皇宮に連れて行かれて両陛下にご挨拶させられるなり、私がルードの婚約者だと言われました
「さて、邪魔者が消えたところでそろそろ行きましょうか」
さらりとエルザ様かおっしゃられた。
「行くって、どこにですか?」
不思議そうにルードが聞く。
「そんなの皇宮に決まっているでしょ」
「「はい?」」
ルードと私は目が点になった。
いや、ルードは良いよ。自分の住まいだから。
でも、何故、私が皇宮なんて畏れ多いところに行かないといけないの?
私は全く判らなかった。
「母上、一体どういうことですか?」
ルードが私の代わりに聞いてくれた。
「どういうことって言ってもそのままの意味よ。お義父様もお義母様もクラウちゃんに会いたいって言うのよね。ずっとそう言われてたんだけど、ルードが全然連れてこないから、私に連れて来てほしいって言われたのよ」
何でも無いようにエルザ様は言われたけれど、
「いや、母上、クラウを皇宮に連れて行くのは早すぎるでしょう」
ルードが突っ込んでくれた。
早すぎるという問題ではなくて、それ以前に私自身が陛下のいらっしゃる皇宮なんて行くのはおこがましいと思う。
「早すぎるということはないわ。クラウちゃんにしても、陛下のお言葉でオイシュタット家が伯爵位に返り咲いたんだから、お礼くらい言っておかないといけないでしょ」
「えっ、でも、私、皇宮なんて畏れ多くて」
確かにエルザ様が言われることは正論だが、属国の貴族の娘に過ぎない私には敷居が高すぎるのだ。
「何言っているのよ。我がライゼマン家にとっては皇宮は第二の我が家よ」
「いや、それはエルザ様とルードにであって」
「あなたもライゼマン公爵家の一員なんだから、陛下にご挨拶するのに早すぎるということはないわ」
「えっ、いや、そんな」
一員と言っても端役だし、そもそも属国の令嬢なのだ。
「さあ、行くわよ」
「ちょっと母上」
「エルザ様」
でも、唖然としている間に、エルザ様はルードが止めるのも聞かずに強引に私の手を引いて歩き出されたのだ。
皇宮は学園から馬車ですぐだった。
巨大な門が見える。
馬車は当然のごとく何の誰何も受けずに門をくぐった。まあ、皇太子妃とその息子が乗る馬車だから当然なんだけど……
そのまま馬車は馬車留まりを抜けて、中に入っていく。
その先のゲートに立っている近衛騎士にはさすがに誰何されたが。
「ご苦労様。お義父様とお義母様の所にクラウディア・オイシュタット伯爵を挨拶に連れていくのよ」
「オイシュタット伯爵様ですか?」
近衛騎士は馬車の中を不思議そうに見渡したが、皇子以外は私しかいない。
「この前、カッセル王国の国王陛下がいらっしゃったでしょう。その時に男爵位から伯爵位に戻すように皇帝陛下がおっしゃられた令嬢よ。私の親戚でルードの又従兄弟になるわ」
私が頭を軽く下げると、
「はっ、了解しました」
心なしか、近衛騎士さんの顔がひきつっていたような気がする。
それに考えたら、私は制服だった。
制服で皇帝陛下にお会いしても問題ないんだろうか?
ルードに小声で聞いたら、
「俺も制服だから問題ない」
って言ってくれたけど、それはルードが、陛下のお孫さんだからいいんじゃなくて?
でも、もう遅い。
私はあきらめた。エルザ様も何も言わないんだから、いいだろう。
馬車は皇宮の中でも一番奥まったところにある大きな建物の玄関で止まったのだ。
「いらっしゃいませ」
玄関に揃った侍従や侍女が頭を下げて迎えてくれた。ここにいるだけでも数十人はいる。
どれだけたくさんの人が働いているんだろう?
ルードが真っ先に馬車を降りて、エルザ様が降りるのを手伝う。そして、その後、私を下ろしてくれた。
そして、エルザ様をエスコートすると思ったのに、ルードは何故か私に手を差し出してくれるんだけど……
「えっ?」
私が固まっているが、
「さ、クラウ、行くぞ」
ルードに言われて、仕方なく、私はその手を取った。
周りの侍女達が、一瞬目を見張ったように見えた。
私は少し、赤くなって、そのまま、連れていかれたのだ。
私達は偉そうな、侍女に応接間に案内された。
「まあ、遅かったじゃない。エルザ。待ちくたびれたわ」
皇后様が、おっしゃられた。
「申し訳ありません。大司教に邪魔されまして」
「大司教が、何か言ってきたのか?」
皇帝陛下が、不機嫌そうに口を開かれた。
「私の息子にあの無礼な聖女を娶せると、申されたので、断りました」
「そうか」
「あなた、それで宜しいのですか?」
「魔物討伐には問題があるかもしれんが、騎士団が何とかしてくれよう」
陛下は後ろに立っている立派な軍服を着た男を振り向いた。おそらく騎士団長だ。
「出来る限りの努力は致します」
「ピザンの孫もおるし、問題はなかろう」
陛下も平然とおっしゃるんだけど、聖女がいなくて対処出来るんだろうか?
私には良く判らなかった。
「それよりも早く紹介してほしいわ」
皇后様がおっしゃられた。
「そうですわね。私のいとこのエレオノーラの娘でカッセル王国の伯爵でもあるクラウディア・オイシュタットです」
「クラウディア・オイシュタットと申します」
私はカーテシーをした。
一応、アデライド先生に鍛えられているので完璧なはずだ。
「うん、エデルガルトに良く似た銀髪だな」
「本当に彼女の若い頃にそっくりね」
両陛下は私を見て、頷かれた。
「さ、座ってもらって」
私は皇后様のお言葉に甘えて座ったんだけど、なんと、エルザ様とルードの間に座らされたのだ。
皇家の面々に完全に囲まれているんだけど……
これで皇太子殿下がいれば全員なんじゃないか?
「いやあ、やっと、孫の婚約者に会えたわ」
皇后様が、おっしゃったんだけど……
私はその言葉に固まってしまった。
「えっ」
私はその皇后様の言葉に固まってしまったんだけど。
ええええ!
私、ルードの婚約者になっているんだけど、どういうこと?
私は慌ててルードを見ると、ルードは視線をそらしてくれた。
「あら、あなた聞いていなかったの?」
皇后様が驚いた顔で私を見られた。
「はい」
私は頷くしかできなかったのだ!
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
クラウに出てきたいきなりの婚約話、詳しくは明日の予定です。
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