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アイテール様と世界樹の家に帰ると、ちょうどディザとヴァンも帰ってきた所だった。


『あらあら、お帰りなさい。アフタヌーンティを用意しましたよ。うがいと手洗いをしてきてね』


カネルが用意してくれたのは、オレンジアイスティとデザートはフロマージュにベリーのソースがかかっている。


「はぁ、喉が乾いていたからおいしい」


ゴクゴクとアイスティを飲んで一息つくとアイテール様が先程の魔法陣の話をディザに詳しく聞いていた。


「そうか、天空に魔法陣が描かれるならある程度、遠くにいても分かるね」

「でも、あの規模の破壊力を考えると…何に使うのか予想がつかないと言いますか」


ディザも説明しながら困惑しているようだ。


「使わないに越したことは無いんだけどね」


困ったね、と言うとディザに「それで、ウカの出した課題は出来たって事でいいのかな?」と聞いている。


「大丈夫です」とディザが答えると「よく頑張ったね」と私の頭を撫でてくれる。


「じゃあ、私からは結界の構造について教えようかな」


結界の構造?と首をかしげる私に「覚えておいて損はないだろ?」とアイテール様は説明を始めた。


「例えば」そう言って球体の結界を出現させた。見た目はガラスのようなツルツルした物だ。


「この結界の中に大切なものを保管すれば、盗られないだろ?でも、取り上げた物も大切な物だから保管は必要。つまり、結界の構造が分かれば大切な物を取り返せると言うわけだ」


私の大切な物が何か分からないから備えあって憂いなしと言うところかな。


「レイラには、この結界は球体のガラスに見えているはずだけど、どうかな?」

「ツルツルのガラスの球に見える」


1つ頷くとアイテール様は、私の手を球体の上に置くと「魔力を流して表面をよく見て」と指示した。


球体に置いた手からゆっくりと魔力を流して行くとツルツルだった表面に糸状の網目が見えてきた。


頭にクエスチョンマークが飛び交ったまま球体全体に魔力を流しきると、レースを編んだように綺麗な模様が浮かび上がった。


「これは…?」

「見えたかな?コレが結界の正体、魔力を編んで包む」


手渡された球体をクルクルと回しながら見ていたらアイテール様に取り上げられてしまった。


「さて、ここで問題です」


え?問題形式なの?アイテール様が楽しそうだからまぁ、いいか。


「この結界を解除する方法とは何でしょう」


何でしょう?魔力はアイテール様の方が上だろうから力業では無いだろうし、わざわざこの状態を見せる必要は無い。


それならばと浮き上がった網目をもう一度よく見る。均等に編まれた編み目は芸術レベルで綺麗だ。手編みでここまで編めたらプロだろう。自分がコレを手編みするなら…と考えて、とある場所を目で探し始める。


「あった」


そう、編み物には必ず編み始めと編み終わりがある。どちらかと言えば編み終わりの方が解しやすい。


アイテール様の手の中にある球体にも結界の編み終わりがあった。そして、最後の結び目を見つけたのだ。


「コレをこうして引っ張ると」


結び目を解して糸状の結界をピーーーと引っ張ると結界が解けていく。


「アハハ、正解。でも、ヒント無しによく分かったね」


アイテール様に誉められてニッコリ笑う。


「昔ねレース編みに挑戦したことがあったの。その形に似てたから思い付いたんだよ」

「へぇ、レイラ。レース編みなんて出来るんだ」


ディザが変なところに感心してる。


「ほらね、覚えておいて無駄なことは無いでしょ」


アイテール様がどや顔で言ってる。


「レース編みの原理で説明するなら、解きやすいのは結び目や継ぎ目かな。結界も何度かに分けて作ることがあるからね。強固な結界ほど継ぎ目が多いことがあるんだよね」


成る程、覚えておいて損はないね。


こうして、ウカ様からの課題をこなしている間に【エルフの国】へ世界樹の世代交代の為に行く日が来てしまった。


「今回は、あまり【エルフの国】の観光地を調べてる時間がなかった…」


嘆く私にルミエールが救いの手を差し伸べてくれた。


「私がある程度は、観光案内出来ますから大丈夫ですよ。楽しみにしていてくださいね」


これで、世代交代のお仕事も頑張れる!あれ?何か他にも大事なことを忘れている気がするけど…まぁ、大丈夫かな。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

明日から【エルフの国の世界樹】の世代交代に話が進みます。

もうしばらくお付き合い頂ければ嬉しく思います。

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