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なんか攻略されてない?

 さて、プロローグから一ヶ月後。原作通りならヒカリちゃんは王子様候補と交流を重ね、レイカ様はクーデターの準備を着々と進めている状態だ。

 とりあえず傭兵団には貴族の弱みとか、王家の秘密に繋がるような情報収集を頼んでいる。思ったより優秀だし、こっちも無理なら外部を頼ってもいいっていってるしな。二次請けとかして大丈夫? と思うだろうが、最終的に敗北して死ぬのが目的だから多少の隙があってもいい。問題はないのだ。

 しかし、一個だけ予定外のことが起きていた。それは……


「あ、レイカさん!」

「……」

「今日もお元気そうで何よりです!」


 放課後に歩いていると、ニコニコしながら走ってくるヒカリちゃん……何故かレイカ様に、ヒカリちゃんがめっちゃストーキングしてくるのだ。

 ……いや、ストーキングは悪口じゃないんだ。これは公式というか、半公式名称なのだ。ヒカリちゃんは良い子だし、主人公なので間違いなく悪意はないのだがそのバイタリティでどんな場所にいても攻略対象を見つけ出すので「新種の怪異」「生きた誘導ミサイル」「電話をしないリカちゃん」「光のストーカー」などと言われているレベルなのだ。だって全ルートで「警察が存在したらご厄介になるレベル」とか言われるレベルなんだよ。

 そして、放課後になると毎回ヒカリちゃんが「あ、レイカさん!」と子犬のように駆けつけてくるのだ。というか、この前は絶対にばれないルートを使って学校を出ようとしたのに追いついてきて怖かった。


「最近では、お友達も出来たんです! 貴族ばっかりの学校だから不安でしたけども、私とも仲良くしてくれる人も多くていい学校だと思います!」

「…………」

「それに、授業も面白くて……それで聞いたら、レイカさんが最も優秀な生徒だって聞いて、凄いです!」


 ……ちなみに、なにか言わなくてもいっぱい話をしてくれる。話を切るには、返事をしないと開放してくれないのだ。

 前、心を鬼にして無視をし続けたら危うく家まで来るかと思うくらい付いてきた。ヒカリちゃん、ブレーキ壊れてるんだよな……


「……それで、今日は何の用かしら?」

「はい、今日はお話をしたくて。今日は、新しい魔法学の授業だったんですけど、筋が良いって先生から褒められたんです。レイカさんはどうでしたか?」


 ニコニコしながら報告してくるヒカリちゃん。こうしてみるとめっちゃカワイイんだよな……主人公だから、CGとかでないと顔を見る機会はないけど日常こそ彼女の良さなのだろう。

 公式で美人じゃないって言ってるが、自己評価が低いだけで普通に美人だし明るくて朗らか。メンタルも強くて周囲を明るくする。レイカ様ですら、ルートによってはヒカリちゃんをベタ褒めする程なのだ。天性の人たらしと言えるだろう。

 でもね。


「貴方は……」

「はい?」

「なぜ、私の元に来るのかしら?」


 オブラートに包んでいるが、何がいいたいのかというと「原作にないんでちゃんと王子様と交流してもらっていいですか?」ということだ。いや、マジで。

 原作にないんだよ! レイカ様と絡む選択肢は!


「それは……その……恥ずかしいんですが」

「……」

「レイカさんに、最初に実力主義の世界って言われたので……その、レイカさんを見習おうと思ったんです! レイカさん、すごくカッコよくて、実力もあって……尊敬できますから。だから、レイカさんのようになりたいと思って……」


 キラキラ笑顔でそういうヒカリちゃん。

 ヒカリちゃんさぁ……


(良くわかってるじゃん! そうだよな! レイカ様は美しい以上にカッコいいんだよな! 分かる! そして、レイカ様に向ける感情は尊敬なんだよなぁ! いやぁ、マジ分かってる! 語り合いたいなぁ! ヒカリちゃんとレイカ様について! 無理だけどさ!)


 レイカ様が自分の良さをヒカリちゃんと語るカオスな空間になるからな……

 しかし、今の俺はレイカ様だ……不躾な少女は追い払わなければならないのだが……


(厄介なことに、ヒカリちゃん……通常ルートじゃありえないくらいに能力値高いんだよな)


 いや、というのもちゃんとヒカリちゃんとか他のライバル生徒の成績をこっそり(教師に無理やりお願いして)確認してみたんだが……なんか妙に高かった。ゲームだったら、ちゃんと勉強とか授業をしたり、キャラと交流で能力ボーナスが貰える感じなのだが、運も絡んでブレがあるのでここまで綺麗に能力が高くなることはないはずなんだが……

 一応、公式設定で能力は上がる理由はつけられていて、ゲームでよく見る一年でめっちゃ成長するのも納得できるのだが……


(いやでも、この時期だと一年生の攻略対象王子に成績で勝てないはずなんだけどなぁ)


 なぜか勝っちゃってるんだよなぁ……なんで? チート使ってない? 大丈夫?

 そりゃあ、最終的には全能力値マックスでレイカ様を超えるパーフェクト完全生命体になる事もできるけども。今の段階でそんなに高いとルート壊れちゃうからね?


「……小耳に挟んだけども、貴方も教師から評判がいいようね」

「えっ、そうなんですか?」


 とりあえず、能力値次第で遭遇した時にレイカ様から褒められたり怒られたりするのも公式だからやっておかないと……あんまり低いと学校から追い出されるので、ここで調整するわけだ。


「ええ。少なくともこの学園にふさわしい努力はしているようね」

「はい! レイカさんに追いつきたいですから!」


 ヒカリちゃんの全力の笑顔に、レイカ様の内心の俺がぐわー! って感じで焼かれている。

 酷いことしにくいよ! こんな子が懐いて報告してきてくれたら優しくしちゃうよ! ……いや、でも俺はレイカ様なのだ! でもレイカ様、実力ある子は認めるが贔屓はしないのだ……よし、ちゃんとレイカ様っぽく……


「勉学ができるのは当然よ。この学園に通う生徒として、人脈もなければ話にならないわ。それと、王の素質を持つ人間ならば、相手を選ぶことね」

「人脈ですか……? それに、相手を選ぶ……」

「忠告はしたわ」


 これはつまり「レイカ様の所ばっかり来ないで他の子と交流しろ。具体的には攻略対象王子」と言う意味だ。じゃないと攻略ルートどうなるのか分からなくて不安なんだよ!

 ということで、釘を刺す。ヒカリちゃんは頭はいいので、ちゃんと察してくれるはずだ!


「わかりました! 色んな人とお話をしてみようと思います! ありがとうございます、レイカさん!」

「……」


 ヒカリちゃん、素直すぎない? レイカ様のことを怖いって思ってないよね?

 ぶっちゃけると、内心で俺はヒカリちゃんに優しくしちゃいそうで怖いよ。カワイイし良い子だし懐いてくれるしレイカ様を良く語ってくれるし……でも、優しくするとレイカ様のエンドに到達するルートが崩壊するから心を鬼にしないと駄目なんだ……


(でも、何を間違えたんだ? マジでセリフも伏線もちゃんとしたはずなのに……)


 まだギリギリ、ストーリーの大筋は間違ってない……はずだ、多分。まだ大きいイベントも起きてないし、交流パートだから大丈夫……でも、このまま王子様候補も攻略せずによくわからないままにレイカ様を全う出来ないなんてことが……いや、弱気になるな俺! こういう時には元気を出せるように……


「……大丈夫よ。頑張りなさい……」


 こっそり小声で自分を鼓舞。ああ~、推しが俺を励ましてくれる~。これはちょっと前から実践しているセラピーだ。レイカ様セラピー。

 よし! 元気が出た。さて、とりあえずは釘を差したしこのままバッドエンドを目指して頑張るぞ!

 まず、ズレている部分を修正して、ちゃんとヒカリちゃんに王子様候補を攻略してもらうように誘導するぞ! 俺はその決意を胸に、予定を纏めるために早足で帰りながら情報を整理するのだった。



 そして、取り残されたヒカリはちゃんと聞いていた。レイカの独り言を。


「……レイカさん、励ましてくれた……! よし、私もいっぱい頑張らないと……!」


 勘違いはどんどんと進行していくのだった。

三日坊主ラインを超えたので初投稿です

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