表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/115

三年と成長と新展開 中編

「なっ、王選に新しい候補!? そんな馬鹿な話が……!」

「セイドーよ、その疑問は正しい。私もこれ以上増やすつもりはなかった……が、それでも無視出来ぬ程に始祖魔法の才能を持ち、放置することは出来ぬという事になったのだよ」


 ちなみに、原作でも新しい王候補の出現には反発を食らっている。

 レイカ様の後にやってくる始祖魔法の圧倒的な才能を持つライバルキャラ。プレイヤーでの人気はと言うと……実はそこまででもない。というのも、レイカ様の印象が強いので、どうしてもそちらに悪役という印象が食われるのが原因だろう。

 それに、始祖魔法なく対抗したレイカ様と比べて始祖魔法の才能がヒカリちゃん以上という評判で入ってくる生徒だ。レイカ様不在後のゲームオーバー要素ではあるのだが、それでもインパクトが弱いのでどうにも中途半端とユーザーからは言われていた。


「それで学園長。その候補者はいつ見つかったんですか?」


 シルヴィアくんの質問に、疲れたように目を閉じる学園長。

 にじみ出る疲労から、余程の騒動があったことが見て取れる。


「半年前、隣国で発見された。偶然にも、とある貴族の分家筋で大きな才能があることが判明したのだ。そのため、手続きや確認などを済ませ数日後に転入をしてくる手はずになっている。怪しい所はない。表向きはな……」

「……ああ? つまり、裏にはなんかあるのかよ」

「うむ。あまりにも都合が良すぎるのだよ……本来であれば出てくる埃すら出て来ぬ。潔癖すぎるのだよ。本当に聖人君子であり、偶然だったのか……それとも」

「以前から仕組まれていると?」

「その可能性もある……王になるというのはそれだけ魅力的だ。過去にもなかったわけではない……だが、今という状況がよろしくない。魔人の存在、王宮から奪われた鍵、小規模な魔獣の襲撃も例年に比べ頻発している。不穏な空気の中でのことだ。警戒に越したことはない」


 ……まあ、怪しいよな。

 ちなみに俺は正体は知っているんだけど……こう、ネタバレをするのはブレファンとしてやりたくない。それに、出所不明の情報を出すのは何が起きるかわからないので静観しておこう。あくまでも正体自体はそう悪いわけじゃないし。


「それで、顔合わせはどうするのかしら? その子も混ぜるの?」

「いいや、この場に呼ぶことは出来ない。また別の場で出会う機会を設けよう。君たちは信頼出来るが、その子は分からぬのでな……さて、朗報だ。以前から調査をしている魔人だが、ある程度のことが分かってきた」

「おっ、そうなのか。早く聞かせてくれ」


 ロウガくんが食いついた。まあ、出会ってないがその場に居たら挑んでみたかったと言っていたし……案外脳筋というか、バトルマニアな所があるのだ。

 魔人については原作でも居ない存在だ。是非聴きたい。


「……まず、始祖魔法と対を成す闇魔法については知っているかね?」

「話だけなら私は知っているわ」

「僕も同じく」

「知らねえな」


 レイカ様とシルヴィアくんは知っているが、他の皆は知らないらしい。まあ、魔導書も存在していないような魔法だ。普通に生きているなら、知る機会というのはあまりないだろう。

 一応、傭兵団に聞いたら裏社会では噂程度には聞くらしい。


「で、あろうな。闇魔法を知らぬのも仕方ないであろう……教国によって、その魔導書が封印されている禁書であり情報は秘匿されている。というのも……闇魔法は魔獣と同じ力なのでな」

「えっ、ま、魔獣と同じですか!?」


 ヒカリちゃん達が驚く反応を聞きながら、俺はやはりかと納得する。

 闇魔法、ゲームでも色々と情報は出ているが謎は多い。しかし、考察で魔獣に関係はしている事は確定していると結論が出たし、正体についてはある程度推論もあった。しかし、ここで闇魔法について確定情報を聞けるとは思わなかった。ちょっとワクワクしている。


「この国の成り立ちと、悪しき魔女の話を覚えているかね? 神器によって打ち倒された魔女……だが、彼女は死の際に世界を恨んだ。当然であろうな、邪悪な人間が打ち倒されて聖人のように死ぬはずがない。嫌がらせのように、魔女は自らが最も得意としていた魔法を使い世界に形ある呪いを残したのだ……それが魔獣であり、闇魔法はこの世界に魔女が存在していた証拠なのだよ。決して消えぬ呪いだ」

「なっ……!? そんなの初めて聞きましたが!?」


 ホークくんが反応する。魔法関係については詳しいホークくんだからこそ、知らないことに反応したのだろう。


「当然だ。何度も言うがほんの一部しか知らぬ話であり……四大貴族にすら秘匿された情報だ。なぜなら、闇魔法は使う人間の精神を蝕むのだよ……多大な力の代償に人間の精神に影響を及ぼす闇魔法。これが知られれば、恐れた者から迫害される人間がでてくるだろう。この力を求める愚か者も出てくる。それ故に、闇魔法の情報は伏せられているのだ」


 ふむ……やはり精神を蝕むのか。というか、その状態で自分を維持し続けていたレイカ様ってすごいな……改めてレイカ様に惚れてしまう。

 公式情報では始祖魔法も影響はあるらしい。そっちは人間などの精神に良い影響を。そして闇魔法は悪い影響を与えるとかなんとか。


「あいにく、私ですら闇魔法の詳細については知っていない。教国に封印されている魔導書は、教国の人間ですら読む事を許されぬ禁書だからだ。しかし、教国の者から闇魔法の魔導書が盗みだされたと聞いた……つまり、魔人化とは闇魔法の力による人間の魔獣化なのだろう。魔獣と人間の長所を併せ持つ怪物と想定して当たるしかない」

「なんと冒涜的な……なぜ、そこまで危険な魔導書を処分しなかったんですか!」

「出来ぬのだよ。本自体が強力な魔力によって守られている。かつて何度も処分をしようとしたが……神器を使ってすら破壊できなかったのだ。そして、封印されておらぬ闇の魔導書は人間を引き寄せる。それこそ、虫を誘い込む篝火のように……」


 ……いや、ゲームでも初めて聞いたぞ? 闇魔法の魔導書をどこからか入手して、レイカ様は自死して闇の魔導書については行方不明になったはずだ。

 闇の魔導書は壊せない。そして、その存在は他の人間を引き寄せる……やっぱり次回作へのフラグだったんじゃねーか!


「だからこそ、魔獣に対抗できる力……アクレージョくんを除く全員に始祖魔法の習得を頼んだのだ……して、そちらの習得はどうかね?」

「はい。僕が教えましたけども……セイドー、キシドー、ノセージョの三名は無事に習得しましたね。特にノセージョとセイドーに関しては優秀です。僕と同じだけ始祖魔法を使えるようになりました。ただ、オウドーとムラマサの両名は習得は出来てませんね。とはいえ、向き不向きがあるので始祖魔法の才能があっても習得は難しいのは仕方ありません。むしろ、3人も覚えたことを喜ぶべきでしょうね」

「おお、そうか……! はっきり言えば、半年の短い期間では一人も習得出来ない可能性すら考えていたのだよ……だが、三名も習得できたというのは想像を超えた成果だ。助かる、シルヴィア。本当に……」


 学園長の言葉に頭を下げるシルヴィアくん。ようやく良い情報を聞けて心なしか学園長の顔も和らぐ。

 まあ、学園長も疲れてるだろうな……闇魔法を使える集団に対する対処。まず国の貴族で信用できない。そして怪しい王候補の登場。多分俺だったら本気でキレてるのによく頑張ってるよ。

 他の皆も分かっているのか、同情的な視線だ。


「……ゴホン。すまない。歳を取ると感情的になる。いずれ、始祖魔法を使える各位には魔人に対する対抗戦力として協力を申し出るかもしれない。その時はよろしく頼むとしよう……さて、他になにかあるかね?」

「ああ、僕の方から質問をいいですか?」

「ふむ、セイドーか……何かね?」


 ホークくんが立ち上がる。基本的にはあまり他の貴族から何かを言うことはないので珍しいと言える。


「……王選というのは具体的にどう決めるのですか? 今までは王を決める時に学園生活の総合的な評価で判断される……と聞いていました。ですが、そうではないんですよね?」

「ふむ、そう言えば説明はしていなかった……ここまでこの国の秘密を伝えているのだ。教えても良いであろう」


 おや、王選については必要なステータスが基準点を超えていれば選ばれるシステムだったはずだ。

 ゲームではそういったシステム的な要素だったけど……こっちではどうなるんだ? 一体どんな理屈で……


「王選にはとある魔道具が使われる。それは神器への適正を見る魔道具だ。最も相応しき人間ほどその魔道具は反応する。それを使い判断されるのだ」

「なるほど、適正ですか」

「うむ。肉体と魔力。それらが神器を使う人間として優れているほどに魔道具は反応を示す。これを教えると、力だけを求めて暴走したり道を違える人間もいるのでな。だからこそ、秘匿していたが……君たちならば問題はないであろう」

(なるほど……ちゃんと鍛えて能力で判断されると。まあ、神器って始祖魔法は関係ないらしいからな……)


 ……やっぱりゲームと一緒でデータで判断されてるんじゃねーか! 期待してたのに!

 心のなかでそんな突っ込みをするのだった。

まさかの大遅刻だったけど、土曜日だし良いかという精神での初投稿です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ