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その感情には“色”がある  作者: 杜野秋人
【閑話集1】
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〖閑話2〗第二幕:アフェクトス収集クエスト実装(1)

 ナユタさんが一旦地下に降りるというので見送って、引き続きパソコンで色々と検索を続ける。トレンドの話が出たのでネットニュースも検索してみた。

 怖いけど、もう気になって仕方ないし。


 うわ、やっぱりハルの大好き発言が炎上してたのかよ……。

『Muse!ハル、熱愛発覚!?』

んなわけあるかいっ。


 んー、やっぱり『マスター』呼びに対する批判がちらほら見えるなあ。

 でも、そこまで批判一色でもなさそうなのはちょっと安心した。むしろ、レイたちの想いをファンのみんなは肯定的に捉えてくれているような感じだ。ハルの炎上も、批判というよりはハル推しのファンたちのロス騒ぎみたいな印象だった。

 じゃあまあ、ちょっとは安心か。


「ネットの反響を見てたんですか?」


 オペレーションルームに行ってたナユタさんが戻ってきた。意外と戻ってくるの早かったな。


「ええまあ。あれ以来全然ネットは覗いてなかったもんで」

「心配するほどの事もなかったと思いますよ?」

「……みたいですね。ちょっと安心しました」


 時計を見ると7時前、そろそろ朝食の時間だ。


「ぼちぼちリビングにみんな集まってくる頃合いかな」

「あ、もうそんな時間ですね。桝田さんも顔を出されてはいかがです?」

「そうですね」


 そう答えて、アカウントを閉じて席を立った。




  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆




 朝食はいつも通りバタバタで。例によってみんなして食べさせようと殺到してくるから、左手で箸使って見せてやった。


「なっ、なんで左手でお箸使えるの!?アンタ右利きでしょ!?」

「俺、右利きって言っても両利きに近いんだよ。元から左で出来ねえのって絵や文字を書く事と箸を使う事ぐらいだったんだけどさ、昔入院した時に左手で箸使うの練習したことがあってね。

いやあ、練習したら意外と出来るもんだわ」

「いや……ちょっと練習したからって普通できるようにはならないわよ……」


「素晴らしいわマスター!出来ない事にも果敢にチャレンジする姿勢、私たちも見習わなくてはね!」

「さすがマスターですね!すごいです!」


「……ウソでしょ。私絶対ムリです」

「ハルも、ちょーっとムリかなあ~」

「わ、私も……左手のお箸はちょっと……」

「……つうかオメェ、ホントに何でもできやがるのな」


…まあ、僕が左利きなんだけどね。



 そんなこんなで朝食を終えて、仕事に行くみんなを見送る。今日の午前中はオフが誰もいないみたいで、リビングに独り取り残される。

 なのでまあ、しばらくは新聞を読んだりTVを点けたりしてのんびりと暇を潰す。なんか普通に、休日の朝って感じ。まあ平日なんだけど。


 ふと時計を見ると、ぼちぼち9時になろうかというところだった。今日は午前中にホスピタルに寄るように言われてるし、もうしばらくしたら下に降りるかな。

 つうか、ホスピタルって何時から受診できるのか聞いてねえな。⸺あ、でもササクラ先生とか常駐してないって話だったし、もしや俺が行くタイミングに合わせて呼び出してたり?

 だとしたら、ちょっとなんか申し訳ないな。


 まあそれはともかく、ホスピタルの前にちょっとシミュレーションルーム寄ってくか。



 研究棟へ向かい、1階のシミュレーションルームに入って、シミュレーターのコントロールデスクの画面で『デイリークエスト』と表示されてる部分をタップする。

 このコントロールデスクの画面ってタッチパネル式なんだよね。もちろんキーボードとコントロールパネルでも操作できるんだけど、俺はスマホ式にタップするほうがやりやすいかな。


 おー。本当に曜日ごとにアフェクトス収集クエストが実装されてる。なるほど、エネミー種別が固定式で、強度の方を変更できるようになってるわけね。ってことはあの子たちの戦闘習熟度によって難易度を変えりゃいいってことだ。

 これならマイも安心だな。


 スコアを確認してみる。一番回してるのは誰かと思えばやっぱりマイだ。まあ彼女は自分が経験値不足なの分かってるもんな。

 そんで次にリン。これは十中八九マイに付き合ってるせいだな。同じくマイに付き合ってるユウが三番手で、リンとの差は負傷して休んでた分の差だろうな。


 どの色のアフェクトスがどれだけ溜まってるかのデータも見られるようになっていたので、それも開いてみた。

 うーん、やっぱり紫怨(パープル)がダントツに少ないな。ネガティブな感情も大事なんだけどな。


 ひと通り確認したあと、ログアウトしてコントロールパネルを閉じる。みんながあれだけ回してくれてるのなら、なるべくそれ以外の時間は機械を休ませとく方がいい。

 さて、ホスピタルに行くか。



 ホスピタルでギプスを一旦外して、肩の患部の状態を見てもらって薬を替えてもらう。その際、スプレー麻酔をしてもらった上で垢落としもやってもらう。まだ風呂には入れないから、これは事前にお願いしていた事だ。

 何しろ年頃の女の子に囲まれてるからね。いくらギプスしてるからって臭いのはNGだろ。


 ていうか、ホムンクルスとはいえ女の子に身体拭かれるのってなんか恥ずいんだけど!?

 ちなみにふたり出てきたので名前を聞いてみたら、片方はアハトだったけどもうひとりは“(ノイン)”だと名乗った。いや9人目いるんじゃん!一体ホムンクルス何体いるんだよ……。


 全部終わってみれば、ギプスがまた少し軽めのものに変わっていた。具体的には、右手の手首から先が解放された。肘まではまだ動かせないけど、それでも下腕に空気が当たるのが心地良いし、何より指が動かせるってだけで感動する。

 アハトとノインに手伝ってもらいながら、ホスピタルから支給されてる袖のゆったりした前開きの上着をギプスの上から羽織る。

 ギプスの間はずっとこれなんだけど、見た目はなんか和服を着流してるみたいに見えるのでちょっとだけお気に入り。ちなみに下はゆったりめのスウェットを履いてる。こちらは自前。


「肩甲骨に影響するので肘関節まではまだ固定させてもらいますが、手首から先はそろそろリハビリを始めましょうか」


 ササクラ先生にそう言われた。要するに、衰えないように手首と指先の関節と筋肉は動かせ、って事だ。

 どうでもいいけど、この人なんで魔防隊なんかの仕事してんのかね?

 なんか、って言ったらアレだけど。医者としての腕も良さそうだし、開業医とか、どっか大手病院に招聘されたりとかあってもおかしくな…………あ、常駐(・・)してない(・・・・)ってそういうことか!






いつもお読み頂きありがとうございます。

次回更新は10日です。



「なんかスマホゲームの説明みたい」と思ったそこのあなた、正解です。

元作品がスマホゲームを元にした二次創作なので、作品の設定の一部にゲームの設定が残っています。ホントは全部削除して書き換えるべきなんだけど、ストーリー展開にも関わってくるのでちょっとムリでしたorz

そうした「残ってる設定」は、そのゲームをやってたユーザー(マスター)さんには懐かしく思えることかと思います。そういう感想なども頂けると作者が喜びますので、もしもありましたらよろしくお願いします!

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