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運命の瞬間が近づいています

 夜。お屋敷に帰宅してから自室で日記をみつつ今後の予定を確認していた。

 長かったが、ようやく原作どおりの展開に……いや、もう原作通りじゃないよねこれ。という根本的な問題が立ちはだかっていた。


(原作と違うのは覚悟していたけども……もう、どこが違うのかも分からねえ)


 まあ、これは仕方ないと諦めてはいた。俺はレイカ様本人ではない。だから、色々とズレが起きることは考えていたし、俺に出来る事は臨機応変に対応することだ。でも流石にここまでなんかもう色々と違うとどこをどうすればいいかわからない。助けてレイカ様。

 日記を確認しながら、それでもなんとか元通りの流れにしようと脳内で整理をしている。

 まあ、ロウガくんとの対決順位がズレてしまったことは予想外だがこれは問題ない。ヒカリちゃんに勝ってもらうことを祈ろう。主人公だし大丈夫だろ……多分……それよりも、この後に、闇魔法にレイカ様が手を出すというイベントをどうするかが問題だ。無理に手を出したらレイカ様の行動の説得力が薄くなってしまう。そんな説得力もないような行動をレイカ様に取らせるわけには行かないので理由が必要だ。


(他にも問題があるんだよな……実力を求めて手を出した闇魔法は、精神に影響を及ぼす……そのせいで、レイカ様は意識しないレベルで過激な思考になり学園クーデターを起こすんだけど……)


 これ、俺も影響されちゃったりしない?

 公式設定で、始祖魔法は血統で引き継がれる生まれついての魔法であり、闇魔法は後天的に才能があれば覚えれる魔法である。それぞれに利点と欠点があるのだが……闇魔法が伝わっていない理由に闇魔法を使うほどに人格に悪影響を及ぼしてしまうというのがある。

 適正がなければ廃人になるのはいい方で、場合によっては闇魔法によって精神が乗っ取られるらしい。まあ、だから手を出す人間が居ないのだが……そんな魔法を完璧に習得して過激になった程度で済んでいるレイカ様は凄いとしか言えない。うん、俺の推しすごい!

 レイカ様の凄さを再確認したところで……そのレイカ様が耐えれた闇魔法だけど、よくよく考えてみれば俺は耐えれるのか? という問題がある。もしも俺がグヘヘ世界を破壊してやるみたいになったらどうしよう。イベントの区切りが見えたせいで先まで考えて色々と問題点が見えてきた。闇魔法をどうするべきか……原作的に闇魔法を習得するのに色々と謎が多かったから、それを調べてからでもいいけど……


(……まあ、これ以上は考えても仕方ないな。とりあえずルート通りに進めよう!)


 先のことを考えすぎても仕方ないよな! ということで、今の剣舞会というイベントを終わらせてから考えよう!

 明日のロウガくんにあと一歩で負ける! そこでレイカ様は始祖魔法を持たない自分の限界に力を求めるようになる!


(あのシーンのCGで見たレイカ様、めっちゃ綺麗なんだよな……敗北をしたことで、心から自分の力のなさを憎むシーン……)


 レイカ様の敗北という悲しいシーンではあるが……それでも、あの美しいシーンを現実に見れるのかと思うとゾクゾクしてテンションが上がってくる。

 よし、これで明日も頑張れる。あのシーンの再現を見て……見て……


(あっ)


 眠りに落ちる前に、ある事実に気づいてしまった。

 ……俺はレイカ様の敗北顔、見れないじゃん……



 夜が明けて最終日。実況の声も一際テンションの高いものになっている。


『さあ、待ちに待ちました……今日という日を! 私も心待ちにしていました! さあ、泣いても笑っても今日が剣舞会の最終日です! 揃った4名の勇士の姿を見ましょう!』


 ステージの上に立たされた4人が紹介されていく。


『まずはこのお人! 護国の鬼! 学園の狂犬! キシドー家の名に恥じぬ実力という牙を備えた優勝候補筆頭と名高いロウガ・キシドー様! そして、堅実な戦い方と確かな実力に隠れファン急増! この決勝も堅実に勝ち上がるか!? トテ・モジミー様! そしてそして! まさかのシルヴィア様の再来か!? 一年生というハンデを物ともせずに優勝へと駆け上がる期待の新入生! ヒカリ・ノセージョ様! そしてぇ~! この学園の女帝! 誇り高く強き麗人! もはや完全無欠とはこの人のためにある! レイカ・アクレージョ様! 剣舞会を勝ち上がってきた、この四人による決勝戦がたった今、開幕致します!』


 実況の熱のこもったアナウンスに、周囲も盛り上がる。歓声はもうパレードかと思うほどに大きくてびっくりだ。

 実況の解説が終わり、試合の準備のためにそれぞれが自分の控室に案内される。と、そこでロウガくんから声をかけられた。


「よう。ああ、この日を楽しみにしてたぜ、アクレージョ」

「あら、キシドー家というのは血の気が多いのね」

「かはは! お前に言われるのは心外だけどな。だが、それも否定できねえ。なにせ、久々にワクワクしてるからな。元から剣舞会は好きだったが……ここまで楽しみにしたことはなかった。あの、シルヴィアの野郎が勝ち逃げをしたっていうのに晴れやかな気分だ」


 そう言って爽やかなロウガくんスマイル。怖さとか一切ない、快活で女の子が卒倒しそうなきれいな笑み。

 ……なんか浄化されてない? 大丈夫? これじゃあ狂犬じゃなくてチワワだよ?


「あら、自分が負け犬だと認めて、諦めが付いたのかしら?」

「かはは、シルヴィアと今戦えば負けねえよ。今の俺には、自分の意志で勝ちてえ奴が出来たからだ。惰性の勝負でも、勝って当然の試合でもねえ。本当に勝てるかどうか分からない真剣勝負だ。俺に誇れるのはこの腕っぷしくらいなもんだ。だから……俺の誇りで全力で勝ちてえんだよ」


 そして、俺に向かって拳を突き出す。

 それは、まるでスポーツをする前の選手のような宣誓だった。爽やかすぎて浄化されちゃいそう。


「アクレージョ。お前に勝ちてえってな」

「あら、光栄ね」


 ……ロウガくんとレイカ様、原作だと接点ないっていうかロウガくん嫌ってたのに……一体どうして……? あと、これに関しては変にルートできてるとか、カップルっていうよりも……少年漫画の宿命のライバルじゃね?

 もしかして、俺が知らないうちにプリブレの世界は少年漫画になってしまったのか? と勘違いしそう。まあいい。俺はレイカ様を通すだけだ


「ただ、可哀想ね。貴方も」

「ん? 可哀想だと?」

「ええ。なにせ……その宣誓の後に、この大勢の前で私に敗北してしまうんだもの」


 その言葉にキョトンとして……そして、大爆笑をするロウガくん。ち、違うんだ! レイカ様フィルターで勝手にこういう感じに! 解釈一致だけど!


「くっ……ははははは! まったく最高だぜ! なあ、アクレージョ! お前をぶっ倒して見せるぜ!」


 そう言って控室へと向かったロウガくん。それを見てから俺も準備に控室に行く。

 控室で試合への準備を整えて……まだ時間はあるなと確認する。と、控室の扉がノックされ、招き入れるとヒカリちゃんがやってきた。ん? ヒカリちゃん? なんでだ?


「レイカさん」

「あら、敵情視察かしら?」

「いえ、キシドーさんと戦うと聞いて……見に来ました」

「オレも居るぞ」


 カイトくんも顔を出す。……うん。なんで?


「何の用事かしら?」

「オレは師匠の応援にだな……!」

「次にそういう軽口をいい出したら、叩き潰すわよ」

「ぐむ……!」


 その言葉に、必死に口を抑えて自分の声を遮るカイトくん。あざといなカイトくんあざとい。とはいえ、弟子にしろ攻撃でレイカ様はお疲れだよ! というか、マジで弟子入りしたいんだ……カイトくん。ヒカリちゃんもなんか期待してるような目で見られても何も言わねえぞ!


「さっさといいなさい。」

「あ、はい! ……その、キシドーさんは凄く強いです。試合をずっと見てましたから……だから、その……レイカさんはちゃんと対策出来たのかなと思って」

「――私の心配? 貴方如きが?」

「はい。だって、レイカさんがロウガくんの試合を見えないように妨害している人がいたので……」


 ん? あー、そう言えばタイミングよくレイジくんが介入してたな。話しかけてきたりとかで。確かに記憶を遡るとロウガくんの試合を観戦出来た覚えがない。

 なるほど。負けた時のことを考えて、一番の敵になりそうなレイカ様にロウガくんの情報を開示しないように立ち回っていたのか。敵ながらあっぱれだ。レイカ様の性格的に他人に頼らないし中身が俺じゃなければ百点の対応だ。


「だから、私は見ていたのでキシドーさんについて……」

「必要ないわ」

「でも……」


 ヒカリちゃんがいい子すぎる……でも、レイカ様を攻略しようとしないでくれ。そこにいるカイトくんにそういう事は言うんだよ。

-

「剣舞会はゴールじゃない。あくまでも先に行くための踏み台でしか無いわ」


 独り言のように言いながら二人に教える。レイカ様という生き様を。

 かっこよすぎてファンが増えちゃうかもしれないな!


「見てなかった程度で躓くようなら、そこまでの人材。小手先の手で潰れるならば、それだけの器だった。それだけよ」


 原作でも変わらないスタンス。だからこそ、自分の器を超える力を求めて闇魔法に手を出したのだ。レイカ様は。

 本当に必要なものを勝ち取るために一度もブレることはなかった。闇魔法に飲まれてすら、彼女の矜持を通しきった。最後の自決ですら、それは彼女であるための行為だった。

 ……うむ、憧れのキャラクターであるレイカ様として、この矜持に恥じないように戦わないと。


「これで納得しなさい」


 その言葉に、二人は神妙な顔をしてこちらを見る。その二人を一瞥してから会場に上がっていく。

 ……うーん、めっちゃいいシーン。CGでみたい。売ってないかな? 買うよ? 言い値で。


(さて、レイカ様……がんばりますよ俺は!)


 限界ギリギリまで死闘をして負ける! これが俺の目標だ!


「よう、アクレージョ。待ってたぜ」

「あら、気を使わせないのは男の甲斐性じゃないかしら?」

「かはは、言ってろ!」


『さあ、お待たせしました……今日、ここに生涯焼き付くような素晴らしい戦いの記憶が残るであろう歴史的な試合です……! アクレージョ様とキシドー様の一騎打ち! 見逃したら一生後悔するでしょう! さあ、準備はいいでしょうか!? それでは――運命の合図をいたします! ……試合、開始ぃ!』


 そして、レイカ様とロウガくんの対決という一大イベントが始まるのだった

初寝坊をしましたが、ギリギリ間に合ったので初投稿です


そして日間ランキング140位の方に居たのを見つけました! 応援してくださりありがとうございます! 嬉しすぎてはしゃいだら寝落ちして寝坊をしてしまいました!

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