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第13話 [ファンクラブ]


 状況が理解できない。

 昨日私に舌打ちをした子とその仲間たちが私に向かってファンクラブを作らせてください?

 意味がわからぬ……。


「え、えーっと……色々聞きたいことがあるけどまず、なんでファンクラブ?」

「それはもちろん、あーしらがあの日、百合園さんに惚れたからです……言っちゃった!」


 舌打ちっ子が頰を赤く染めてそう言ってきた。

 てか一人称“あーし”なんだな。


 あの日とは多分私が女の子の日だった日だろうな。


「それに昨日アプローチもしたんすよ?」

「え? アプローチ??」


 この子からアプローチされたなんて身に覚えがないぞ……。

 舌打ちされたことしか覚えがない。


「昨日百合園さんに向かってキッスしたんすよ?顔が少し強張ってしまいましたけど」

「きす……昨日………あ——」


 そう言われた瞬間、私の脳内に溢れ出した()()()()記憶。

 あーしちゃんが昨日チッと言っていたことが脳裏に走る。


「あれ舌打ちじゃなくてキスだったんかいぃぃぃ!!」


 “チッ”じゃなくて“チュッ”だったのかよ!

 おいおい“ュ”よ、何自粛してるんだ。


「で! 百合園さん、認めてくれませんか!?」


 周りにいる女子たちが私にジッと期待の眼差しを向けていた。


 ふっ……答えなんか決まっている。


「ダメに決まってんでしょ」

「「「「「そんなっ!」」」」」


 皆が声を揃えてがっかりとしていた。


 当たり前だ。中学生の頃の悲劇を繰り返すわけにはいかないのだ……!


「お願いします!私たちのクラスから始まり、他クラスへ、いずれは世界規模のファンクラブにするっす!」

「いや……絶対嫌だよ……」


 ——……ちょっと待てよ……。ここで私が認めなくても、非公式なファンクラブが出来上がってしまうのではないか?

 そしたらさっきのことを有言実行して勢力拡大、そして悲劇が繰り返し……。


「仕方ないっすね……本人が嫌がるなら無理強はしな——」

「ちょぉぉっっと待てぇぇぇ!!」


 私は肩を掴み、立ち去ろうとしたあーしちゃんを引き止めた。


「ど、どうしたんすか…?」

「認めよう! だけどそのかわりに私からルールを決めさせてもらう!!」

「まじっすか!? やったぁぁ!!」


 女子たちはバンザーイといいながら笑顔で喜んでいた。

 それから私は彼女らに私のファンクラブのルールを決めさせてもらった。


 一、私の本当の姿を知っている者はそのファンクラブに勧誘すること。

 二、何も知らない者は勧誘しないこと。

 三、表舞台に立たず、影から見守ること。

 etc…


 中学の悲劇を繰り返さないように色々とルールを決めた。


「了解っす! では“百合園さんオフィシャルファンクラブ”開設っす!!」

「「「「「おぉぉぉ!!」」」」」


 ふぅ……なんとかなったか……。これでひとまずは安心だろう。


「じゃあそれは任せるわ」


 あーしちゃんの肩に私の手をポンっと置き、そう言った。


「了解っす! 隊長としてこの“漣 空音(さざなみ そらね)”が仕切っていくっす!」

「任せた」


 名前をここで初めて知った。

 まあでも私の中ではあーしちゃんがしっくりきてるからそう呼ばせてもらうか。

 っていうかなんで自分のファンクラブを自分で決めるという恥ずかしい思いをしなきゃならなかったんだよ……。


「ああ、恥ずい恥ずい……」


 淡い朱色に染まった頰を指でぽりぽりとかきながら私は真雪ちゃんの元へと向かった。

◾︎漣 空音〈さざなみ そらね〉


髪色 藍色

髪型 お団子ヘア

目の色 黒色

身長 百合園と同じくらい


[メモ]

・百合園ファンクラブの隊長。

・百合園に惚れているが手は出さないと決めている(理由は後々)。

・作者は名前がおしゃれに名付けられたと思っている。

・なぜ後書きにこれを書いたのか?それは単にこの回書いてから「あっ、情報書いてない」って気づいたからです。てへぺろっ☆←可愛くないですねぇ。

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして.初見で塙海といいます. こんばんは. 珍しく,自分が起きてしまったので,明日休みなのを思い出してたまたまこの小説を見かけたので見ました. 凄く面白いですね. 一話から一三話まで…
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