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突然現れた私たちに魔族の人達が臨戦態勢を取る。


「大丈夫だ…。アイテール様、お久しぶりですね。急にどうなさったんですか?」


王座と思われる正面の椅子に座っていた男の人が魔族の人たちに警戒を解くように言いながらこちらに歩いてくる。


長い黒髪にアイスブルーの瞳、濃い褐色の肌に所々、黒い鱗がある。頭には羊のような黒い角が見えている。スラッと高い身長に少し厳ついイメージの有る軍人さんと言ったところだ。


「やぁ、ルシファー。突然すまないね。君にいい知らせと悪い知らせを持ってきたよ」


アイテール様がそう言うと、ルシファー様は「部屋を用意します」と客室に案内してくれた。


出された紅茶を飲んで一息つくとアイテール様は魔王様を見て微笑んだ。


「まずは、よい知らせを。ルシファー、落ち着いて聞きなよ。リリアン嬢が何処に居るか分かったよ」


そう伝えると、ルシファー様からドッと魔力が溢れ出す。


「真ですか!」


立ち上がったルシファー様にアイテール様が「落ち着いて」と苦笑している。うん、魔力が強いとビリビリして辛いと言うのを体感した。


「今、【空の国】の次期皇王ヴィクトリア嬢とリリアン嬢の兄キアランに確認をしてもらいに行っているから。私が良いと言うまでここに居てね」


ニッコリと黒い笑みで話すアイテール様にルシファー様は顔をひきつらせた。


「さて、悪い方の話は。魔族の者が私の娘の命を脅かした」


そこまで聞くとルシファー様は、大きく目を見開いた。


「娘のレイラの他に、人魚の娘と虹の妖精の少女。それから、キアランと【獣王国】の第3王子だ。まぁ、正確には間接的になんだけどね」


そう言って、【エルフの国】で起こった事の顛末をルシファー様は顔色を悪くしながら聞いている。


「黒いシルクハットに黒い服装の少年でジョーカーと名乗った」


そう伝えるとルシファー様は頭を抱えてしまった。


「それは…私の甥のサマエルです」


ルシファー様のお姉さんの息子らしい。ズーンと黒い闇を纏って遠い目になっているルシファー様に同情する。


「そんな訳で、賠償責任はジョーカーにも有りと判断させてもらったからね」


今回、亡くなった人は居なかったけど。皆、長期に渡り拘束され傷つけられていた。


「勿論、【魔国】を代表して責任は取らせて貰います。それから、サマエルにはしっかりと罰を与えます」


そう言うが早いか入り口で控えていた人にサマエルを牢に入れておけと伝えた。


「おっ、ヴァンから連絡来たね」


通信機を繋ぐとヴァンの声が聞こえてきた。


『アイテール様。無事、リリアン嬢を確認できました。ですが、こちらの呼び掛けに全く反応が見られません。急ぎ、ギルドで医師のフリオに診て貰う予定です』

「了解。後で様子を見に行くね」


ヴァンとの連絡を切ると目の前で怒りを抑えているルシファー様に目を向ける。


「悪いけど、ヴァンがギルドに到着するまで待っていてね」


二人のやり取りが終わったようなのでルシファー様に聞いてみる。


「ルシファー様。リリアンさんの居場所、今は分かるんですか?」


突然しゃべりだした幼児に驚いたらしいルシファー様にアイテール様が私の事を紹介してくれた。


「あぁ、この子は、私の娘のレイラ。世界樹の愛し子だよ。それから、隣にいるのが【砂漠の世界樹】のディザ」


アイテール様の紹介に頷くと、ルシファー様も、自己紹介をしてくれた。


「挨拶が遅くなって申し訳ない。【魔国】の王をしているルシファーと言う。この度は、私の甥が迷惑をかけて申し訳なかった。先程の質問だが、連絡が入った直後くらいにリリアンの気配が分かるようになった」


時空牢は、完全にこの世界から切り離されているのかな?今度、ディザに教えてもらおう。


「レイラは、ジェラルドが居る場所がわかる?」


ディザに言われて「分かるよ」と答える。隣でアイテール様が呻いて居るけど聞こえない振りをしておこう。


「地下で目が覚めてからジェラルドの事はずっと意識の端に有る感じがするようになったの」

「へぇ、何をしてるかも分かるの?」


ディザと私のやり取りにルシファー様も少し落ち着いてきたようだ。


「何をして居るかまでは、分からないけど。集中すると嬉しく思っているとか、悲しいとか少しわかるかな?」


そうだ!とルシファー様に質問してみる。


「今のリリアンさんの様子は何か分かりますか?」


私の質問に悲しそうに首を振る。あまり良い状態ではなさそうだね。


「パパ!フリオ先生のところに行きたい」

「そう言うと思った」


そう言うと、ヴァンに連絡してオディロンさんの部屋に転移する許可を取ってくれた。



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