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それから、ディザが天族のお兄さんと虹の妖精さんと人魚のお姉さんを連れて戻ってきた。
「もう少ししたらアイテール様も戻れるって」
皆でお茶をして落ち着くと、お兄さん達の名前をやっと聞くことが出来た。なんせ、あの状況で自己紹介している暇も無かったし。
「私は、レイラ。世界樹の愛し子として世界樹の世代交代の為に【エルフの国】へ来ていたの。パパは、アイテール様です」
私の自己紹介に皆、ビックリしていた。あれ?ジェラルドも一緒に驚いているけど言ってなかったかな?
「私は【空の国】のキアランだ。先程、ヴィクトリアに会って君の知り合いだと聞いたよ。ヴィクトリアとは幼い頃からの友人なんだ」
と言うことは、貴族なのか?このキラキラしい所作は、そういうことだったのか。
「私は【水の国】のイネス=イニエスタ。恋人と別れた傷心旅行に友人と来ていたんだけど、あの王様に捕まってしまったのよね。まぁ、人選ミスだったけどね」
アハハと笑うイネスさんは、とても頼れるお姉さんて感じだ。
『私は、シェル。虹の妖精…強い風に飛ばされて迷子になっちゃったの』
そう言うと、グスンと涙を溢した。
「そうだったんだ。何処に住んでいたか分かる?」
『産まれたばかりだったから…分からない』
さらにポロポロと泣き出して私がオロオロし始めたらディザがお腹を抱えて笑いだした。
「レイラが自分より小さな子に困っているの面白い。あぁ…ごめん。そんなに怒らないで」
プウッと頬っぺを膨らませてディザを睨むと「ごめんてば」と謝って、こんな提案をしてくれた。
「ティターニア様にお手紙を書いて虹の妖精の迷子を預かっています。って送ったら迎えに来てくれると思うよ」
えっ、そんなことティターニア様にお願いしてもいいのかな?と考えていたらアイテール様が帰ってきた。
「難しい顔してどうしたの?」
アイテール様に聞かれてティターニア様にお手紙を書いても大丈夫か聞いてみた。
「どちらかと言えば、喜んで迎えに来ると思うから。手紙を書いてあげて」
それならと、ジェラルドに膝から下ろして貰うとアイテムボックスから便箋と万年筆を取り出してティターニア様にお手紙を書く。その間にアイテール様が皆に今からレイラが治癒を行うことと、口外しないことを約束させていた。しっかり契約書みたいな物まで書いていてちょっとドン引きしたことは内緒だ。
書いた手紙を風の妖精さんに「超特急で!」とポシェットに入っていた飴を渡してお願いした。
「レイラ、用意はいいですか」
ルミエールに声をかけられて一緒に上の服を脱いだキアランさんの診察を始める。背中の翼を元に戻すために左の肩に損傷が無いか確認をする。
「はじめます」
《大地に眠りしマナよ…光の灯火となりて我が友を癒したまえ…生命の記憶に刻まれし形を今…灯火の前に示せ》
魔法陣が展開する様子を今回は落ち着いて見れた。今回は、キアランさんの背中を中心に翼の先まで幾つかの魔法陣が展開している。
翼と背中の筋肉や骨、神経が細かく繋がれていく…フゥと息を吐いてキアランさんの治癒の完了をルミエールと一緒に確認してもらった。
「翼を動かしてみてください」
キアランさんは、立ち上がると恐る恐る翼を動かして「おぉ!」と喜びの声を上げていた。
「元通り空を飛ぶにはリハビリと筋肉を付けないと難しいと思いますので。あまり、無理はしないでくださいね」
ルミエールから注意事項を聞き終わるとキアランさんは、翼をしまってから私の元に来て深く頭を下げた。
「ありがとう!二度と空は飛べないと思っていた…片翼では、ヴィクトリアの手助けが出来ないからね。本当にありがとう」
片翼は一族の恥だからと、お仕事が出来なくなる事を心配していたようだ。ヴィクトリアにも、こうして支えてくれる人達が増えたんだなと嬉しく思う。
次はシェルの羽を元に戻すために背中を見せてもらおうと思ったタイミングでコンコンと扉がノックされた。
「お邪魔するわよ」
と部屋に入ってきたのは、オンディーヌ様とティターニア様だった。
「ティターニア様!早かったですね」
2人の元へ行って挨拶すると「超特急でお手紙が届いたからね」とティターニア様が微笑んでくれた。
早速、シェルをティターニア様に会わせてあげる。
「まぁ…虹の妖精の娘。怖い目に会いましたね。私が迎えに来ましたから、もう大丈夫ですよ」
シェルをそっと両手ですくい上げるとティターニア様が優しく言葉をかけてくれた。
『うぇぇん』
シェルがまたしても泣き出してオロオロする私を見てディザがまた、笑いだした。
「レイラ、あれは安心して泣いているから大丈夫だ」
いつの間にか側に居てくれたジェラルドに言われてホッと胸を撫で下ろす。
「あなたの羽は、私がプレゼントしてあげるわ」
え?妖精の羽ってプレゼント可能だったんだ。




