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「レイラ、おはよう。良く寝てたね」


私が目を覚ましたのは、次の日の昼過ぎでアイテール様とヴァンは【空の国】の話し合いに出かけた後だった。


「ジェラルドが遊びに来てるよ」


ディザに言われて一瞬で目が覚めた。急いで身支度をすると1階へ降りていく。


「ジェラルド、おはよう」


声をかけるとジェラルドは、優しい笑みで抱き締めてくれた。


「おはよう、お寝坊さん。良く眠れたかい?」


プゥッと頬っぺを膨らました私に「起きてくるのを待ってたんだ」と笑うジェラルドは楽しそうだ。


『レイラ、ブランチはパンケーキとリゾット。どっちにする?』


と、ウェスタに聞かれて「パンケーキ」と即答すると皆に笑われてしまった。


「良かった。元気そう」


ディザがニッコリ笑いながら私の席をジェラルドに教えている。


「あっ、そうだ。後で【エルフの国の世界樹】が遊びに来るって。レイラ、名前考えた?」

「え?そんな暇なかったよぉ」


と、半泣きで答えると「そうだよね、アハハ」とディザは笑っていたけど。急いで名前を考えなきゃね。


『はい、お待たせ。ミックスベリーと生クリームのパンケーキだぞ。お好みでハチミツもどうぞ』


ウェスタの作ってくれるパンケーキはいつでもキラキラと輝いて見えておいしそう。


「うわぁ、おいしそう。いただきます」


早速、パンケーキを食べようとした私のナイフとフォークを隣に座っていたジェラルドがサッと取り上げてしまった。


「ちょっと!私のパンケーキ」


腹ペコの食べ物への怨みは怖いんだぞ。


「レイラには、俺が食べさせたい」


「え?食べさせたいって言った?」と首をかしげている間にジェラルドはパンケーキを一口大に切り分けると器用にベリーと生クリームを綺麗にフォークへ乗せて「あーん」と差し出してきた。


思わずパクリと食べると「おいしぃ」とウェスタの美味しいパンケーキを味わう。


「ほら、もう一口」と、次から次へと絶妙なタイミングで差し出されるパンケーキをジェラルドから食べさせられて完食してしまった。


「竜族の給餌行動、初めて見たよ」


ディザの呟きに「何それ?」と聞くと、苦笑いしながら説明してくれた。


「給餌行動って言うのはね、竜族の男性が番に行う求愛行動なんだ。特別に自分の子供にも行うらしいね」


ディザの説明に赤面しながら聞かなきゃ良かったと後悔した。


「竜族の独占欲は、激しいことで有名だからね。今から覚悟しておいた方がいいよ」


ニヤニヤと笑いながら更に追い討ちをかけてくる。


「レイラが嫌がるならしないけど、出来たら慣れて欲しいな」


こちらは爽やかなスマイルのジェラルド。


「何でかな?ジェラルドとの温度差を感じる…」


ジェラルドと私の間には大きな違いがある気がするんだよね。私の呟きにディザが「それはね」と教えてくれる。


「レイラが成人していないから番への執着がまだ弱いからだよ。ジェラルドは、成人して400年も番を探してやっと見つけたんだから番至上主義の竜族にしては大分抑えている方だと思うよ?」


ディザの答えにジェラルドが補足する。


「流石に子供相手に本気の求愛行動は出来ないよ。レイラが成人するまでちゃんと待っているよ」


ジェラルドの言葉に胸がキュンてした。


「早く大人になりたい」とため息混じりに呟く私にジェラルドがビックリしている。


「俺は、番の幼い姿を見れて、更に成長を見れて育てられる事に感謝してるぞ」


ちょっと、斜め上の返事が来た!と思ったら「竜族の男からしたら真っ当な答えだと思う」と言うディザの突っ込みにちょっと引いた。日本で言うところの光源氏計画的なあれかな?


「あぁ、そうか」と1人納得するディザに目を向けると「ジェラルドにこの世界に来た経緯を話してないでしょ?」と言われた。


「この世界に来たと言うのは…」


と、驚いているジェラルドに前の世界で自動車事故で死んでしまったこと、アイテール様が迎えに来てくれて世界樹の愛し子として世代交代のお手伝いをする約束をしたことを伝えた。


ディザが「省きすぎ!」と、私の両親が早くに亡くなったこと、それから私が独りだったこと、仕事をしていて生涯結婚するつもりがなかったこと。それから、こちらの世界ではアイテール様と仲の良い神様達に気に入られて加護を貰っていること等をバラしてくれた。


いつの間にか私を膝の上に座らせて抱き締めていたジェラルドは、話を聞き終わると「これからは寂しい思いなどさせないからな」と優しく微笑んでくれたのだった。

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