。笑顔が怖い


みたいな感じでざっくりと考えています。かしこ

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