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84 お勉強の日〔ヴァン〕

「次は、雷属性だが。これは気を付けないと放電して想定外の所へ飛ぶから集中するんだぞ」

「はーい」


ヴァンは、そう前置きすると親指と人差し指を開いて《サンダー》と呟くと青紫の雷がパリッと現れた。


「これが雷属性の基礎になる。この雷で攻撃をする」


《ライトニング》


バリバリッと結界の外側に雷が落ちた。音と光が激しい。


「ビックリした…」

「弱い魔力で雷を落としてビックリさせて逃げるのもありだな」


じゃあ、やってみよう!とディザに言われて集中する。


《雷撃》


バリバリッと雷が落ちた。おぉ!と喜んでいたらディザに《ライトニング》でもやってみようと言われた。なんでも「威力の確認は必要」なんだそうだ。絶対に面白がっているだけだと思う。


《ライトニング》


魔力に集中して詠唱した途端、青紫の雷がスドーンと大きな音を立てて結界の外に落ちた。


「アハハ、余程の事がない限りコレは使っちゃダメだね」


ブゥとディザを睨むと「ウカ様に言われた魔法はコレより威力があるんでしょ。楽しみだね」と言われてしまった。


「いやぁ、ヤバそうだよな」


ヴァンまで頭をポリポリとしながら困っているけど習得はしないといけないから試すんだけどね。


「レイラは、あの魔法陣の詠唱覚えたの?」


ディザに言われてカンニングノートを取り出した。


「覚えたけど、一応ノートに写してあるよ」


ノートの内容をしっかり確認すると深呼吸する。


「はじめます」



《天空の高き処に揺蕩いしマナよ…紫紺の雲に集い神雷となれ…我に害為す禍に蒼き鉄槌を下せ》



詠唱を始めると天空に大きな魔法陣が描かれていく。詠唱を完了すると同時に魔法陣も完成されて光輝いた次の瞬間、魔法陣が発動した。


ドオオォォォン!!


先程の雷撃の何十倍もの青紫色の雷が激しい破裂音と共に砂漠に落ちて地響きが起きる。


「キャァー!」


さすがに怖くて耳を両手で咄嗟に押さえて座り込んだ。


「大丈夫か?」


ヴァンにサッと抱き上げられてギュッとしがみついた。雷恐怖症だったら絶対に失神してた!


「アハハ!ビックリしたねぇ。あの穴、どのくらい深いか見に行かない?」


ディザは、本当にビックリしたのか疑わしいくらい笑いながら穴の方に歩き出している。ヴァンに抱っこされたまま私達もそちらへ行ってみる。


「うわぁ、何コレ…」


ヴァンは絶句しているし、ディザはお腹を抱えて笑っている。


「池が出来ちゃった?」


先程の魔法陣から落ちた雷撃のせいで砂漠に30メートルくらいの大きくて深い穴が出来ていて、底の方から水が湧いている。


「池が出来るとか、規格外過ぎる…ブハッ」


ディザは、ヒィヒィ言いながらまだ笑ってるし。ヴァンは「アイテール様にご報告した方が…」と呟くと通信機でアイテール様に連絡を入れ始めた。


「アイテール様。すぐに来るそうだ」


「え?」と言った時にはアイテール様が「レイラ~」とこちらに走って来ていた。デジャブ?


「わぁ、凄いねレイラ。地下の貯水池までぶち抜いちゃったんだ。アハハ」


うん。安定のアイテール様です。


「そしたら、結界をこの先くらいまで広げようか」


そう言うと、アイテール様にサッと抱っこされて結界の結晶の所へ連れていかれた。


「今回は、南側へ広げようと思うんだ」


なんで南側だけなんだろう?結界が楕円になっちゃうけどいいのかな?


私の疑問が顔に出たのかアイテール様が少し困った顔をしてこう言った。


「このまま北側に広げて行って【人の国】の人間が結界の中に入ってこられると面倒だからね」


どうやら、世界樹が無くなって不安定な【人の国】の人達が何をするか分からないから北側に森を広げたくないと言うことらしい。砂漠が広ければそれだけこの森に辿り着くのは難しいからね。


「分かった」


うん。と頷いて結界を広げて安定させる。新しく出来た池のだいぶ先まで広げたから当分大丈夫だろう。


「ありがとう」と言って、私の頭にキスをしてくれると「家に帰って一休みしようか」と世界樹のお家まで連れていってくれた。

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