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「へぇ、ヴァンて人気があるんだね」


ディザが呑気な声で言っている。確かに人気が有るのは分かるけど、なんかムカムカする。


「レイラ、怖い顔しないの。せっかく可愛い顔が台無しだよ」


ディザに言われて顔に出ていたんだとビックリする。頬っぺを両手でムニムニしてニッコリ笑って見せる。


「うん、大丈夫だね」


ディザと笑いあっていると、さっきの受付のお兄さんが「あちゃー」とやって来た。


「オディロンさんの時間が大丈夫そうだから呼びに来たんだけど、ヴァンさんが駄目そうだね。先にオディロンさんのお部屋に行ってようか」


と、ヴァンの事は置いて行こうとしたら怒鳴り声が聞こえた。


「お前ら今日は、用事があって来たと何度言えば分かるんだ。さっさと散れ」


ヴァンは、こちらへ来るとサッと私を抱き上げるとエレベーターに向かって歩き出した。後からは、何やら悲鳴が聞こえる。


「えぇ、ヴァン様に子供!?」

「しかも、二人も」

「母親はどこの誰よ!」


女性陣の目が怖いのでヴァンの上着に頭を寄せると女性物の強い香水の臭いがする。


「ヴァン、臭い」


つい声に出ちゃった。顔を上げるとヴァンのお耳がペシャンてなってショックを受けた顔をして立ち止まってしまった。


「あ…ごめん。香水臭い」


そう言い直すと、ヴァンは速攻で《クリーン》と言うと自分の匂いをクンクンと嗅いでいた。


「はぁ、ごめん。もう大丈夫か」

「うん、大丈夫」


私がニッコリ笑うと「よかった」とヴァンが笑ってエレベーターに乗り込んだ。


「ねぇ、ヴァン。さっきね、ヴァンがファンに囲まれてレイラを放置しているのを見て怒っていたよ」


ディザに言われて、ヴァンがまた固まってしまった。


「ちょっと、ディザ」

「レイラがヴァンに嫉妬したんだよね」


ディザは、クスクス言いながらそう言うと丁度開いたエレベーターから降りていった。


「嫉妬したのか?」

「だって…」


ヴァンが「うん?」て顔で聞いてくる。


「今日は、私とギルドに来たのに…楽しみにしてたのに…誰かと、何処かへ行っちゃうのかと思ったら悲しくて。あと、ちょっとムカムカした」


そう言うと、私をギュッと抱き締めて「ごめんな、もうしない」と言ってくれた。顔を上げたヴァンは、嬉しそうな顔をしていた。


エレベーターを降りるとディザが待っていてくれて「よかったね」と笑っていた。


すると、奥のドアが開いて「おーい、早く来い」と手招きしているお兄さんがいた。


濃い紫色の髪にヘーゼルで切れ長の瞳のお兄さんが、ギルドマスターのオディロンさんだそうだ。スーツを着崩していて、少し気だるげな感じがする。フェロモンが少々溢れ気味です。


お部屋のソファに座ると早速、オディロンさんが私とディザ、ヴァンを見比べて一言。


「お前、いつの間に子供なんて作ってたの?」


うん、言うと思った。


「防音と人払いの結界を張れ」


オディロンさんが小さく呟くと、キーンと言う音がして結界が張られたようだ。


「レイラ、ディザ。こいつは信用できる。カフスを取れるか?」


そう聞かれてディザの顔を見ると、頷いて私の耳からカフスを取ってくれる。自分のカフスも外すと目を見開くオディロンさんの顔を見た。


「僕たちの事は、極秘事項としてください。表向きは、ヴァンの子供と思わせておけば問題ないと思いますから」

「え…世界樹様。じゃあこちらは?」


私の顔を見て緊張しているオディロンさんにニッコリ笑って挨拶する。


「世界樹の愛し子のレイラです。本当のパパは、アイテール様です」


ペコリと頭を下げて顔を上げると、目元を揉んでいるオディロンさんが居た。


「ヴァン、お前。なんちゅうVIPを連れて来てんだよ」

「昨日、レイラと精霊契約をしたんだ。ちゃんと、ヴァンて名前で認識出来てるみたいだな」


サラッと爆弾を落とすヴァンにオディロンさんが壊れたみたい。ソファにダラリと座るとフゥーと息を吐き出した。


「そっか、やっとお前の主が見つかったんだな。可愛くていい子で良かったな。ヴァンがいい名を貰ったな」


と、ヴァンを優しい目で見る。名前を世界が認識するって言うのは、今までの名前からヴァンと言う名前に認識され直すと言うことらしい。オディロンさんはちゃんと座り直すと私たちに聞いてきた。


「で、このVIPなお子様たちは、何がお望みかな」


これは、ちょっとした試験なのか?ここは、私が説明をしよう。


「あのっ、もう少ししたら私は世界樹の世代交代の為に世界中の国へ行くことになるんです。その時には、観光したり、パパやみんなへのお土産やプレゼントは自分で稼いだお金で買いたいと思って…」


そこまで言ったら上手く言葉が出てこなくなってしまった。


「だから、ギルドに登録して常時依頼の薬草摘みや簡単なお仕事でお金を貯めたいんだよね」


ディザが背中を撫でながら補足してくれた。よかった。


「あぁ、悪い。バカな金持ちのボンボン達が変な依頼を持ってくるから、つい…」


とオディロンさんが謝ってくれたけどしっかり、ヴァンとディザに睨まれてた。



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