76 お勉強の日〔ルミエール〕
「ただいまー」
玄関で声をかけると「おかえり」とディザが出迎えてくれた。
「光の魔法はどうだった?」
早速、ディザに聞かれて魔力の調整を失敗して目がチカチカしたと報告すると「アハハ、やっぱり?」と確信犯だったことが判明した。
「レイラ、ゴメンってばぁ」
私は今、ディザにプイッとして怒っているアピールをしている。魔力調整が下手な事をあえてルミエールに言っていなくて私が恥ずかしい思いをしたことについてだ。
「午後から僕も魔法の練習に付き合うから、ね!」
本当にゴメン!とディザが謝ってくれたから許してあげることにした。大サービスだからね。
「実は、簡単な攻撃魔法まで出来てしまったので午後からの回復魔法の練習をどうしようかと思っていたのですよ」
ルミエールが「困りましたね」と言うとディザが「なんだ、そんな事か」と言ってヴァンを呼ぶ。
「ヴァン【空の国】のギルドでレイラが回復魔法の練習をしたいんだけど。何とかならない?」
「あぁ、ジーノに頼めば大丈夫だろう。きっと喜ぶぞ」
二人の会話を聞いたルミエールも成る程、と納得している。
「ディザ、どういうこと?」
私だけ理解してない。
「レイラは【空の国】でギルドに登録しているだろ。だから、お仕事としてジーノさんから依頼を貰えば良いんだよ」
あっ、そう言うことか。ルミエールの職場に行くとあれはどこの魔導師だって問題になっちゃう可能性があるけど、【空の国】ではギルドの依頼だから問題にならないね。
「そう言うことならジーノに連絡入れてくる」
ヴァンが通信機を使ってジーノさんに連絡をしてくれている。
「ルミエール。どのレベルまで試すんだ?」
「多分…再生まで行けるのではないかと…」
そう言うルミエールにヴァンが「マジかよ…」と言いながらジーノさんと話をつけてくれたようだ。
「ギルドにケガをしたヤツが来たらジーノが誘導してくれることになった。再生については…オディロンが実験台になってくれるそうだ」
「え?オディロンさん?」
再生魔法って無くした所を元に戻すってことだよね?オディロンさんて何処か怪我してたっけ。
「アイツは、元Sランクの冒険者だ。魔物討伐の際に腕を取られた。それからギルドマスターになったんだ」
「気がつかなかった…」
しょぼんとした私をヴァンは抱き上げると
「【空の国】の機械技術は進んでいてな、日常生活には支障の無い腕を付けられるが、冒険者としては無理がある。有事の際には、後方支援しか出来ないことにアイツは悔しい思いをしているんだ。だから、レイラ。アイツの力になってやってくれるか?」
ヴァンが私の瞳を覗き込んで聞いてくる。ヴァンの真剣な瞳にうん。と頷いて応える。
「でも、出来なかったらどうしよう」
出来なかったら、そう考えるとオディロンさんに申し訳ない。
「アイツは、それも承知の上で実験台になってくれる。大丈夫だ」
ヴァンの首にギュッとしがみつく。私は、沢山の人達に助けられてる。それが、とても嬉しくて涙が出ちゃう。
「大丈夫だ。皆、レイラを応援してるんだ。心配いらない」
背中をトントンと叩きながらヴァンが抱き締めてくれてやっと顔を上げることが出来た。
「俺も一緒に行ってやるから、心配するな」
うん。と頷いてもう一度ヴァンに抱きついた。
【空の国】へ行く前に、ルミエールから回復魔法について教えてもらう。
「怪我の治療については、基本的に治癒を使いますが、再生等の大きな魔法を使う場合にはマナに呼び掛ける詠唱が必要となります」
まず、マナを集めるための詠唱。次にマナを属性の魔力に転換するたのめ詠唱。最後に魔法を発動させるための詠唱が必要になる。
「ですが、レイラの場合。通常の詠唱では上手く発動できないのではないかと思うのですが…」
問題発生です。確かに、この世界の詠唱で魔力をコントロール出来る自信ないな。
「うーん。レイラなら自分の言葉で詠唱出来るんじゃないかと僕は思うんだよね」
ディザがそう言うけど、どこからその自信は来るのかな?
「取り合えずヒールが正常に発動するか試してみたら?」
ディザに言われて頷く。また、魔力の調整が出来ないことを面白がっているんじゃ…。と思うけど、実はヒールについては発動するんじゃないかと思っているんだよね。日本でもファンタジー小説の治癒魔法でヒールと言うのは読んだことがあった。だから、頭の中で理解できているような気がしている。
「じゃあ、やってみるね」
《ヒール》
私の小さな両手の中に淡い光がフワリと広がるとフッと消えた。
「あれ?普通に発動した」
ジロリとディザを睨むと「暴発しなかったね」と笑っていた。やっぱり面白がってたんだ。
「正しく発動していますね…。レイラは、魔力の調整にも謎が多いのですね。ヒールに関しては問題ないでしょう。では、実践と参りましょうか」
と、言うわけで。ルミエールとディザ、ヴァンと一緒に【空の国】のギルドへ行くことになった。
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