86【エルフの国の世界樹】
今日は、早起きをしてディザとルミエールにドレスを着せてもらって髪の毛を可愛く結って貰った。
今回のドレスは、ロリータ風チャイナドレス。腰辺りに帯をリボンに縛ってスカートの下にパニエを履いてフンワリさせている。髪型もチャイナ風、チリンと鳴る鈴の付いたリボンと簪を付けてくれた。
皆は前回と違って、アイテール様とディザとヴァンは軍服風の衣装を着ている。ルミエールは、前回と同じく魔導師のローブを着ている。
「今回の僕達は、動きやすさ重視ね」
ディザの簡潔な説明に納得する。確かに、私の衣装も前回のドレスより動きやすい。
「いいですかレイラ。この簪は、中にナイフが仕込んであります。それから、腕輪のアイテムボックスが使えない可能性がありますから。このポシェットの中にノートと魔石チョークの予備が入ってますからね」
ルミエールが心配性のおかんのようにポシェットの中身を説明してくれている。飴とお菓子も入っているみたい。
「さて、レイラ。何も起きないに越したことはないけども。ウカの占いが外れたことは無いんだ。もし、何か起きたら慌てずにまず深呼吸をするんだよ。とても怖い事があっても平常心を心掛けるんだ」
アイテール様は、そう言うと私のおでこにキスをしてくれた。
「さあ、行こうか」
今回も一旦、外に出て転移する。「面倒くさい」とアイテール様が文句を言いながら魔法陣を展開させていた。
相変わらずあっという間に【エルフの国の世界樹】の前に転移すると、エルフの国の王族が出迎えてくれた。
「アイテール様、世界樹様、愛し子様。ようこそいらっしゃいました」
穏やかそうなおじ様が出迎えてくれた。このおじ様がエルフの国の王様でオルデニル様。隣にいるのが王妃のセレスティーヌ様で一人息子のクリストフ王太子。
「今日の世代交代をとても楽しみにしていたんですよ」
そう言うオルデニル様にアイテール様が何か返事をしている。本当に嬉しそうだな。
それから、少し離れた所に【エルフの国の世界樹】が穏やかに微笑みながらこちらを見ていた。
「元気にしてたかい?【エルフの国の世界樹】」
ディザが声をかけると嬉しそうに頷いていた。
「ええ、元気でしたよ。あなたは、大変な目にあったと聞いていますよ。大丈夫なんですか?」
肩に手を置く世界樹のお爺ちゃんにディザが私を紹介してくれた。
「今は【砂漠の世界樹】として愛し子のレイラと一緒に暮らしているから幸せだよ」
「はじめまして、レイラです」
ペコリと挨拶すると、世界樹のお爺ちゃんは嬉しそうに私の前に膝をついてニッコリ笑う。
「レイラ様【砂漠の世界樹】を助けてくださってありがとうございます」
「助けたのは、アイテール様だよ?」
首をかしげて答えると
「それでもあなたが居るから今の【砂漠の世界樹】は幸せなんですよ」
と言われてしまった。うん、嬉しい。ちょっとテレていたらディザが世界樹のお爺ちゃんに名前の話を始めた。
「今はね、レイラに名前をつけてもらってディザって言うんだ」
たぶん、自慢したいんだよね。そうだよ!何か忘れていたと思ったら名前を考えなくちゃと思っていたんだ。
「あぁ、名前を呼んでもらえるのは素敵ですね。私にも名前をつけてもらえますか?」
そうなりますよね。
「えっと、考えておきます…」
そんな話をしていたら【獣王国】の王様とお妃様、【水の国】のオンディーヌ様、【空の国】のヴィクトリア様が挨拶に来た。オンディーヌ様達が今日のドレスをとても可愛いと誉めてくれて、何故かアイテール様が一番喜んでいた。
「そろそろ、時間でしょうか?」
世界樹のお爺ちゃんに声をかけられるとアイテール様が「頑張ってね」と背中を押してくれた。
世界樹のお爺ちゃんと世界樹の実をまずは回収する。ここの世界樹の実も大きくてずっしりと重い。
それから、綺麗に片付けられた世界樹の中に入ると早速、世代交代の儀式に入る。
「それでは、お願いしますね」
そう言って私の両手の上に世界樹のお爺ちゃんが手を重ねた瞬間。
バチィーンと大きな音が響き渡って私の周りに魔法陣が展開した。目を走らせると、どうやら転移と私の存在を隠す魔法陣のようだけど細かいところまでは分からない。
「これは…クソッ、アイツ!」
世界樹のお爺ちゃんが私を見て叫んだ。
「エルフの王を信じてはいけません!私の、世界樹の根を見つけたら直ぐに焼き払ってくだ…」
世界樹の世代交代はどうやら出来たようだが、そこで私の視界は暗転してしまった。
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