ルード視点 コンスは黒死竜を叩き斬りました
「なんか、もうひとつ物足りんな!
どれもこれも出てくる魔物は私の前では敵にもならんではないか」
なんか、不満そうにコンスが言ってくれるが、俺らにとってはコンスが易々と倒してくれる方が絶対に良い。コンスが本気を出して戦う相手など、天災級の化け物なのだ。
そんなのが出てきたら、たまったものではなかった。
下手したら帝都が壊滅するかもしれないし……
俺達はその後すぐに馬に乗って北の森に向かった。しかし、魔物とは中々出会わなかった。
「どうなっているんだ。皆コンスに畏れをなして逃げ出したのか?」
カスパーが言ってくれるが、
「いや、それはないと思うぞ」
俺は否定した。
魔物があれだけのはずはないのだ。
もっといるはずだ。
俺達は隊列をなして、警戒しながら、馬を走らせた。
北の森の中に入っても、魔物はいなかった。
絶対に変だ!
俺らが益々不審に思い出した時だ。
我々の先に男が一人立っているのが見えた。
魔物ではなくて、本当に普通の人間だった。
その男がポツンと一人で立っていたのだ。
「ん? 何奴だ?」
コンスが呟いた。
「あれは、ロメウスだ!」
俺はその男の顔を見て、叫んでいた。
「ロメウス?」
「クラウを継母らに襲わせた司祭だ」
俺がコンスに言った。
「そうか、ここで会ったが100年めだな」
嬉々としてコンスが宝剣ミネルヴァを抜いたのだ。
「ほう、ピザン家の跳ねっ返り娘か。我に敵うと思っているのか?」
不適な笑みを浮かべてロメウスは言い放った。
「フン、しゃらくさい。一撃で葬ってくれるわ」
「コンス、気を付けろ! あいつからは禍々しい気を感じるぞ!」
俺はやる気満々のコンスに忠告した。
「喰らえ! サンダーボルト!」
コンスが宝剣ミネルヴァを振り下ろした。
雷撃が宝剣から飛び出して、ロメウスに直撃する。
普通の人間なら瞬時に丸焦げになっていただろう!
しかし、あろうことか、ロメウスはその雷撃を撥ね飛ばしたのだ。
横の林の中を雷が走る。
ピカッ、
ズドーン!
凄まじい閃光と爆発が起こる。
俺達は爆風を避けるために思わず地面に伏せた。
「フン、それだけか。大したこともない」
ロメウスが馬鹿にしたように言うや、
「喰らえ!」
今度はロメウスが叫んだ。
爆裂魔術がコンスを襲う。
「ふん!」
コンスは飛んできた火の固まりを宝剣で弾き飛ばしていた。
ドカーン
コンスの横の森に爆裂魔術が破裂した。
大きなクレーターが出来る。
俺達は爆風に飛ばされないように、地面に生える草木や、根にしがみつくしかなかった。
「おのれ、喰らえ!」
次はコンスが爆裂魔術を放った。
ロメウスはなんと片手でその魔術を弾いたのだ。
ズドーン!
今度は逆の森に着弾する。
「これでも喰らえ!」
続いてロメウスが、雷撃を放った。
「ふんっ」
コンスが宝剣で弾く。
ピカッ
ズカーン!
今度は俺らの頭の上を光が走った。
遠くの小山に激突して、瞬時に小山が消滅した。
それから二、三回、お互いが攻撃し合って、弾き合う。
その度に俺達の周りに着弾して、俺達は立つことも出来なかった。
でも、変だ。
何故、超弩級天災級のコンスに司祭に過ぎないロメウスが対抗出来るんだ?
普通はあり得ないことだった。
こいつは何かがある。
俺が確信したときだ。
「跳ねっ返り娘のくせに少しはやるようだな」
ロメウスは笑ってくれた。
「ふんっ、司祭風情が私に対抗出来るなんて事は本来あり得ない。貴様人外の化け物だな! そろそろ正体を現せ」
コンスが挑発した。
「はっはっはっは! よかろう、小娘。我が姿を見て驚きのあまり腰を抜かすなよ」
「ふん、貴様こそ、この宝剣ミネルヴァの剣の錆にしてやるわ」
コンスがけ剣を掲げた。
「グウォーーーー」
次の瞬間、ロメウスの体の筋肉がはじけ飛んだように見えた。
そして、ぐんぐんロメウスがでかくなっていく。
な、何だ?
俺にはどうなったかよく判らなかった。
ロメウスの周りにもわもわした黒い霧が立ちこめる。
それがロメウスを包んだ。
そして、そのモヤモヤが無くなったとき、そこには真っ黒の巨大な古代竜がいたのだ。
そう、それは黒死竜と呼ばれる、ゾンビと化した巨大な古代竜だった。
「グウォーーーー」
黒死竜は変身が完了すると同時に雄叫びを上げて、恨みの赤い炎の塊をコンスめがけて吐き出したのだ。
それはコンスを直撃した。
ズカーーーーン
大爆発が起こった。
爆風が俺たちに襲いかかって、さすがの俺たちも吹き飛ばされた。
「グッ」
俺は地面にたたきつけられていた。
「大丈夫か?」
同じく近くに叩きつけられたカスパーが俺に聞いてきた。
「何とかな」
俺は頭を振って立ち上がった。
コンスのいたところを見る。
爆煙が消え去ったときに、真っ黒になったコンスがいた。
「ふんっ、トカゲゾンビの下等生物のくせに、中々やってくれるな」
跪いていたコンスが立ち上がった。
「ほう、今のを受け止めたか、でも、我はこんなものでは無いぞ」
ロメウスの意思をもった黒死竜はそう叫ぶと、また口を開いた。
巨大な赤い炎がコンスを襲う。
「ミラー!」
コンスが叫ぶとコンスの前に巨大な鏡のようなものが現れて、
赤い炎を反射した。
それはそのまま、黒死竜を襲う。
黒死竜は首を横に動かして避けた。
遠くの森に着弾して爆発が起こる。
「喰らえ!」
次々に黒死竜はコンスに怨念の籠もった赤い炎を吐き出す。
しかし、次々とコンスはそれを反射した。
黒死竜の周りに次々に爆発が起こる。
俺たちにはそのたびに爆風が襲いかかる。
俺たちは必死に地面に伏せてそれを耐えた。
そして、次々に反射するコンスの反撃の一部が黒死竜の体に命中したのだ。
ズドーーーーン
凄まじい爆発が起こる。
「おのれ、貴様。よくも、この黒死竜様を攻撃してくれたな」
黒死竜と化したロメウスは怒り狂った。
「もう、許さん、ここで勝負をつけてやるわ」
そう叫ぶとまがまがしい黒いもやがどんどん黒死竜に集まってくる。
それを目一杯集めて圧縮するや、
「喰らえ」
その暗黒の塊を赤い炎に乗せて黒死竜はコンスに向けて吐き出したのだ。
ズドーーーーーン
凄まじい爆発が起こった。
さすがのコンスもやばいのではないか。
俺も不安になるほどの爆発だった。
爆風が消え去ったときに、そこには巨大なクレーターが開いていた。
コンスはどこにもいなかった。
「わっはっはっはっは」
黒死竜は大笑いしたのだ。
「愚かな奴じゃ。俺様に逆らうとは」
そう叫ぶと、周りをぎろりと睨んだ。
「では残敵を掃討するとするか」
俺は戦慄した。
コンスですら倒せなかったこの化け物に対処できるわけは無かった。
「なんだ、それでもう終わりなのか」
しかし、コンスの心底馬鹿にしたような声がクレーターの底から聞こえてきた。
「な、何だと」
黒死竜が驚いてクレーターを見る。
「な、何だ」
「コンスの亡霊か」
俺たちがクレーターを見ると、その底がもぞもぞ動き、底を突き破ってコンスが飛び出したのだ。
「な、なんと、貴様生きておったのか」
黒死竜は驚愕した。
「ふんっ、今までは肩慣らしだ。
ではそろそろ私も本気で行くぞ」
そう言うとコンスは宝剣ミネルヴァを抜刀したのだ。
そして、黒死竜に向けてまっしぐらに駆けだした。
「な、何を、喰らえ!」
赤い炎を黒死竜は次々に吐き出すが、それをコンスは次々に避けていく。
起こる爆発をものともせずに、コンスは黒死竜の前で大きく飛び上がった。
「グウォーーーー」
最後のあがきとばかりに黒死竜は巨大な炎を吐いたが、それを躱して、コンスは剣を斬り下げたのだ。
次の瞬間、コンスの宝剣ミネルヴァが黒死竜を真っ二つにしていたのだ。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
史上最強の天災級の化け物黒死竜もコンスの前に倒されてしまいました。
よろしければブックマーク、広告の下の評価☆☆☆☆☆を★★★★★して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾
皆様の応援のおかげで私の小説の第三巻がコミックシーモア様から先行発売されました。
果たして、お義兄様の想いはエリーゼに通用するのか?
山場です。
『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… そのお義兄様から「エリーゼ、どうか結婚してください」と求婚されました。【シーモア限定特典付き】』
二万字超の新規書下ろし、エリーゼとお義兄様の学園の幽霊竜退治のお話付きです。
シーモア限定SSはエリーゼの護衛騎士セドリックのお話です。
おだやか先生の素晴らしい表紙絵と共に楽しんでいただけたら嬉しいです
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/3/
10センチ下にはその表紙絵と各リンク張ってます
よろしくお願いします








