学園で出会う新たな王子様
ホーク・セイドー。プリンセス・ブレイドにおける主人公の同級生キャラであり攻略対象の一人。
剣よりも魔法のほうが得意な後衛キャラクター。読書が好きで頭がよく、ルートを進めていくと実は二面性があるという王子様でこれまた人気だ。
(まあ攻略は楽な方だから、ヒカリちゃんが出会っててもおかしくはないか。剣舞会ルートだと、ゲームだったらほとんど接点がないから頭から抜けてた)
原作だと図書館に一定期間通って勉強していたらフラグが立ち、そこから攻略を進めるタイプのキャラクターだ。なので、図書館を利用しない場合は本当に出会わない。初見プレイだと攻略対象になりやすいキャラでもある。二番目はカイトくん。同級生は攻略しやすいからね!
「まさか、ヒカリがセイドー家と縁を結んでいるなんて驚きね。どこで出会ったのかしら?」
純粋な驚きと、剣舞会ルートなのにどうやって出会ったんだ? という意味を込めてそう聞いてみる。
「レイカさんに教えてもらうばかりだと申し訳ないなって思って、会わない日は図書館で魔法の勉強をしていたんです。その時に知り合って、色々と勉強や魔法についての相談に乗ってもらったりしてたんです」
「……そんな日があったかしら?」
「ありましたよ! 剣舞会の特訓の時もそうでしたからね!? ……えっと、話を戻しますけども。それでホークくんに今回の話をしたら、興味があるからレイカさんの事を紹介して欲しいって言われたんです」
なるほど……ヒカリちゃん、毎回居場所を伝えてないのに見つけ出してやってくるイメージが強すぎて会いに来なかった日のイメージがなかったからなぁ……言われてみれば、確かに来ない日はあった。その日に攻略を進めてたというわけか。
とはいえ、明らかにハードワークだ。体を壊したら元も子もないのでどこかのタイミングで釘を差しておくべきかもしれない。
「そう。偶然とは言え、セイドー家とは思ってもみない収穫ね」
「セイドー家……やっぱり、ホークくんもすごい人なんですか?」
「……クラウン学園に通っているなら覚えておきなさい。キシドー、オウドー、セイドー、ブレイドの四家は四大貴族と呼ばれているこの国の重鎮よ」
ということで、この国の四大貴族が揃い踏みだ。過去に何度も王を排出している貴族であり、学園でこそ気軽に出会って話もできるがもしも貴族社会で会うとなれば普通に声をかけるだけでも一苦労な存在なのだ。
「えっ!? も……もしかして、失礼なことをしちゃってたりしますかね…?」
「学園では原則は対等の立場なのだから、相手から何も言われてないなら問題ないわ。それに貴方なら気にしなくても問題はないでしょうね。とはいえ、度を越したら無事ではすまないけどもね」
いちおう釘を刺す。というのも、実家が貴族なら色々と気にしないとダメだが……特例のヒカリちゃんに関してはそこまで求めることはないからだ。わざわざ元平民にマナーでチクチク言ってもしょうがないしね。
それに先王の遺言によって入学したヒカリちゃんは実際は相当複雑な立場なのである。まあ、ゲームのレイカ様は無能主人公の場合容赦なく退学させるけどさ。やはり俺の推しはとんでもない。
「わ、わかりました……気をつけます……」
「そうしなさい。それよりも、セイドー家の話に乗らせてもらうわ。案内をしてもらえる?」
「はい! それじゃあ、ホークくんが待ってる場所まで案内しますね!」
ということで、ヒカリちゃんの案内でホーク・セイドーへと会いに行くことになったのだった。
図書館にやってくると、ゲームで何度も見覚えのある定位置に座っている男の子がいる。こちらを見て立ち上がり笑顔で挨拶をする。
「はじめまして、レイカ・アクレージョ様。僕はホーク・セイドーと申します。以後お見知りおきを」
「レイカ・アクレージョよ。畏まった態度は必要ないわ。セイドー家の子息の方が立場は上でしょう?」
「はは。ここにいる間は家の立場よりも学生としての立場の方が上ですよ。それに、アクレージョ家の当主ともなれば失礼をするわけにはいかないですからね」
ニコリと微笑む。線の細そうな、頭のいいインテリ系って感じの眼鏡くんだ。一見すると王の候補の中では文官っぽくて王子様っぽくないのがこのホークくんである。とはいえ、あくまでも見た目の上での話だが。
「それで、わざわざ私の擁立に名乗り出てくれたようだけども……理由を聞いてもいいかしら?」
「ええ、いいですよ」
ニコニコと笑顔のままに答えるホークくん。
「――シルヴィア様を蹴落としたいんですよ。僕は」
「あら、聞かれたら問題になりそうな発言ね」
「あはは、王候補なんですから構わないでしょう? 王になる上ではシルヴィア様が一番の障害になることは目に見えている。彼がここで剣聖徒という肩書を手に入れて箔付けされると、他の候補よりも一歩抜き出てしまいますからね」
笑顔でそう言うホークくん。そう、彼は王候補の中で誰よりも本気で王になる事を目指しているのだ。
あんまりやる気の無いロウガくん、素直すぎるカイトくん、他に相応しい人がいればと消極的なシルヴィアくん、もう何やってんだよのツルギくん。他の王候補はそこまで本気で王を目指していない。だが、ホークくんだけは王になることを目標にしているので本気度合いが違う。まあ、これは家のことが関係してるんだけども。
「なるほど、だから私に剣聖徒になってほしいと」
「ええ。立場的にもシルヴィア様が敵だと表明するデメリットはありません。むしろ、王を目指すのなら仲良く思われる方が困りますからね。とはいえ……アクレージョ様が僕の評判を落とすような方であれば手を組むつもりはありませんが」
「ホークくん、レイカさんはそんな人じゃないですよ!」
と、そこでヒカリちゃんに怒られるホークくん。
その言葉に、さっきまでの王を目指す策士の姿はどこへやら……へにょっとして気の弱い文学少年の顔を見せる。
「ひ、ヒカリさん……その、僕はあくまでも貴族としての立場を表明しただけで……別にヒカリさんから紹介して頂いた彼女を疑っているわけじゃないので……」
「あ! そ、そうなんですか……ごめんなさい! レイカさんの事を悪く言う人が多いからつい!」
「いえ、僕もちょっと強い言葉を使いすぎたかもしれません!」
と二人でペコペコし始める。……うーん、面白い。実際に見るとこういう感じなんだ。
ホークくんは策士でかなりダーティーな手も使う子なのだが……本性は人見知りの文学少年なのだ。王を目指しているが、あくまでもそれは貴族としての立場と家の期待があるからであり本性はこういう普通の青年だ。だから、ヒカリちゃんとは出会いから素の自分で付き合っているので、こういった気の弱い顔が出てしまうらしい。
まあ、プリンセス・ブレイドではレイカ様が悪役要素を一身に背負ってるので、王子様に本気で性格が悪いとかはないのだ。事情があったり、立場の上で演じているだけで彼らにはそれぞれ悩みがある。それを主人公が解放していくのもゲームのテーマだったりする。
と、そろそろ本題に戻そう。
「……二人で遊んでいるのはいいけど、本題はどうなったのかしら?」
「あっ! ……ごほん、失礼しました。ええ、アクレージョ様を疑っているわけじゃありません」
陰険眼鏡状態……通称、貴族モードに変わったホークくんは一瞬で話を戻す。うーん……凄いなぁ、このキャラの切り替え。ゲームでも相当だったけど、現実だと二重人格かな? ってくらいに雰囲気が変わった。ヒカリちゃんも目の前の変化にビックリしてる。
そして、話は真面目な内容に戻る。
「ですが、信用できる相手だろうとなかろうと……どちらにせよ、こちらに利があると思わせる力が無ければ剣聖徒になることなど不可能でしょう? なので、失礼な物言いとなってしまいました」
「構わないわ。貴方の言うとおりだもの」
「ご理解いただいて助かります。とはいえ、アクレージョ様は実績で利を見せる力は示しているので、そこまで疑ってはいませんがね」
急におべっかなのか、褒め始めるホークくん。
こういう腹に一物持っている感じのキャラが急に感じが良くなると不安なんだよな……
「お世辞は良いわ。何が必要なの?」
「おっと、これは失礼。僕の家、セイドー家についてご存知でしょうか? 他の三家に比べれば、少々毛色が違うのですが……」
「ええ、知っているわ。魔法に長けた一族なのでしょう?」
このゲームでは魔法を使えるのは当然だが、あくまでも剣の補助に使う事が多い。その中で珍しく剣よりも魔法を使うことをメインにしているのがセイドー家なのだ。
「おや、そちらはご存知でしたか」
「有名だもの。知らないほうが不自然じゃないかしら?」
「ははは、それは魔術研究を命題としている当家冥利に尽きますね……ですが、それとは違うセイドーの行っている家業なのですが……ご存知ですか?」
えっ、もう一つ!? 必死に脳内を漁る。
いきなりプリンセス・ブレイドカルトクイズが始まるので困惑してしまうぞ! ここで当てなくても別に展開的には関係ないのだが、ファン的に悔しいやつだから必死に考える。
……あっ、思い出した! 前世よりも覚えてるプリンセス・ブレイド知識が役に立っているぞ! 言ってて悲しいが、まあブレファンの鑑ということで慰める。
「はは、流石に答えは――」
「……ああ、市井の便利屋のことかしら? なかなか評判が良いと聞くわ」
「――驚きました。まさか、そこまで把握してるとは」
「耳の良さには自信があるのよ」
「ははは……なるほど、それは納得しました」
冷や汗をかいているホークくん。ごめんな……単なるゲーム知識で。
ちなみにこの便利屋というのは、傭兵やら冒険家などの特定の職業についてない市民を取りまとめて職業を斡旋している組織だ。現代的に言うなら職業安定所みたいなもんだろう。
イメージとしてはファンタジー小説の冒険者ギルドを思い浮かべると分かりやすいかもしれない。面倒な取り次ぎや契約などを手数料をもらって請け負い、失敗なども保証するというのが便利屋らしい。ゲームでは出てこないから情報でしか知らないけど。
「セイドー家では魔法を探求する関係上、貴族同士の繋がりだけでは用意できる物品などにも限界があるんですよ。金銭も普通の貴族以上に必要になります。ですから、家業として便利屋を取りまとめているわけです。まあ、頭のない貴族からは商人崩れなど呼ばれていますがね」
「あら、口だけの貴族に比べればこの国に余程貢献しているでしょう?」
「……はは、さすがですね。なるほど、ちゃんと本質を見られている。さて、本題に入りましょう」
ちょっと嬉しそうなホークくん。ふむ、本題と来るか。
さっきの前フリから考えれば……便利屋に関わるような話なんだろうけど。
「クラウン学園にもセイドー家として交渉して、窓口を作っているんですよ。とはいえ、学外に関わる事は原則は禁止なので、学生同士で相互扶助する事になりますが」
「……ああ、便利屋の窓口を貴族にも広げようと思っているのかしら?」
「ええ、そうですね。次代の当主のような方達に便利さを知ってもらえれば、偏見もない彼らがいずれは市井の便利屋を利用する……そうなればと思いましてね。ただ、学内での便利屋は依頼こそあれど、その依頼を達成してくれる生徒が足りてないのでどうにも評判に繋がらない」
「つまり、広告塔になれと」
「お話が早くて助かります」
ニコニコとした笑顔で同意するホークくん。
なるほど……つまり。
(原作でもあった掲示板クエストをやれってことか……)
レイカ様、これ……どうなんでしょうか? 心の中でレイカ様にお伺いをたてるのだった。
めぼしい貴族が出揃ったので初投稿です
評価、感想ありがとうございます。非常に励みになっております
呼んでくださる方もたくさんいて、「こ、こんなにいっぱいどこから!?」と困惑しながら喜んでおります。これからもお付き合い頂ければ幸いです




