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弱虫の反撃③

少しづつ、戻っていく当たり前の日常。

思いの外盛り上がって話が出来た私は、部屋に戻ると、すごくホッとしていることに気がつく。ただ…今はまだ、麻衣子さんと少しお話が出来ただけだ。それでもちょっとくらいは進めたのではないだろうか?


それから、布団に入りスマホを眺める…。なんだろう?これが日常で、これが当たり前で、なんなら少しだけ好転したはずなのに、なにか物足りない…。時刻は22:34。旅をしている時、この時間はどうしてたっけ?確か…時間なんてあんまり気にしてなくて、気づいたら日付が変わっていた。なんて事が沢山あったなぁ…


「みんな今頃なにしてんだろ…?」


そう呟いて、少しだけ寂しくなる。なんとなくメールを開くと、1通のメールがきている。


「そう言えば…パパからのメールめんどくさくて通知きっちゃってたんだっけ…」


そういって開くと、宛先は翔馬。


『おつかれ、今のおまえ超カッコイイから、魔王城に向かう勇者みたいだから(笑)大変だと思うし、頑張れとかは言わないからな。何かあってどうしようもなくなったら、何時でも連絡くれよ。全速力で走っていくから。てか、場合によっちゃ、飛んでいくから!(笑)負けるな、優愛!』


「ふふふ、魔王城って…なにそれ! 負けるな…か…。」


返信しようと思い、メールを打ち込む。


『今日は麻衣子さんと、少しお喋りをしたよ。ちょっとは前に進めたかな…?それと、』


「それと、ありがとう。翔馬達のおかげだよ…」


途中までうって、手を止める。なんとなく、今返事しても舞い上がってしまっているだけのような気がする。


「ちゃんと、もう少し納得してから返そうかな…じゃないと甘えちゃう気もするし…時間も、寝てたら悪いし…。」


そう考えてスマホを充電して眠る体制を整える…。目をつむると、なぜか翔馬に無償に会いたくなる…。てか、翔馬は今何してるんだろう…どこかで野宿かな?それとも布団に入ってるのかな…?リサちゃんと一緒に寝てるのかな…?なんだろう?むずむずする…



「ううううぅぅぅうあああああっ!!」


バサッ!!と上半身を起こす。


「やっぱメールしてみよっかな…いやいや、でも一度決めたことだし、甘えすぎるのはダメだよね…。ていうか、翔馬は少しだけ女の子にだらしない気がする! リサちゃんおっぱいおおきいしなぁ…」


自分の胸をみて、「はぁ~」とため息をはく。どうあがいても、勝てない。大人の魅力とはなんとズルいのだろう?あれは男の子でなくても見てしまう。


「翔馬やさしいからなぁ~…ああああ…ちょっとえっちだしなぁ…」


なにしてんだろ私…。


「寝よう…」


もう一度、布団にたおれこむ。そんな風に、私の帰宅一日目は終わるのだった。――


――翌朝。



パパにこっぴどく叱られる。もう、本当に泣いてしまうくらい怒られてしまった…。


パパは、仕事の泊まり明けにもかかわらず、私を床に正座させ、


「どれだけ心配したと思ってるんだ!!メールは返さない時もあるは、電話にでないときはあるはッッ!!麻衣子さんには謝ったのか!?羽太くんにはッッ!!?おまえは昔からそうだッッ!!心配ばかりかけてッッ!!何かあったらどうするつもりだッッ!!」



これだけでもまだ一部だけだ…。男の子と旅をしていた話をしてからも凄かった。もう、本当に…。年頃の娘だからだろうか?なんなら大声で避妊がどうとか言う話までされてしまった…。でもまぁ、これが愛情というやつなのだろう。それだけ多方面で心配してくれていたのだ。そこは素直に申し訳ないと思う。…うぅ~てか、ごめんなさい。偉そうに愛情なのだろうとか上からでごめんなさい…。


「わかったのかッッ!?」



「はい…」



私がへこんでいるのをみて、「もういい。まあ、…怪我もなくてよかった」と、そういって、パパはリビングを出ていった。そのあとすぐに麻衣子さんが声をかけてくれる。その優しさがまた少しだけ辛くて凹んでしまう…。だが、きっとこれが正しい姿なのだ。私は、慰めてくれる麻衣子さんに言う。


「やっぱり怒られちゃうと心が痛いんだね…へへへ…」


最後に少し笑ったのはちょっとした強がりだ。怒られて、慰められて…これが、私の家族。和人くんのところとはちょっと違うけれど、形はまだまだ(いびつ)かもしれないけれど、これから丸くしていけば良い。


川を転がる石に角なんかない。割れたガラスが海で先を削られるように、根の切れてない花が再び花を咲かすように。


ゆっくりと積み上げていこう。それまでは、この嘘のない言葉をくれる親のありがたみをしっかりと覚えておこう。そう思った―。



――それから、その日の夜…私は、荷物を片付けたりして眠りについた。更に翌日、スマホでとった写真を1日かけて整理する。意味の分からない写真や、いつ写ったんだろうってくらいブレブレの写真があったりする。


「結構撮ったなぁ…」


呟いて、1枚の写真を眺める。


船の上で翔馬、私、リサちゃん、多鶴子さんと四人でとった写真。それから、メールに付属されていた


翔馬とリサちゃんがバイクにまたがり、翔馬の後ろに油性ペンで雑に書かれた『優愛』の文字の紙を張り付けた荷物とが写っている写真。きっと、いつでも一緒だとでも言いたいのだろう。


「ふふふ…。」


私はこの雑な写真をわりと気に入っている。だって見てるだけで旅を思い出せて、勇気が出るから。


ふと、外を見ると日がくれている。


「没頭しすぎでしょ…もう外薄暗くなってる…。」


そして、写真効果もあってか翔馬の声を聞きたくなる。


「こ、これは甘えとかじゃないもんね、とりあえず落ち着いたんだから、ほ、報告だよ!」


とりあえず一段落したことを報告しようと翔馬に電話をかける。




{「もしもし?」}



「…もしもし?へへへ…今何してた?」


たった2日ほどなのに、その声に懐かしさを感じる。


{「そうだな…188cmあるイケメンに全裸で迫られたり…はたまたおっさんと青年が抱き合ってるのを見せつけられたり…」}


あいかわらずだなぁ…。いやでも…え?これ本当なのかな?


「ははは、なにそれぇ…! え?マジ?」



{「いやまあ…いろいろあったよ。たった数日なのに、いろいろな。」}


旅を続けているふたりが羨ましい…、まぁ自分で選んだんだけどさ…。


「いいなぁ、私がいなくなった瞬間から、なんか楽しそうなこといっぱいだね…」



{「ははは! 何いってんだよ」}


「ははは…そう言えばリサちゃんは?どうしてるの?」


{「ん?ああ、今店の中にいるわ。呼ぼうか?」}


「ううん、ありがとう。何かしてると悪いし、大丈夫。…て言うか、声だけってなんか新鮮…ふふ、あのね、翔馬聞いてほしいことがあるんだ。」


{「なんだよ」}


「あのね…私ね…! 麻衣子さんとお話しできたよっ!パパにはすごくおこられちゃったんだけど…でもね、なんか嬉しかった。きっと、こう思えるようになったのは、翔馬やリサちゃんのおかげだよ。ありがとう。それから、私…もう少ししたら、学校にも行ってみるつもりなんだ! 私、頑張るから!」


{「そっか。ま、無理はすんなよ。頑張れないときは休んだって良いんだから、自分のペースでゆっくりな。」}


「うん、ありがとう。本当にありがとうね」


{「ははは、お礼言ってばっかじゃん! こっちもありがとうだよ、また会おうな!」}


「うん!」


{「さて、ボチボチ戻るわ」}


なんだろう?寂しい。


「うん、またね!」


非日常から日常へ、戻ってく。



【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!】








次回、たぶん話が少し動くよ❗


またみてね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん

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