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学園とトラブル勃発と

 解決方法が見えないまま、2日が経過した。

 票に繋がりそうな行動を試したり新聞を利用できないか検討したりなど出来る限りはしてみたのだが……結果は票はあまり動かず。5割、3割、2割という形になっている。厄介なのはここでほとんどの票の意思が固まっていることだろう。

 朝から集合して、なにか方法はないかを全員で考えているが、いまいち良い作戦は思い浮かばない。


「……難しいわね」

「ええ、参りましたね……やはり固定票は強いですし、話題性がなければこれ以上票は動きません。何か生徒たちの関心を動かすような何かが起きれば良いんですが……」

「そうね。事件でも起こしてみる?」

「あはは……正気ですか?」


 笑顔で冷や汗を流しているホークくん。本当にやると思われてるのか……いや、いざとなればやるかもしれないけどさ。

 しかし、レイカ様といえどここで変なことをして目をつけられるのも違うのでやるはずがない。逆に言えばチャンスならやるけどさ。


「冗談よ。とはいえ、手詰まりなのは困ったわね」

「そうですね……私から、いいアイデアが出せればよかったんですけど……すいません」

「拙者も剣を振るしか能がない故。すまぬ」

「別に気にする必要はないわ。アテにしてないもの」


 2人の謝罪に気にする必要はないという。元々、俺がレイカ様のポテンシャルを引き出せきれていないのだ。俺の推しプレゼン、草の根活動だと弱いからな……

 もっとしっかりとしたプレゼンをしたらちょっとはファンを増やせる自信はあるんだが……俺がレイカ様だからなぁ……


「……そうね。気分転換に報告をして頂戴。ヒカリ」

「ええっと……そうですね。最近は色んな人にレイカさんのお話をしたりしてます。一年生ではレイカさんもカーマセさんもとっても人気ですね。それと、最近やっとアラタちゃんと喫茶店でお茶をしたんですよ! そこで、いっぱいお話をして……」

「良かったわね。ツルギ」

「ふむ、報告か。拙者は基本的に修行のための鍛錬と学外での魔獣退治しかしておらぬな。先日から調査隊が森に入り、そちらでの行動は禁じられている。ゆえに、日中で市井に出向き便利屋として魔獣退治の依頼を受けている。最近はどうやら魔獣の出没頻度が高いようで、依頼が増えているようだ」


 と、その発言を聞いて驚いた表情を見せるホークくん。

 うん、まあ分かる。突然市井の便利屋活動をしてるって言い出すとは思わないもんな。


「はぁ!? ツルギさんだったんですか!? 最近、うちの便利屋で最近登録して一気にランキングを上げている謎の凄腕で噂になっているのは!」

「む、噂になっているのか? 拙者としては、こちらの活動の合間にしていること故に、あまり他の便利屋と交流をしておらぬのでな。もしも迷惑をかけていたのなら謝罪に……」

「いや、そういうわけじゃないんですが。いや、どうせなら専属契約でうちの手駒にしようかと考えていただけで……でも、なるほどな……お忍びの貴族が実は市井で活動をするというのは……」


 と、そこで何かを考えながらメモを取り始めるホークくん。……まあ、ろくでもない事を考えついたんだろうな。めっちゃ嬉しそうだもん。

 と、まあ最近はこうして定期的に2人から話をしてもらっている。まあ、アイデアに詰まる時に間を持たせるメリットと、何気ない発言からアイデアが出てくることもあるので案外効果的なのだ。

 例えばツルギくんの話から学校に忍び込んだ魔獣の討伐で評価を上げたり、ヒカリちゃんの話から一年生にアピールできたり。しかし、今回はあまり思い浮かばない。


「……繋がる情報はなさそうね」

「そうですね。まあ、毎回出てくるというわけではないですから仕方ないでしょう」


 そして、一息ついて確認をしておく。


「そういえば、明日よね? 最後の演説というのは」

「ええ、剣聖徒の投票自体は休み明けになります。その前に、最後に立候補者からの演説が必要になりますね。休みと投票日の選挙に繋がるような活動は禁止です。演説で票が動いたことはありますし、ここも重要ではありますが……やはりそれまでの積み重ねのほうが重要ですね。どうせシルヴィアさんは演説も達者でしょうし」

「そうでしょうね。とはいえ、重要なことに変わりはないわ」


 ゲームでは最後の演説でかなり票を動かせた。多分、こっちでも演説で動く票は多いはずだ。とはいえ、問題は相手にするシルヴィアくんが普通に演説とか上手なことだろう。

 まあ、俺のスピーチでレイカ様に来るように票を動かせる自信はあるが……ここで固定票まで奪い取れるようなスピーチは出来るか確信はない。ううむ、やっぱり今日が重要か。


「何か、生徒の認識を動かすものが必要ね」

「そうですね」


 ホークくんとレイカ様のその言葉を最後に考え始める。しかし、当然すぐに出てくるわけがない。まあ、今までも色々と考えてきたので当然だ。

 時間が経過するが、誰からも発言は出ない。仕方ないとはいえつい弱音が出てしまう……


「……何か事件でも起きれば良いのだけど」



 瞬間、轟音。

 地鳴りのような音がして、静寂を打ち破る



「うわわっ!?」

「な、なんですか!?」


 ホークくんとヒカリちゃんが突然のことに声を上げる。

 そして、ガシャンとガラスが割れるような音がなり響いて静になる。

 そのまま、全員の視線がこちらを向く。いや、タイミング的に分かるけどさ!


「――何もしてないわよ」

「そ、そうでしょうね……ついタイミングが良すぎて……ではいったい何が……」


 ホークくんの呟きながら、窓を開ける。

 すると、突然何かに気づいた様子のツルギくんが二階の窓から身を乗り出す。その表情は緊迫していて、最初に森で激突した時のような気迫を感じる。


「ツルギ?」

「アクレージョ殿。魔獣が森から来ている。おそらく先程の音は結界が破壊された音だ。気配が多い」


 その言葉と同時に、学校中に警報が鳴り響く。

 ゲームでも聞き覚えのある、レイカ様がクーデター事件を起こした時に鳴り響いたサイレンだ。ああ、トラウマが! うっかりレベルが低い状態でセーブをして泣きながらレイカ様に何度もゲームオーバーさせられた記憶が!

 と、トラウマに苦しめられている場合ではない。


「結界が壊れたのね?」

「うむ。拙者は魔獣の気配をある程度察知出来るが……森から複数の気配が来ている。拙者は最前線である程度の魔獣を間引いてくる。しかし、漏れてくる魔獣が出てくるはずだ。済まないが、アクレージョ殿は学園を守ってくれ」

「分かったわ。行ってきなさい」

「かたじけない」


 その言葉を残して窓から飛び降りて森の方面へと走っていくツルギくん。おそらく、レイカ様の実力を信頼して任せたのだろう……ううむ、味方になると心強いな。


「レイカさん、結界が壊れたって……」

「魔道具で人為的に作った魔獣避けよ。壊れることはそうそうないわ。誰かに壊されなければね」


 森で魔獣を封じ込めていた魔獣避けの結界は、魔獣に対して「先の魔力を感知させなくなる」という効果がある。魔獣は魔力によって動いているからこそ、魔力の存在しない地帯にはあまり近づかない。その習性をいかした方法だったのだが……その魔獣避けが破壊されたとなれば、大量の魔力を持っている学園に殺到するだろう。

 学園では魔獣を退治できる生徒もいる。だが、一年生や戦闘の得意でない生徒は間違いなく抵抗出来ないだろう。相当な大事件だ。


「ちっ、事件が起きろとは言ったけども……ここまでは頼んでないわね」

「それでアクレージョさん! どうされますか!」


 ホークくんの言葉に、2人を見る。レイカ様はちゃんと装備は持っているし、ヒカリちゃんも装備を準備している。しかし、ホークくんは実戦経験が薄いからか、まだ戦闘の準備はしていない。

 ……それを確認して頭の中でどう動くかを明確にしていく。


「セイドーは学園の避難誘導を。教師と連携して生徒たちを安全な箇所に避難させて。私とヒカリは侵入してきた魔獣退治。ある程度片付けたら森の前線側に合流するわ。良いわね」

「はい!」

「……分かりました。お気をつけて」


 ホークくんは何かを言おうとして飲み込む。ここで、自分がまだ役に立てるラインではないと理解してくれたのだろう。そして、ヒカリちゃんと一緒に控室から飛び出す。


「ヒカリ、まずは森側から近い校舎に行くわ」

「はい! 力になれるようにがんばります!」


 その力強い言葉を信じて、足を進める。

 起きたものは仕方ない。せめて、無事に被害なく解決する決意をするのだった。

女神転生5の発売と、女神転生3のリメイクが発表されたので初投稿です

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