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「なんか、お姉さん達に捕まってるね」
「そうですね…」
ルミエールと顔を合わせて「巻き込まれたくないね…」とススッと目立たないように道の端を通りながら小さな声でヴァンに伝言をする。
「ヴァン、お姉さん達を撒いて来て。向こうの甘味処で待ってるから」
ヴァンの耳がピクッと動いた。こちらチラッと見て頷いたのを確認して昨日、売店のおばちゃんに聞いた甘味処へ入る。ちょうど奥の個室が空いていたから、そこで皆を待つことにした。
「毎日、一緒にいると忘れちゃうけど。皆、お顔が整っているから外を歩くとお姉さん達に囲まれて大変だよね」
フゥ、とため息を吐きながらそう言うとルミエールがクスクス笑いながら。
「レイラが居ると、そこに美少女が加わると言うのに何故か女性が近づいて来なくなるんですよね。やはり女として敗けを認めてしまうからですかねぇ」
とケロリと言うルミエール。いつか、女の怨みを買わないように祈っております。
ルミエールとそんな話をしながらメニューを見ていると、疲れた様子でアイテール様たちが入ってきた。
「レイラ、助けてくれたら良かったのに」と、涙目のアイテール様にギュッと抱き締められて顔をしかめてしまった。
「パパ、臭い」
「えっ……」
あっ、また間違えた。チーンと死んだ目をしているアイテール様を見て、あれだ。デジャブ。
「間違えた。パパ、香水臭い」
そう言い直すと、ハッとして《クリーン》とアイテール様とディザ、ヴァンが一斉に唱えて空気が綺麗になった。
「女の人キライ」
ディザがボソッと言ってテーブルに突っ伏していた。
「えっと。次からは助けにいくね」
コテンと首を傾げながらディザに言うと「大丈夫そうな時だけでいいからね」って言うからギューっと抱き締めておいた。
「ディザは、お兄ちゃんだから優しすぎるんだよね」とアイテール様が笑っていた。
皆で甘味を食べて、少し休憩をすることにした。
「レイラ、いい匂いがする」
注文が終わると、隣に座っていたディザが私の首元の匂いを嗅ぐ。
「ディザ、くすぐったい。これはね、ルミエールに練り香水を買って貰ったの」
そう言うと「えぇー、パパが買ってあげたかった」とアイテール様が嘆いていた。
「素敵なお姉さんが居てね、オンディーヌ様とティターニア様のイメージの練り香水を作ってくれたの」
そう説明すると、ルミエールが「これは、レイラをイメージした練り香水だそうですよ」と補足してくれた。
「良く似合っているぞ。俺の鼻でもいい匂いに感じる優しい匂いだな」
ヴァンにも誉められて、とてもうれしい。
「お待たせしました」と、店員さんが甘味を運んできた。
私は、抹茶のパフェ。ディザは、白玉ぜんざい。アイテール様たちはお抹茶と最中を頼んだ。
「いただきます」
ディザと二人で交換しながら甘味を食べ比べする。パフェは、抹茶アイスや抹茶チョコレート、抹茶のスポンジケーキ等。抹茶づくしだけど生クリームが良いアクセントになって美味しい仕上がりになっていた。
「ここは、抹茶が美味しいお店なんだね。ぜんざいじゃなくて抹茶のケーキにすれば良かった」と、ディザが分析していた。
「ディザは、甘いものが好きだよね。アハハ」
と、アイテール様が笑って「また来ようね」と慰めていた。
「レイラ、後は文房具屋さんに行きたいんだっけ?」
食べ終わって食休みをしていたらディザに聞かれた。
「可愛い手帳と便箋、旅行の記録を残すノートとペンが欲しいの。後、のりや可愛いテープって売ってるのかな?」
行きたいお店の下調べをしていた時に「調べた事を可愛い手帳に纏めて持ち歩きたいな」と思ったんだよね。そう、自作のガイドブック。これから、沢山の国へ行くからその度に調べて色んな所へ行きたいし。行った記録を残したい。
「本当は、カメラが欲しいんだけどなぁ」
と呟くと「カメラって何?」と言われて。今、この瞬間を絵として残す物。と説明したら、なんとカメラ有るらしい事が判明。ただし、とても高価だそうです。
「メモリーキューブと言ってね。精密な絵としても残せるんだけど映像として音声も一緒に撮れるんだよ。ちなみに、これね」
と、ディザが指差した先には1センチ四方の金属のサイコロみたいなものだった。ちなみに、私の斜め上に浮いている。
ポカーンと見ていたら「今朝からずっと、レイラを撮っていたんだよ。気づかなかった?」とディザに言われて、ディザを二度見しました。
え?なんで?ディザが私を撮影してるの?頭の中にクエスチョンマークが沢山だ。
「レイラだったら。せっかくの旅行の記録は、撮っておきたいって言うと思ったんだけど?」
「撮っておきたいけど、映像は何か恥ずかしい」
って言ったら、何故か皆に笑われた。後で、映像から現像も出来ると聞いたのでまぁ、良しとしよう。




