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それからは、大騒ぎだったー。


まず、この国の王様が世界樹の愛し子を拐って殺そうとしたこと。地下にあんな施設を作って何人も監禁していたこと。しかも、監禁されていた中に他国の王族が含まれていたことは大問題になったようだ。


難しい問題は、大人達に任せて私はお城の一室でシャワーを浴びて着替えさせて貰っていた。地下で走り回って更には天井をぶち抜いたりしたものだからドレスは泥だらけだし、髪の毛は埃っぽかったからとてもスッキリした。


ルミエールにレモン水を貰って飲んでいたら誰かが部屋に来たようだ。


「レイラ、竜族のお兄さんが来たよ」


ディザに言われて振り向くと部屋の入り口には黒い髪の毛に瑠璃色の瞳の美青年が立っていた。身長が高くて少し筋肉質のお兄さんは初めて見る人だけど…。


「ジェラルド?」

「あぁ…」


ニッコリ笑いながら此方に歩いてくるジェラルドに私は走って行って抱きついた。


「やっと抱き締められた」


フワリと石鹸の香りがするからジェラルドもシャワーを浴びてきたのだろう。ギュウッと抱き締められると心の奥の方がとても落ち着く。なのに、目からポロポロと涙が溢れて止まらなくなってしまった。


「ごめん。俺のせいで怖い目に合わせて…それから、この世界に来た時すぐに迎えに行ってやれなくて…すまない。本当は、俺が側に居たかった」


体を離してジェラルドの顔を見ると、ジェラルドも涙を流しながら私を見つめていた。


「アイテール様が迎えに来てくれたから大丈夫だったよ。ディザもヴァンもルミエールも…いつも一緒に居てくれたから寂しくなかったよ。でも、ジェラルドに会えて良かった」


ヘラッと笑う私の涙を指で拭うともう一度私を抱き締めてくれた。気がつかなかった心の隙間が埋まっていく。これが番というものなのかなと実感した。


「レイラ、そろそろ傷の手当てした方がいいんじゃない?」


ディザに声をかけられてグスグス泣いている私の顔をルミエールがハーブの香りがするホットタオルで拭いてくれた。


「ジェラルド、怪我を見せて」


気を取り直してジェラルドに言うと、上に着ていたシャツを脱いで後ろを向いた。


「酷い…」


背中には幾つもの傷痕と未だに血が滲んでいる所がある。一応、内臓や骨に異常が無いことを確認してから《ヒール》で癒していく。


「終わったよ」と言いながら背中に手を当てて他に怪我をしていないか確認をする。


「ありがとう」


ジェラルドはサッとシャツを着なおし、私を膝に乗せてソファに座ると他の人達の怪我の具合を聞かれた。


「彼等は今、王宮の救護所に居ますが…多分、翼と羽を元に戻す治療は難しいと言われているんじゃないですかね」


そう説明するルミエールに「え?」と振り返る。


「翼や羽を背中に戻すことは出来ても、もう一度、空を飛ぶことは難しいでしょう」

「そんな…」


ルミエールが私の前に膝をついてしっかりと目を合わせる。


「レイラの力ならば完治させることが可能ですが、それは同時に今回のような危険も呼び寄せてしまうでしょう。私は、これ以上危険な目に合って欲しくないのでレイラには力の事を隠しておいて貰いたいのです」


ルミエールの気持ちも分かる。今回のような怖い思いはもうしたくない。けど…やっぱり見捨てることなんて出来ない。


「ルミエールの気持ちも分かるけど、僕はレイラの気持ちを聞きたいな」


ディザに頭を撫でられて深呼吸をする。うん?と、目で聞いてくれるディザに感謝する。


「私に出来るなら治したい。でも、私の力にも限度はあるし怖い目には合いたくない…あまり、公にはして欲しくないかな」


「良くできました」とディザが誉めてくれる。


「アイテール様に言って上手くしてもらえば大丈夫だよ。何だったら今回は、レイラを助けたお礼とかにしてアイテール様がしたことにすればいいんじゃない?」


おっと、久しぶりにブラックなディザがお目見えしたみたい。


「僕はちょっと、アイテール様を探しに行ってくるからゆっくりしてて」


スタスタと部屋を出ていくディザをポカーンと見ていた私にルミエールが「ディザも過保護ですよね」と笑っていた。



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